「よし…熱、引いたな。よかった。」
「…おかげ様で。」
黒髪の騎士がつきっきりの看病を始めて4日目。
顔色もずいぶん良くなったアサシンは、のんびりとココアを飲んでいた。
「…ってゆーかうつったかもな…」
「だろうな。」
何度もアサシンは熱にうなされながら、それでも騎士に「風邪がうつるから帰れ」と言い続けていた、それを無視してここに居続けたのは騎士の方だ
少し体がだるいらしい。
「今度は俺が看病してもらう番かもなぁ〜」
「既に、俺に看病しろと言ってるのか」
「いや、別に?まぁ、ちょっとはお礼して欲しいとか思ってるけどな」
「…礼?」
何をすればいいのか、アサシンがそう思い悩むうちに
騎士が彼の頭に手を回し、顔を少し引き寄せてキスをした。
もう何度かしたことはあるが、あまりこう静かにしたことがないのでやたら互いの触れ合うものが軟らかく感じられた。
「…これだけでいいのか?」
その突然の行動に対する返答はそれだけだった。
アサシンにそう言われて、思わず苦笑いを浮かべた。
本当はもっと深くまで…体まで要求したいところだが、それはしないと騎士自ら誓っている。
こうしてまじかでこのアサシンと目を合わせるのは好きだった。
ここまで近くにいると警戒心をまったく見せず、獣を手懐けているような優越感がある。
何より、ずっと求めていたものが傍に在って、こちらを見ているのだ。
ガラにもなく、心が温まると思った。
「…誘うようなことを言うなよ、こっちはいろいろと誠意だして我慢してるんだ。」
こちらは苦笑いするくらいしかできなかった。
相手は表情もなく、ただこちらを見つめている。
何か言おうとしているのは、雰囲気で分かった。
とりあえず、綺麗な彼を見ながらその返事をのんびり待った。
「…お前が…」
しばらくして、やっと彼は口を開いた。
「…お前が勝手に決めていることだろう。いつでも解いていいんじゃないか。」
騎士は目を丸くした。
それでもアサシンは真面目にこちらを見て言葉を続ける。
「俺は、お前を拒んでいた気はない。」
それは、騎士が自ら課した戒めを破らせる言葉だった。
餌に飢えた獣を開放する…彼が言うのを躊躇っていた理由はそれだった。
「むしろ、お前にしてはよく耐えてたなと思…」
少し虫の居所が悪くなって視線をそらしながらぽつぽつと言葉を続けていたら、肩を押されてベッドに押し付けられて覆いかぶさられる。
一瞬だけ驚いてしまったものの、許しを得たら早速か、とおかしく思えてきた。
「だから、誘うようなこと言うんじゃねぇって…」
「…別に、今襲ってくださいなんて言ってない。」
「同じようなもんだろ。」
何故か苦しそうな顔をしているくせに手だけは性急で、肌にぴったりとした薄いアンダーを捲し上げて、曝された胸元に手を這わせながら、深く口付けてくる。
昔、俺に何されたか覚えてるだろうに、彼がこんな風に許すとは思わなかった。
先に互いの服を全て脱がせた。
無理やりにでも手に入れたいと思っていたあの気高いアサシンが、今自分の下でされるがままになっているのが大分信じられなかった。
なるべく痛くないように…なんて俺らしくないことを考えながら、彼の菊門に指を差し込んだ。
潤滑油があればもっと難なく入っただろうが、指一本はとりあえず楽に入った。
「…なぁ、アンタ…今まで何人くらいとやったことあるんだ…?」
こんな彼を見ていると、来るもの拒まずでやっていそうな気がする。
彼は思い出しているのか、視線をはずして天井あたりを見ながら黙っていた。
「…5人くらいか」
くらいということは、それ以下はないんだろうな…。
少し、彼が別の人間と体の関係を持っていたことが悔しい。
まァ俺の方が全然多いからなんともいえない。
「じゃあ、お前が同意の上でしたのは?」
「これを入れて2人。」
今度は思い出すまでもなく即答された。
他の1人は、依然付き合っていたとか言う同居人のローグだろう。
なんだかそれに安心してしまった。
「…っ」
差し込んだ指の腹で上の肉壁を擦り上げる。
