COLD MOON
「グローリィとはまったく連絡が取れず行方不明。だがそれが何者かに捕まったり殺されたのでなく、姿を隠しているのだとしたら必ず“足”の役割をする者がいるはずだ。
連絡であったり、食料調達であったり、必ず信用の置ける者に別のところで動いてもらっているはずだ。」
そう言うのはインビシブルのギルドマスター・シェイディ。
だが彼はグローリィと直接関わったことが無いため、何の答えも出せない。
若いホワイトスミスを囲み、メンバーは真剣に彼を見ている。
もう3日、歩き回ったり聞き込みでグローリィの足取りを探したが何の手がかりも無い。
そこまできたらあとは予測・思案に頼るしかない、となれば頼れるのはシェイディだ。
「グローリィとやらが信用を置けそうな人物、もしくは機動力に長けている人物はいないのか。」
「「「アグリィだな」」」
質問に、その場にいた者が同時に声を出した。
あまりに簡単に出た意見なので、逆にシェイディが呆れたほど。
「……なら、その人物を待ち伏せればいい。」
「でも家には誰も帰ってこないよ。アグリネスさん、クルセイダーだけど教会やギルドには関わってないし。」
「その人物も追われたりしているのでなければカプラサービスを使うだろ。」
ルナティスが間抜け面であぁ〜と声を上げた。
普段の彼ならすぐに至る考えだと思うが、それくらい彼も必死で疲れていたのだろう。
そんなことがあったのが今朝で、早速ヒショウがカプラサービス付近に張り込み、他のメンバーは今日は捜査から外れたり、街中を巡回して探している。
だが1時間も経っていない正午頃
『いた』
あっけなくアグリィは姿を現した。
『捕獲ぅううう!!!!』
叫んだルナティスの声に一瞬ビクッとしたが、すぐに息を整える。
『ヒショウ、周りにアグリィを気にしている者はいないか。』
『……いない。』
『ならしばらく後を付けろ。道中何をしていたかも教えてくれ。』
『分かった。』
ヒショウは呼吸を最低限まで小さく、少なくし、クローキングをしながらアグリィの方へ近づいていく。
人にぶつからないように、壁や影に沿って近づく。
彼の手元が視認できるくらい近くまで来て移動をやめる。
表情も顔色もいつも通り。
カプラサービスへや倉庫を利用に来たようで、しばらくして荷物を受け取っては装備をしていく。
『…装備を整えてる。本気の戦闘態勢のようだが。』
『なら尾行先でも気をつけろよ。』
『分かった。』
丁度ヒショウがギルドチャットでの報告を終えた頃にアグリネスも歩き出す。
その足はダンジョンへ向かうでもなく、むしろ逆に街中へと向かっていく。
かといって道具屋や露店商を見ているのではなく、明確な目的があって足取りも若干速い。
そして辿り着いたのは、意外すぎる場所だった。
『………攻城戦会場…?』
『何?』
ヒショウが呟くとシェイディが少し険しい声で聞いてくる。
『攻城戦会場に入っていった。』
『…聞くが、そのアグリネスという人物はギルドに所属しているか?』
『……入っていない、と思う。だがそういえば、ギルドエンブレムも冒険者証も見たことがない。』
『わかった。ヒショウ、そのまま尾行してくれ。』
『了解。』
歩き出すヒショウの耳に力強く『気をつけろ』と声が続く。
『もし城の中に入っていったら追うな。』
シェイディの言わんとすることはよくわかった。
ギルドの城の中は言わば治外法権。
国の公認機関ですら攻城戦という名目が無ければ踏み込むことは許されない。
悪質なところでは侵入者を容赦なく殺して放り出すところもあるのだ。
「ご多忙のところを失礼します。」
クローキングしたまま少し離れたところでアグリィとそれを城の外へ迎え出てきたハイプリーストの声を聞いていた。
アグリィは広大な広場にいくつもある他の城には目もくれずに、ある城へ一直線に辿り着いた。
だが他人行儀、初めて会う人間に接するような態度で、迎えたハイプリーストも法衣を着崩し煙草を咥えてとても聖職者とは思えない様子。
「私、大聖堂に勤める聖騎士ですが、少々お尋ねしたいことがあります。」
「俺らのしてることに関してだったらノーコメント」
「いえ、探し人についてです。」
密かにヒショウは神経を集中させた。
まさか…
「リアーテ家はご存知でしょうか。」
「いんや?」
「…現在党首が大司教でいらっしゃる聖職者協会の名家です。
