先日、ご主人の親友のアサシンさんの窮地を救いました。
見知らぬ騎士がアサシンさんにイケナイアレコレをしようとしていたのをお散歩の途中に発見したのです。
現場は路地裏でしたが、アヤシイやり取りを期待して路地裏を通って散歩するのが私の日課です。
私はとっさに全力で騎士を殴り飛ばしてアサシンさんと逃げました。
通信格闘技やっててよかったとしみじみ思ってみたり。
彼にお礼を言われて、イイことしたーなんてうれしい気分でお散歩を再開したら
殴り飛ばして、撒いたと思った騎士が、いて
それでもって、その騎士に殴られて、気付けば知らない部屋にいました。
きっと、八つ当たりでしょう…。
何度か殴られて、そのあと服を破り捨てられて
ベッドの上でがっちり押さえつけられてます。
これでも力には自信あるのに、この騎士はびくともしません。
レベルの差でしょうか…
ルナティックの私にはレベルもなにもありませんが。
耳元で、低い笑い声がします。
「この耳、ニセモノじゃないんだな。」
耳をぎゅっと乱暴に掴まれて、つい顔をゆがめました。
それを見ていた騎士はもっと楽しそうに笑っていました。
「…っ!!」
無駄な抵抗とは分かっていたけれど
彼が体勢を変えようと少し離れた隙に、鳩尾に蹴りを入れました。
けれどあっさり片手で軌道を逸らされて、足は虚しく空をきってしまいました。
それでも、間髪いれず顔面に拳叩き込もうとしたら
掴まれて、背中にひねり上げられてしまいました。
「お前もあのアサシンに少し似てるな」
楽しそうだ、とにやりと笑いました。
黒い髪、黒い瞳で
僕や、あのアサシンさんとはどこか対照的な男。
「なァ…お前、あのアサシンの恋人…じゃねぇよな…?」
私はただずっと、彼を睨み付けていました。
応えたくない。
いえ、怖くて応えられなかったのかもしれません。
「…お前、恋人はいるのか。」
まだにらみつけて応えずにいたら…
耳に、ナイフを当てられました。
怖くて、耳がピクッと動きました。
そうしたら彼がまたクスクス笑い出しました。
なんか悔しい。
「折角の可愛い耳が半分になっちまうぞ?」
「っ…」
「答えろよ。」
唇を噛んで
「いたら…なん、なんですか」
やっと出せた声は震えていました。
そう言ったら、彼は人のよさそうな笑みを浮かべてうれしそうに頷いています。
「あのアサシンじゃねぇんだよな?」
ニッコリ微笑んだまま、さらに聞いてきます。
…その笑顔が怖い怖い怖い怖い!!!!!!!!!!
私はついこくこくと頷いてしまいました。
もう、恐怖がプライドに勝ってきています。
「聞きたいのはそんだけだ。アイツの恋人じゃないなら…少しは手加減してやる。」
手加減…やっぱ、帰してはくれないんですね。
口に指を二本突っ込まれて、噛み千切ってやろうかと思う前に
口を開かされて、まるい、ところどころ穴の開いたボールみたいなのを突っ込まれました。
ご主人に使いたかった7つ道具の一つです。
…ごめんなさい、もう現実逃避しかできることがないんです…。
そのボールについていたベルトを後頭部でパチッと固定されました。
けっこうきついけれど、穴が開いてるから苦しくはない…。
アレです…
なんか勢いで鞭とかでめっちゃしばかれそうで怖いです。
あぁ、でも…犯されるくらいならそっちのがいい。
ご主人以外には触られたくもねぇわ!!
手も後ろで皮のベルトのようなもので固定されて
肩の関節が悲鳴をあげるのも構わず、人形のように引っ張られて
ベッドに、四つん這いのようにさせられて、首根を上から硬いベッドに押し付けられました。
コレは少し…苦しい。
「お前も、大分イイけどさ…俺は、あのアサシンほど入りこんだやつはいないんだよ。」
苦しい体勢のまま騎士はどこかうっとりとしているような声で、呟いています。
「俺に何度も犯されながら、それでも少しも泣かないで、屈することもなくて…誰も呼ばないで、一人で耐えてた。」
頭の奥で、プチッと何かが切れました。プチッと。
この男は、すでにアサシンさんを…
しかも、何度もって言いましたよね…何度も…!!