男の場合は大抵この辺に前立腺があるからイイと言う。
彼は眉根にしわを寄せて、俺の腕を掴みながら息をゆっくり吐いていた。
こいつも抱かれるときの力の抜き方を知ってる。
それが悔しい。
「っ、ア…」
少し強く押し上げて、中指に続き人差し指を割り込ませた。
それを中で曲げ伸ばししながらゆっくり中をほぐす。
白く汗ばんだ首元が反って、ゆっくりと息を整えている。
その咽喉元に食らいつくように顔をうずめた。
「もう挿れていいか?」
「お前のっ好きに、しろ…」
「…そんなこと言って、どうなっても知らねえぞ…前、俺に何されたか覚えてるだろ…」
「…あれが、お前のやりかたなんだろ…?」
彼の目にはおびえのようなものはない。
以前、彼を抱いたとき…いや、あれはもう性行為ではなかった。
半分ヤケクソになって、このアサシンを屈服させたくて、非合法の薬まで持ち出してコイツを壊そうとした。
やりかたもめちゃくちゃで、多分何日か排泄もままならぬ状態になっただろう。
「…できるだけ、無理させないように、する…」
俺の必死な思いに
「…期待しないでおこう。」
彼はそんなことを返してくる。
それは俺自身も同感だった。
もう、目が眩んでしまいそうなのだ。
これ以上のない、極上の餌が目の前にチラついている気分だった。
俺の理性は一発目からすでに飛んでいた。
「…っひ、ぐっ…」
痛みにアサシンの全身が痙攣していた。
いくら経験があり、十分慣らされていたとしてもこれだけ繰り返しブチ込まれれば中はズタズタになってるだろう。
俺が動きやすいように後ろから突き入れていた。
こちらからその結合部を覗き見ると、案の定何度も放たれて溢れている俺の精に、血が混じっている。
けれどそれでも彼は侵入している俺を軽く締め付けてきて
苦しい体勢でも、時々肩越しに俺のほうを見てくれる。
青い瞳が、昔や少し前とは結びつかないほどに涙で潤んでいた。
快楽よりも痛みだろう。
だが昔はそれすらも見せようとしなかった。
ずっと犯されながら、それでも俺を見ようとしなかった。
俺がずっと振り向かせようと、首を絞めたり、傷つけたり、薬をも使わせた。
なのに彼は苦しげな声をあげたりはしたが、俺に向かって何か声を出すことは無く
こちらに興味が無いとでもいいたげに…
それが悔しくて、酷く心に刻み込まれた。
彼の気高さに、あの時魅せられた。
彼を屈服させようと酷い行いを繰り返すうちに、どんどんこちらが侵食されていたのだ。
それが、今は…敵ではなくなったからか、告白を受け入れたからか、信じられないほどあっさりとこたえてくれている。
愛しい。
彼はずっと神聖で、強いモノだった。
それが今また、愛しいまでに応えてくれている。
「うっ、ぐ…んぁ、あっ…」
押し寄せる痛みと快楽に、ガクガクと震えて、シーツを握り締めて
それでも逃げずにその腰に突き入れられているものを受け止めていた。
きっと、今でもこんなにも締め付けてくるのは、彼の意図しているところなのだろう。
結合部は彼の分泌液や血液と俺の体液で動くたびにグチュグチュと卑猥な音を立てる。
もう何発めか忘れたが、中をなんどもティッシュで拭き取りわざわざ滑りを悪くしてやっている。
おかげて彼の中は既に酷く荒れてしまっている。
それでも、止められなかった。
誘わないでくれ…
もう、こんなに酷いことをしたいわけじゃないんだ。
ただ好きなんだ、それにちゃんと気づいたんだ。
快楽が欲しくてアンタを抱きたいと言ったわけじゃない。
アンタが逃げようとしてくれれば、限界だと拒んでくれればやめられるのに…
泣きながら、受け入れるな。
こんなに酷い状態で、傷つきながら…
止められるんだ、アンタの意思ひとつで…
アンタは自分の価値を知らない。
いつも基準は他人で、自分の意思を尊重しないんだ。
だから、俺が欲望を突き入れ続けるから、それを受け入れ続けてる。
俺が止めない限り、アンタは苦しんで耐え続ける。
そう、分かっているのに…
アンタが欲しすぎて、やめられない。