その次男のグロリアス様が三日前、何者かの襲撃を受け、この広場へ逃げ込んだようなのです。
攻城戦ギルドの方々なら何か目撃証言が得られるのではないかと思いお尋ねに参りました。」
しばしの沈黙。
ハイプリーストは何かを考え込んでいるのか、もしくはギルドチャットでメンバーに何か話しているのかもしれない。
「今、メンバーが揃ってねーんだ。
もしうちに知ってる奴がいたらどっかに連絡するのでいいか?」
「はい、よろしくお願いします。…ああ、WISは教会では受けられぬので手紙でお願いできますか。」
「OK」
「ではこちらに。」
アグリィがハイプリーストへ、持っていた紙を渡す。
「…これは、そのナントカ家の住所かなんかか?」
「いえ、ゲフェン教会の住所です。」
「OK、えーと…探してる奴の名前、もっかい。」
「グロリアス・リアーテです。」
ハイプリーストはよく聞いておきながらも興味なさそうに紙を受け取って城の中へ引っ込んでいった。
『金の髑髏に蛇が巻き付いている絵のギルドエンブレムを知ってるか?』
ヒショウは再び歩き出したアグリィを再び尾けながら、ギルドチャットを繋げる。
その途端に『ヒショウ、まさかそのギルドに接触していないだろうな?!』と珍しくレイヴァが声を荒げた。
大聖堂に勤めるレイヴァの過剰反応で予感は確信に変わってゆく。
『奴ら視界に入ってもいない。ただアグリィが接触していただけだ。』
そのままレイヴァから答えを聞く心構えだったのか、ヒショウの報告に一安心してレイヴァは口をつぐんでしまった様子。
だがシェイディが『俺も知ってはいるが、レイヴァの方が詳しいだろう』と先を促す。
『…奴らが砦を取ると、行方不明者と死者が出るので騎士団や教会が手を拱いていただけだ。
一度砦を取られては適わない、と奴らから砦を取り返す為に作られた部隊も騎士団にあると聞く。
…ギルドの名前は確か「Xeglezz」と言った。』
『…もしかしたら、グローリィは…』
ヒショウが口にしようとした憶測を、シェイディが静かに遮った。
空気は乾いているのに、雲は太陽を遮り街を翳らせる。
それでも街はまったく変わりなく動く。
人は笑い、声をあげ、通り過ぎる。
こんな空は商売で笑顔を作る露店商達よりも、無表情ながらもどこか暗鬱なオーラを漂わせる彼こそが似合っていた。
何にも関心を持たず、ただ黙々と歩くクルセイダー。
道しるべを失い彷徨うように意味の無い道を歩き続ける彼だが、足どりだけはしっかりとしていた。
「アグリィ」
その彼が、初めて足を止める。
呼びかけてきた声の方へ、身体ごと振り返る。
そこにいたのは長身黒髪のアサシン。
アグリィが付き従うグローリィの友人。
だからと言ってアグリィ自身が彼と話したことは殆どない。
だが彼は友人の為なら、グローリィの為なら必死に動いてくれる人間だということはしっている。
ルナティスというプリーストも、また二人の所属するギルドの者たちも。
だが、アグリィもグローリィも、彼らに助けは求めなかった。
「…グローリィは、あそこにいるんだな…?」
グローリィはどこにいる、そう聞かれると思っていたのでアグリィも多少驚いた。
だがその表情は微動だにせずに、人形のようにじっとヒショウを見返すばかり。
大してヒショウは視線を逸らさない。
静かな覚悟を湛えたようなその視線。
それを読み取ってアグリィは口を開き、静かに
「……手出し無用」
拒否をした。
「誘拐、襲撃など、昔からずっとあったこと。今回も私一人で事は足りる。」
「……。」
目を見開いたままヒショウは黙り込み、それにアグリィは背を向けてさっきまでと変わらない足取りで去っていく。
ヒショウはしばらく立ちすくんだままだった。
あそこにいる、そう言ったものの見当はついていなかった。
シェイディからそうハッタリで言えと指示をされただけだった。
だがそれで見た彼の反応で分かったことがある。
アグリィは“グローリィを探していない”。
何故ならヒショウが居場所を知っているかもしれないというのに、答えを求めてこなかった。
それなのにXeglezzに「グローリィを探している」と聞き込みをしていた。
それはつまり“グローリィはアグリィの傍にいない”ということ。
推理のパズルを組み合わせれば、導かれる答えは“居場所は分かっているが手が出せない”というところか。
ではアグリィが知るグローリィの居場所とは…?
