ヒショウが完全に寝込み、彼の体の重みを感じてきた。 冷えていた身体は温かくなり、規則正しい呼吸音がすぐ耳元で聞こえる。 ――― 人とこんなに近くにいるのは、初めてか… まるで他人事のように自分を分析しているレイヴァだ。 自分は本当に男なのかと思うほど、彼は性的なものに疎い。 女性を抱いたことはあるが、迫られない限りそれをしようとすることは無い。 だから他人とこうして長い時間寄り添ったことはない。 けれど今初めてして、悪くないものだと思った。 いつも女性に迫られたときは、あまりいい気はしなかったが。 ――― ヒショウも、ルナティスといる時は…こうなのか。 体だけでなく、心まで温かになる。 手入れされている黒く滑らかな髪が散る襟首に頬を寄せた。 自分に男色の気はない。 ルナティスはどうか分からないが、ヒショウも無いと言っていた。 だが彼はルナティスだけは例外だとも言っていた。 好きになれば男も女も関係ないといったところか。 悪戯心でこのままヒショウを抱くことを想像した。 …悪くないかもしれない。 女を抱く時は何かと気遣うのが面倒だとは思っていたが、ヒショウなら手をかけて快感を追えるかもしれない。 男を抱くときの勝手は分からないが…。 そんなことを思う自分は、ヒショウに恋心を持っていたのか。 いや、きっと違う。 けれどそれに近しいものだ。 育めば恋心になったであろうもの。 ヒショウはもうルナティスのものだから、育むことは許されないこと。 「………。」 暖炉の火が気づけばもう殆ど炭になっている。 このままだと冷えそうだと、眠るヒショウをそっと抱えてベッドへ移動する。 少し彼は目を覚ましたようだが、殆どまどろんでいてすぐにまた熟睡した。 彼を布団に入れるときに、彼の指にはまったリングに目が言った。 “ヒショウ”の名が入っている、明日にはルナティスの指に収まるであろうリング。 もっと早く自分の思いに気づけば、コレが自分の指にはまっていたのだろうか。 彼のこの白い指に自分の名が刻まれたリングがはまっていたのだろうか。 一度自覚すると、切ない想像は膨らむばかりになった。 これこそ、ヒショウが言っていたように生娘のようだと苦笑いを浮かべた。 『今もアンタは大切な友人だ。むしろ1番頼りにしている。』 自分は彼の、頼りになれる友人。 そのポジションにさっきまで満足していたではないか。 それでいい。 眠るヒショウに静かに顔を寄せて、唇を重ねた。 初めての誰かを慈しむような口付け。 最初で最後の、初恋の人への口付け。 離れて目を開ければ、移るのは“大切な友人”の寝顔。 吹っ切れた気がする。 レイヴァは友人がまた風邪をこじらせないよう、その布団の隣にもぐりこみ、彼の身体を抱きしめた。 初めて人並み以下の性欲の自分に感謝しつつ、彼もすぐに深い眠りに落ちていった。 Merry Christmas, Dear My best friend... レイヴァの秘密。 |