誰よりも壊したい。
彼の赤い後口に、俺の汚れたモノが何度も荒く突き入れられるのを、他人事のように悲しい思いで見ていた。
けれど暖かさを感じる度に、全身に電流のように快感が駆け巡る。
熱がまだあるのに加え、これだけ酷くしたせいで、受け入れる彼の体内は異常に熱い。
「ヒッ、ぁぐっ…!!」
「くっ…ハぁ…!」
彼の腰を掴んで、一際強く突き入れながら、彼の最奥に何度目かの射精をした。
それの衝撃と彼の方もほぼ同時に射精を済ませた。
あれほどこの男には嫌われたくないと思っていたのに…
淫らな姿の彼の前に、理性なんてなくなってきてしまった。
まだ、ヤリ潰してしまうならいいだろう。
けど、今までの経験上、俺は身体的快楽以上に精神的快楽を好んでいた。
サディスト故、一晩の相手は大抵傷付け、アソコをズタズタにして犯して、苦痛に顔を歪める様を見て楽しんでいた。
こいつにそれをやったらいけない…。
嫌われる。失ってしまう。
そう、思ってるのに…どす黒い欲望は意識から消えない。
もう、何度も俺の肉棒を突き入れてガバガバになった彼の後口に指を3本まとめて突っ込んだ。
「ァ…うぁ…!?」
彼は俺の腕を掴んで、軽く爪を立てた。
拒まない。
ただ、耐えようとしている。
「……っ」
嫌なら嫌と言え、という一言が言えない。
…俺はしたいから。このアサシンに苦痛までも与えて犯したいと思っているから。
彼が目を細め眉間に皺を寄せる、その程度で指3本は飲み込まれた。
俺のモノを受け入れていたんだから、その程度はまだつらくないだろう。
その三本を中で無理やり動かして、中を性器で貫いたときとは違う感覚を植える。
彼はどこかおびえたような、信じられないものを見るような目でこちらを見上げてきた。
「ひっ、アァ!!あ、ぐっ…!あぁ…!!」
だが彼があまりにイイ声でなくから…
彼の声に、俺の精神の方が犯されてる。
「…イイ、顔」
整理的な涙は涙腺が決壊したように流れて頬を濡らし、空気を求めて開き赤い舌を覗かせた唇は血色が悪く、震えている。
興奮して、見ているだけで息が荒くなっている自分に気付いた。
こんな彼は始めてみた。
初めて犯したときは、まったく見せてくれなかったのに…。
彼の後口はヒクヒクと震え、痛みを少しでも和らげようと俺の指を締め付け閉じようとしている。
それに合わせて締まった腹筋も震えていた。
「…駄目、だ…俺…」
今まで耐えていたはずなのに、耐えられると思ったのに。
彼を抱くことを抑制していたのではない、本当に怖かったのは、このアサシンを壊してしまうことだった。
「アンタのことを…本気で、愛してる」
そう囁きながら汗に濡れた彼の髪に指を差し込んで梳いた。
彼の内に差し込んだままだった指をゆっくり引き抜きながら、苦しげに声を漏らしている唇にキスをしようとした。
「…ぉまえ、の…愛情、表現は…怖い、ぞ…」
全然余裕のない表情でむりやり笑って、かすれた声でそんな皮肉を言ってみせた。
しばらくその様子にあっけに取られてしまった。
ああ、面白いように好きにできるから、彼がもう壊れかけたのかと…完全に自分のものになってしまったのかと錯覚していた。
だがこの男は気高いままだ。
「どうしてアンタは、こんなにも俺をひきつけて離さないんだ。」
「…覚えが、ない…。」
眉間にしわを寄せながら、そう返してくる。
うつぶせに倒れてぐったりしていた彼の体をまた仰向けに戻して、また覆いかぶさる。
ベッド下に置いてあった荷物からリボンを取り出して。
「…っ、まえ…」
彼が少しだけおびえたような顔をして何か言いかけ、すぐに止めてしまった。あきらめたように…
俺が何をするつもりか分かっているのだろう。
「…もう少しアンタのイイ顔が見れたら、終わりにする。…さっきから傍観者もいるみたいだしな。」
「…ぇ」
傍観者。
その言葉に、綺麗な青い瞳が見開かれた。
その様を見ているのは面白かった。
もう外は明け方だった。
二人でイッたあと位から視線を感じた。
この時間なら…早起きなあのプリーストだろう。