1つの答えが導き出される。
確信の無い推理と思い込みはするな、とシェイディは言っていた。
だがこの推理は確信に近いものだとヒショウは感じはじめていた。
自然と握った拳に力が入る。
吹く乾いた風を身体に受けながら、彼は背後を振り返る。
視線の先には攻城戦広場の方から天に向かって掲げられたいくつもの旗の1つ。
蛇の絡んだ金色髑髏。
「何を…考えてるんだ、あの男は…」
狭さは感じさせないリビングは薄暗く、小さなテーブルの真ん中には青い花瓶に白と紫の花が2輪。
それだけが堂々と咲いているが、窓辺のプラントの花は枯れて茶色い蔓を力無く垂らしているだけ。
一つだけ残っていた花は家主の扱う煙を吸って突然変異を起こし赤と青の斑だった。
ずっと小綺麗にされてきた部屋はもう埃が積もりそうになってきている。
ここ最近は忙しく掃除や自炊する暇もなかった。
だがこの部屋を掃除するより、住み替えてしまおうかと思っている。
一人で暮らすには少し贅沢な間取りの部屋だ。
もう一人、一緒に此処で暮らそうと誓いあった女はもういない。
哀しくないわけがない。
だが悲嘆に暮れるのは愚かだと思う。
だからこそ未練などこの部屋へ置いて行こうと思った。
「……驚いた。」
驚いた、というよりは関心した。
扉を開けたその向こう、セツナの死角には幼いアサシンがいた。
痺れ薬だけでなく幻覚薬に漬けられたその身体で何とか寝室からでてきて、鍵の掛かって出られない扉の外でセツナを奇襲すべく構えていたのだ。
ベッドから降りるのだって相当の精神力と体力を要するだろうに。
だが、構えるまでが限界だった。
隙のないセツナを奇襲できるだけの体力はなく、あっさりとその期を失ってしまった。
焦点の定まらぬ目を、セツナの首元まであげて遂に足の力が抜けてしまう。
床に頭から倒れそうになるのをセツナが支える。
出せぬ声を出そうと肺を動かしているのが分かる。
唇を読まずとも言いたいことは分かる。
「…あの男は…」
セツナは声を詰まらせる。
まだ酒気の名残で体温が高い。
一人酒ではなかった、酌の相手は上司だ。
そこで聞いてしまったのだ。
「死んだのだ。」
生きていた。
グロリアス・リアーテは生きていた。
Xeglezzというギルドがリアーテ家の次男を人質にした、と本家に身代金を求めてきた。
ご丁寧に散々に痛め付けた姿の写真と毛髪付きで。
暗殺依頼をしてきていたのは本家ではないから教会は大騒ぎだ。
そして暗殺依頼主からはこちらへ『貴方達が仕留め損ねていたせいだ』と苦情が来た。
アサシンギルド以外の所にも暗殺依頼をしていたくせにそれを棚に上げてだ。
上司も愚痴を言いたくなるだろう、それに先程まで付き合わされていた。
「諦めろ、死んだのだ。」
セツナは初めて嘘をついた。
それに対し罪悪感などなかった。
今までは嘘を付く必要がなかったから口にしたことがなかっただけだ。
…では今回は?
