そこそこの力さえあれば生きていくのなど簡単。
自分より弱い者を食いつぶしていけばいいだけだ。
食事をするのと同じく当然に女を犯し、人から金を奪い、必要ならば殺していた。
糧を探しに、とりあえず自分と同じくらいの力量の者を探そうと、あまり寄り付かない臨時広場へ来た。
人が多いところはあまり好かない。
それに見たところ自分に合うレベルの誘いの看板も見当たらない。
広場を見渡せる林の木の根元に座り、少し興ざめしてそこを眺めていた。
そうしてすぐに広場からもこちらからも少し離れたところに、新たに看板がかけられた。
『落)AGIシーフ 少数希望』
淡々と雑な字で書かれた看板の下に、ゴーグルを目深に被った少年が座っている。
顔はよく見えないが真っ白い少しぼさぼさな髪だけが見えた。
レベルはこちらが上でギリギリ組める。
だが前衛職が少数を募集しているということは支援を募集しているか、支援と後衛の2人を募集しているということだ。
どちらにせよ今欲しいのは金より抱ける体。
男を犯す気は無い。できないこともないが、それよりは女が良い。
声はかけずに、なんとなく少年を見ていた。
「……」
血の気をあまり感じられない唇が、何かを呟いていた。
いや、呟くというより、歌っていた。
声は吐息程度にしか出していないのだろう、こちらまで聞こえてくることはない。
不意に彼がゴーグルを外す。
白い髪に深い蒼の瞳。
顔つきは整っているが特別綺麗というわけではない、けれど眼光が鋭い。
座り方も歌を口ずさんでいることも、気の抜けている様だが眼光だけはずっと鋭い。
ゴーグルを腰につけて膝を曲げて腕を回し、膝に顔を埋めた。
あの少年にとって端から期待していない気まぐれな臨時募集なのだろう。
こちらも彼に興味をもったのも気まぐれだった。
木の根元に腰掛けていた騎士が重い腰を上げて少年に近づく。
あの鋭い瞳が絶望に濡れ、力を失い、色褪せていく様を見たいと思った。
生きていくのはなんて意味のないことなのかと思う。
毎日退屈を凌ぎ続けて、その先に何があるのか見えない。
唯一の友からのWISが一区切りしてやることがなくなり、いつもの狩場にいこうとした。
だが今日はなんとなく、いつも面倒だと思って行かなかった臨時PTを探してみようかと思いたち、今広場にいる。
自分に合うレベルの募集はなく、とりあえずレベルと職業を書いた看板をたてた。
しばらくして、不意に首の後ろ辺りに寒気が走るような感じがした。
それは大抵こちらに敵意があるものが現れたときにくるもので、思わず腰につけた自分の短剣を意識しながら顔をあげた。
こちらを見ているのはすぐ目の前に歩み寄る騎士。
黒い髪に黒い瞳、耳元で揺れるピアスの石が光の加減で白や黒に変わる。
「良かったら組まないか。こっちも臨時がなくて暇なんだ。」
貼り付けたような笑みの下で、殺気のようなものが蠢いている気がする。
この男は人間をも構わず食いつぶし糧にする人間だと、直感的に感じた。
しばらくして、その男の呼びかけに応じた。
断っても良かったが、この男の黒い感情にギラつく瞳に挑戦的な思いを持ったからだ。
どうせたいした金は持ち歩いていない。
何もないなら別にいい。
殺されそうになったら抗い挑戦したい。
殺されたら自分はそれだけの人間だったということ。
今まで生きて初めて対面する運命の分かれ目だと思った。
「支援は無しでいいだろ?俺らくらいのレベルの臨時があまり出てないから募集しても来ないだろうしな。」
いかにもこじつけっぽいなと内心笑った。
端から邪魔を入れさせる気はないだろうに。
勝てれば、この色のない空虚な人生に色が生まれるだろうか。
――― 勝ちたい。
勝手な自分の思い込みだと分かっていたが、それでも
それは初めて自分が生に執着した瞬間
目の前の騎士は初めて自分が“敵”と認識した相手だった。
――― 食いつぶしてやるよ。 その目も、プライドも、全部
騎士は目を細めて、獲物にできるだけ優しい偽りの笑みを見せた。
それは初めて相手を当然の糧ではなく極上のものを求めた瞬間
目の前のシーフは初めて自分に残忍な感情を覚えさせた相手だった。
4555HIT クロス様からのリクで
『騎士アサの出会い編』
そういえば復習してみれば出会いは騎士シーフでした。
脳内では単純に『襲ったら気に入った』みたいな程度だったのですが(やっぱり騎士アサは深く考えてなかった;)
それをSSにしたらエロいシーンばっかだろ&出会ってからすでにちょっと経ってるしみたいな気がしたので
なんとか臨時広場で会うシーンに味をつけて出そうとがんばりました(´;ω;`)
味、でましたかコレ!?Σ(゚Д゚;三(;゚Д゚)
(つД`;)自分の脳内設定キャラに萌えられても小説には萌えられないのでなにやら不安がつのります。
その上騎士アサは脳内設定すらないキャラなので更に不安がつのりまくります。
期待しないでっていったからいいですよn y=ー(
゚д゚)・∵.バキューン
OTL でもキリリクありがとうございましたぁぁぁあああ!!!! (感謝だけは気合でも入れる。)