…あとで、病人に何してるんだとか言われそうだが、最中に邪魔してくるなんて野暮なことはしないだろう。
「…分かって、て…お前…」
面白いほどに彼の顔が赤くなる。
「…急に赤くなったな…もしかして、今度はあのプリーストにほの字だったんじゃないだろうな?」
「馬鹿が」
まだ苦しそうに、それでも強がって返してくる彼の上でクスクス笑いながら
完全に力を失くした彼の肉棒の根元をすみれ色っぽいリボンで締め付け、キッチリ結んだ。
予想以上に強く結ばれて、彼は眉間のしわを深めて…シーツを握り締めて耐えようとしている。
先に指を突っ込んで、奥に出された俺の精液をシーツに遠慮なく掻き出して、枕元にあったティッシュで中を乱雑に拭き取った。
ティッシュには白い液と、赤い血が混じっている。
やはり、ところどころ酷く出血しているようだ。
だが結局、彼は最後まで「嫌」とは言わない様子だ。
拒んでも、もう理性なんて完全に崩れてしまった俺は、喜んで彼を犯し続けるだろうが…
「ア、ァ!…う、っく…!」
拭き取られたせいでまた滑りが悪くなったそこに立ち上がり始めただけのそれを急くように差し込んでいく。
俺がしっかり勃ってなくても、彼のほうがしっかり緩んでくれているので奥の方まで入った。
「…やっぱアンタの中、イイわ」
もう快楽なんてないのかも知れない、痛みに顔をゆがめている。
それでも熱く湿っている体内は変わらず俺を締め付けて離さない。
彼の腹の辺りを指先でそっと撫でた。
「…っ…」
人に見られてる…聞かれているのにこうしていることや
好きだとか言っておきながらこれからある意味拷問のようなことをしようとしていることとか
いろいろ彼には言いたいことがあるだろう。
だが彼は言葉を飲み込んで、ただ痛みに顔を歪めていた。
「もう、アンタ以外は抱きたくない。」
「…こんな奴が、そこらに出回って…たら、危険だな…」
弱さを見せない、いや隠している声がする。
獣に覆いかぶさられながらも、それを怯えもせずに、乾いた笑いを浮かべて受け入れようとしている。
「…て、か…お前、立ち直りが…」
「早いのはアンタのせいだよ」
とりあえず入れられただけだった俺の性器は、このアサシンの声を聞いているだけで熱を取り戻していた。
『ッ、アアァ!!!いぁ、あ!う、ぐ…!!う、っえ…』
頭の奥まで、心地よい悲鳴が響く。
愛しい人の、最大級に感じる声だ。
完全に声が抑えきれなくなってしまったので、PT会話に切り替えた。
PT会話なら、出した声は冒険者証に吸い込まれ、特定の相手にしか聞こえなくなるからだ。
戒められた彼の性器は痛々しいまでに膨れ上がっていた。もうこの状態のまま大分経つ。
この声のおかげで俺のほうはいくらやってもすぐ下のほうは元気になるばかりだ。
流石に耐え切れなくなってきた彼は酷くこちらに爪を立てたり暴れるようになったので、両手を押さえながらでないと続けていられない。
いつもの済ました風はまったく見えない乱れきった顔、その両脇に押し付けられた両手はひっきりなしに暴れ、握り締めた爪が手のひらに食い込んで血がにじんでいる。
『ッひぁ!!アぐっ!!ウアアァァ!!!』
気が狂ってしまいそうな、痛々しい声。
虚ろな瞳から涙が止まらず、顔は真っ赤なのに唇の色は悪くて震えている。
それでも、俺に開放を強請る言葉は一切出ない。
これだけ長い時間、射精を止めさせて犯すのは初めてかもしれない。
辛くないはずがない。それは彼の手のひらにつけられた爪の傷跡が何より物語っている。
それ以上、その体に傷をつけたくなかった。
その手を無理やり開かせて、指を交えた。
その動作は優しげにしているくせに、この男を啼かせたいという俺の欲望に忠実に、下半身は乱暴に彼を攻め立てている。
もう、止めなければと何度も思っているのに…
―――もしもーし、ちょっとお楽しみのところ失礼しますが…
PT会話で耳元に聞こえるアサシンの悲鳴とは別に、呑気な声が頭に直接響いてきた。