今、こんな嘘を尽く必要があったのだろうか。
ジノが、セツナの腕に体重をかけながら顔を上げる。
酷く汗をかいて、虚ろになった瞳から涙腺が壊れたように涙が流れつづけていた。
セツナが与えた薬が、この少年から引き出したのは全てが悪夢だった。
幸せな夢や快感というのはそれを経験しているからこそ引き起こされるもの。
それを知らぬ少年からは悪夢しか引き出されなかったのだ。
これ以上ジノを此処に引き止めておくのは無理だった。
心を戒めれば心が壊れる。
身体を戒めれば自らの身体を裂いて逃げるだろう。
「諦めろ」
それでも、引き止めたかった。
諦めろと、命令しながら嘆願する。
このアサシンと殺し合いたい。
だからこんなにも執着していた、筈なのだが
セツナは段々と自分の行動に矛盾が生じているのを感じていた。
今はとにかくこの部屋に引き止めようとしている。
もちろん、ジノが万全の状態なら真っ先に決闘を申し込むに違いないのだが。
だがそう思いながらも
自分の望まぬ姿をしているこの少年から目が放せなくなっている自分に気づく。
欲していたのはこんな頼りなさそうな姿ではない。
若くして強く気高い雪豹のように凛とし、血の海を踏み締め戦うあの強さだった筈なのに。
別人になってしまったこの姿に失望の欠片も持たない。
むしろ……
「………」
ジノが震える唇を動かす。
『逃げない、だから、やめてくれ』
恐らく彼も幻覚に追い詰められ精神の限界を感じたのだろう。
それで逃げない、というのは信用できないが。
冷たくなった手で縋り付いてくる、その姿は敗者のそれだ。
セツナが許せぬ男の姿だ。
だがそれを払う気にはならなかった。
「……。」
その腕を引き寄せる。
震える身体を、気がつけば胸に寄せて抱きしめていた。
彼が強張ったのが分かる。
「…汝が気高く在れたのは、守るべき者が在ったからなのだな。」
腕の中から、ジノがセツナを見上げる。体勢故に顔が近くなり居心地は悪かったが、そうしなければ彼は言葉を告げることができなかったからだ。
彼の瞳には、希望も意志もなかった。死人の目。
血の気の失せた唇が、言葉をつむぐ。
『俺は、ギルドを逃げたときに、死んだ。もう、意味がない。』
あのプリーストがいなければもう生きる意味はない。
それでも…
見初めた男がこんな形であっけなく死ぬなど、認めたくなかった。
セツナは強く、ジノを抱きしめる。
死を、認めたくないと。
ならば、グロリアス・リアーテが生きていたと伝えればいい。
それだけなのに。
それだけでジノは生きる意志を吹き返すのに、セツナの口は動かなかった。
そうすればジノはまた確実に例のプリーストを守る剣となるだろう。
それはセツナが見初めた暗殺者の姿、だが決して手に入らない存在となってしまうことを意味する。
そうだ、本当はそれと殺しあいたかった、男として剣を取り戦いたかった。
だがいつの間にかそれを越して、一瞬、一時の交わりでは足りないほどに愛しくなってしまったのだ。
少しでも長い時を共に、それが暗殺者としても男しても意味のないことであっても。
『何故、生きてる…?』
突然、ジノが聞く。
一瞬意味が分からなかったが、その視線はセツナを指していると気づく。
『大切な、人を…俺が、殺したのに。』
セツナの恋人はジノが殺した、なのに何故セツナは愛しい人を失っても生きていられるのかとジノは問うているのだ。
だが応える前に、ジノは自虐的に呟く。
『…生きる価値のある、からか…』
ジノの自己完結に、セツナは首をかしげる。
セツナが生きる価値のある人間だと、そう思う意味が分からない。