突然のWIS…ここの同居人で、さっきから覗いているのであろうプリーストの。
それに我に返った。
絶頂を迎え始めた自身を感じ、すぐに下で苦痛に顔を歪める青年の拘束を解いた。
彼の性器を癒すように愛撫してやり、少しづつだったがずっと行き場をなくし溜まっていた熱を搾り出すようにしてやった。
あまりに長く縛りすぎた。
射精しても、彼には苦痛しかないように見える。
全身をガタガタ震わせて、熱が開放されていっても長く続いた苦痛の余韻は抜けそうにない。
―――……。
俺は、このアサシンにしてしまった仕打ちに対して言い訳が思いつかず…
元より言い訳をする気もなく、プリーストの次の言葉を待った。
―――そろそろご主人も起きてきちゃうんで、その辺にしておいて欲しいんですがー
叱咤するでもなく、呆れるでもなく、あの綺麗なプリーストはそんなことを言った。
…見てたなら他に言うべきことがあるだろう。
―――今、終わらせた。
下で、涙を流して苦しそうな息遣いをなんとか沈めようとしているアサシンを見た。
薬を使ってもいないのに気絶しなかったのが、驚きだ。
ひょっとしたら、今まで俺以外に…不本意に抱かれた奴らに、もっと酷い仕打ちを受けていたんじゃないかと思った。
ならば尚更、今日してしまったことが悔やまれる。
―――あ、そうそう、ちょっとオイシかったんで黙ってたんですけど。
この気持ちを頭に響くプリーストが、少しも沈めさせてくれない。
―――PT、アサシンさんのをとっさに貰ったでしょう?それには私とごしゅ…ローグさんも入ってますよ。
しかもその気持ちを沈ませる前に、爆弾を投下して手の届かない遠くに吹っ飛ばしてくれた。
―――ローグさんに聞かせるのはアレだったんで、咄嗟に殴って気絶させたんですけど
流石に私でも二発殴るのは気がひけるので、そろそろ止めてくださいねー
そう言って、プリーストはWISを切った。
…あのプリースト、キレイな顔してなかなかイイ性格かもしれない…。
家主のローグが起きる前に、シャワールームでボロボロにしてしまった彼の体を洗った。
アサシンは敏感で耐久力がない筈なのに、彼は洗われる時も痛いはずなのに一切声をもらさなかった。
まるでそれが悪い事と思っているかのように。
「…っ、はあぁぁぁぁぁ……」
アサシンの看病中にずっと飯まで食わせてもらってるわけだが…(滞在費は出してる)
朝食中に、プリーストが突然わざとらしいタメ息をついた。
…何度見てもこのプリーストはすごい美形だと思うのだが、やっぱりあのアサシンの方が俺にとってくるものがある。
ちなみに彼は、風邪がぶり返さなかっただけよかったが、やはり俺のせいでダウンしてまたベッドに寝込んでいる。
…まぁ、このプリのタメ息の理由はなんとなく分かる。
さっきから俺をちらちら見てて、そして見ながらついたタメ息だ。
「なんだ?どうしたんだよ、いやしけい。」
ローグのその言葉を聞いて思い出したが…そういえば名前いやしけいなんだよな。
なんでそんな冒険者登録名にしたんだろう…。
「なんだもどうしたもないですよ…この騎士さんったら朝っぱらから…」
…あれだけこいつらの親友に酷いことをして、弁解するつもりはない。
二人に罵られる心の準備をするのに、コーヒーをぐっと飲んだ。
「どうしてこう羨ましいことを…!!!!!」
むせた。
「は?羨ましいって??」
わけが分からず、ローグは目を丸くしている。
目を丸くしながら頭の後ろをさすっている。なんとなく痛むのだろう、朝知らないうちに殴られて気絶させられたから。
「あの様子だと多分一晩中ですよ!ずっと酷くやりまくってて朝なんてちょっと強姦プレイでしたからね!!」
「…は?」
プリーストのあまり直接的でない言い方に、目を丸くしたままのローグ。
この二人の関係が少し見えた気がする。
恋人同士なんだろうが…多分ぎこちなさや遠慮もあるのだろう。
「もう、男ならいっぺん自分の欲望のままにやりまくりたいですよね!」
「…待て、それって…!!俺に振るべき話じゃないんじゃないか!?
てゆーか俺が身の安全を考えるなら同意すべき話じゃないだろ!!?」
「私もご主人にあーゆー顔させたい声ださせたい悲鳴あげさせたい血がでるまでボロボロになるまでいぢめたいー!!!」
「ちょっと待てなんの話だよ!!てか悲鳴!?血!!?しかもいぢめって何の話だああああ!!!!!???」
…おとなしそうな顔して、こうゆうキャラだったのかこのプリは。
つか“ご主人”ってのが未だによく分からない…明らかにこのプリの方が立場上に思えるが。
「朝から、危ないことを大声で叫ぶな…」
寝室の扉が開いて、気だるげな声がした。
おきてきた俺の恋人(?)は顔が赤く、日に当たればやつれて見えた。
「あら、起きてきていいんですか?」
いやしけいとやらの声に頷いて、俺の隣の席に座った。
「吐き気はないから、何かちゃんと食べた方がいいだろうしな。」
擦れたその言葉にいやしけいは頷いて、台所へ向かった。
「…すまない。」
「そう思うなら、次から控えてくれ。」
俺の謝罪に、彼はきっぱりとそう返してきた。
…今回のことは許してくれるという彼の優しさに、少し胸が痛んだ。
苦しかっただろうに…
「なぁ、頼みがあるんだ…」
隣を見ると、どろんとした彼の目と視線が合う。
顔が赤いのは、昨晩のせいで熱が出たのかもしれない。
「嫌なら嫌だと、はっきり言って欲しいし、ちゃんと拒んで欲しい…」
彼の目はこちらを見ているが、動かずに人形のようだった。
「俺は馬鹿だから、抑制が利かなくて…昨日も駄目だ駄目だと思ってるのに
調子に乗ってアンタをあんな目に遭わせただろ。」
「……。」
彼は俺から視線を反らして、自分の手元あたりをぼんやり見ていた。
「…わかった。…努力しよう。」
「…おう。」
こちらから顔は見れなかったが、なんとなく、彼は戸惑っているような気がした。
こんなことを言われたのは初めてだったのだろうか。
自分の価値を知らない、寂しい、優しいアサシン。
その体が急に小さく見えて、抱きしめてやりたくなった。
が
バチンッ!!!!
抱きしめようとした瞬間、思い切りアサシンの平手が俺の頬を打った。
さすがアサシン…ナイスクリティカル。
てゆーか
「今そこまで激しく拒まなくてもいいだろ…いてぇ…」
むしろそこまで抱きしめられるの嫌だったか…?
確かに向かいの席に同居人のローグがいるが、まさかの平手。
「お前がそうして欲しいって言ったんだろうが」
「いや、そうじゃなくてナ…?」
この男、ただの天然ボケだろうか…?
「…うん、まぁ…いいか。」
どうやらただの天然のアサシンは、頭の上に?を浮かべていた。
とにかく、コイツの重荷にならないように傍にいたい。
それだけだ。
彼に迫るたびに撃退されるようになり、俺が言った言葉を後悔するようになるのはもう少し先の話。
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ヤマなしオチなしイミなしきました。(吐血)
( ノノ)ただのエロ話になってしまった…もといそれを承知で書いてましたが。
とりあえず、騎士の『夜はサド説』を成就できた、それだけで…(ヨクナイデス)
(゚Д゚*)ここまで書けたので気分的に完結です。
読んでくださった方ありがとうです。
ボソッと…
私の中ではこの騎士は、サド>エロなので
ぶっちゃけフィスト●ックとかさせてましy=ー(;゚Д゚)・∵.
ターン
でも友人にやめろと言われて修正しました。
(*´ω`)やっぱソフトなのがいいですかそうですか(爆)