そもそも人間に価値をつける意味がわからない。
「…皆、ただ理由などなく生きるのだ、己の満足を求め。」
ジノが、答えを得ようとセツナの唇を見る。
耳は聞こえるのだからそうする意味はないだろうが、言葉をよりよくはっきり理解しようとする為に。
「あの女子とは、その延長で交わっただけのこと。
祝言を挙げた相手が死んでも、某は生きている。
なのに、何故わざわざ他人の為に自分の命まで絶とうとするのか、汝の思考は理解できかねる。」
それでも、理解したいと思い無意識の内にジノの頭を撫でていた。
これまで愛しいと思い守ると誓った相手は一人だけではない、失ったのも一人だけではない。
だがセツナは男として、むしろ雄として義務的に守っていただけで心まで捧げたわけではない。
セツナは話しながら不意にあることに気づき始めた。
対してジノにとってのグロリアスは初めて守りたいと思い、義務でも何でもなく心の底から命まで捧げたいと思った相手だったということに。
「…ならば…」
セツナはジノの身体を離し、頬を両手で包む。
かつて愛しい女にそうしたように。
男にする意味は無い、だがこの少年を生かしたままここに留めるにはそれしか思い浮かばなかった。
「汝がリアーテ家の者を守りたいと希うように、某が汝を守りたいと申せば良いか。」
「…?」
呆然とした目で、何かを確かめるようにジノは自分の頬に添えられた手を掴む。
抱きしめられた温かさも、頬に添えられた手の優しさも、別人のもののはずなのにグローリィを思い出させたから。
「汝の守るべき者は潰えても、汝自身が某のそれになる。某の為に生きろ。」
言葉を理解できなくても、セツナの意志はなんとなく理解したのだろう。
ジノが目を丸くして、けれど拒絶するように小さく首を振った。
ずっと独りだった。
そして優しさを呉れた白銀のプリーストが現れた。
その温かさに絆されながらも、ジノはずっと独りでいることを選んでいた。
『…守り、死ぬ、それだけでいい。』
守られることなんて、望んでいない。
望む資格なんてない。
今まで生きるために人を殺してきた、だからこれからは死ぬ為にしか生きるつもりはない。
『守れなかった、だから、もう…思うことは、ない…』
「…自害するつもりか」
『彼の、最期を…知りたい…』
ジノは頑なだった。
まるで頑固な子供だ、ジノもセツナも。
自分の望みを通す、それだけしか頭にはなかった。
どちらも妥協できず、押し通すことも出来ない。
「っ!」
強引にここ数日で細くなった腕を掴みあげて腰紐で結ぶ。
巻かれた時点でジノが顔を蒼白にさせて暴れだすがもう遅く、硬く結ばれた両手首はびくともしなくなっていた。
疑問を叫ぶ声はやはり音にならずに奇妙な空気音になっただけ。
縛り上げた手首と腰を掴んで、今しがたジノが必死に逃げてきたであろう寝室へ向かう。
まだ炊かれた香の煙に満ちて室内は白かった。
荒い呼吸音でジノが叫ぶ声を聞き取りながらセツナは反応しない。
シーツを裂き、その端切れを何重にもあわせてジノの腕をベッドの背飾りに縛り付ける。
力も入らないせいで全力で暴れても少しベッドが軋んだ音を立てるだけだった。
「時期に決着がつく。そこでしばし待て。」
『決着?』
ジノの疑問はセツナの目耳にも届かず、白い煙の中に紛れて消える。
分からない。
どうすればあの少年が自分の手の中に陥落してくるのか。
だが分かることは1つだけ。
グロリアス・リアーテがいる限りジノはただそれを守ることしか望めない。
彼のプリーストを殺すことはジノの希望を摘み取る行為だとしても、それしかセツナが目的の為にできることはなかった。