「暴れるなよ。腕折れンぞ。」
暴れたくても、抑えられてるから肩を揺らす程度しか動けませんでした。
折れても、それはアサシンさんの痛みの一欠けらにも及ばないでしょう。
悔しくて、涙がでました。
イイ人なんです。すごく、優しい人なんです。
私たちが阿呆なことをやっていると、呆れたようにため息をついていますが…
でも、時折彼も嬉しそうに小さく微笑むのです。
私たちの幸せを、自分のことのように喜んでくれる彼はすごく好きでした。
その彼を汚したことが許せませんでした。
その事実に気づけなかった自分が許せませんでした。
「だから、俺はアイツ以外にもう手は出したくねぇ。いくら綺麗だからって、アンタにもな。」
そう言って、彼は暴れる私の背中を拳でまた殴りつけてきました。
むせて咳をしたら、唾液がボールの穴から漏れて、顎まで冷たく伝いました。
そうなることに気づいて、唾を飲み込もうとするけれど口を思い切り開けられているからまったくそれができません。
それを知った瞬間、更に喉元がむずむずして、苦しくなりました。
「けど、せっかくだから…楽しませてくれよ。アイツを煽る為にも。」
そう言って、彼がまた強く私の肩をベッドに押し付けて
足の間を、何か冷たいものでツッとなぞりました。
人のモノではない、けれど、それは多分イカガワシイ道具だと推測できて
それを、後ろの双丘の間に押し込んできて…一気に血の気が引きました。
こうなることは分かっていたけれど…
詰まる喉で、無駄な抵抗だと分かっていたけれど、いやだ、やめろ、とひたすら叫んでいました。
切羽詰まると現実逃避しまくって…
ずっと、まぶたの裏から、ご主人の姿が離れませんでした。
不安なときは、辛いときは、ずっとご主人がいてくれたのに。
「ご、しゅじ…ん…」
もう誰もいなくなった質素な部屋で、情けない声でご主人を呼びながら、ずっと泣いていました。
そういえば、今日は確か…人型クッキーを食べて3日目。
ずっと泣いていたら、いつのまにかルナティックの姿に戻ってしまいました。
それでも、体の痛みはまだ残っていて、涙が止まりませんでした。
そういえば、服どこだ、服。
周りを見ても、法衣の布切れも見当たりません。
…帰れないようにしたつもりですか。
―――いーやーしーけいーーーー!!!!!どこだぁあーーーーー!!!!!
窓の向こうで、ご主人の声がしました。
窓辺に立って外を見ると、やっぱり、ご主人が下のほうで叫びながら歩いていました。
…早朝なのに、恥も何もあったもんじゃありません。
しかも叫んでる相手は“いやしけい”ですからね。
巷で大声でそう呼ばれると恥ずかしかったこともありました。
こっちもしかえしとばかりに“ご主人”と呼び返したら
周りから変態カップルと思われているらしき視線を受けたことがあります。
まぁ、そんなことはおいといて。
ご主人はこちらには気付いていません。建物に入ってくる様子もありません。
叫びながら、ずっと探してくれていたのでしょう。
ご主人の枯れた声と、心配そうな顔を見ていたら、また涙が出てきました。
うれしさと、申し訳なさが混じった涙でした。
少し離れたところで、アサシンさんも人に聞き込みをしているようでした。
私はしばらく二人を見ていましたが、そっと窓辺から降りてボロっちい床の上で丸くなりました。
二人には申し訳ないですが…まだ、会わせる顔がなくて、出て行けませんでした。
もう少し、一人でいたいのです。
どかどかどかどかどか
バキン
「いやしけいーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
隠れたそばから見つかり ま し た
な、なんで!?
部屋のドアをぶっ壊して、床の上にいた私をみつけたご主人は
泣きながら私に飛びついてきました。
昨日、あの騎士に犯されながら、夢見ていたご主人の腕の中です。
はぁ…暖かくて落ち着く…。
ご主人は苦しいくらい私を抱きしめて、泣いているのか、震えていました。
走り回ったり叫びまわったのでしょう、息も切れていて心臓が激しく鳴っています。
「…ぃやし、けい…」
ご主人が一言『何かされたか』と聞いてくれれば
私はなんとか『何もされていない』と、なんとか嘘がつけたのに…
きっと、ご主人は知ってるのでしょう。
あの騎士から聞いたのかもしれません。
何もかもが嫌がらせなら、ご主人にわざと知らせていてもおかしくありません。
いやしけいを探してる間も、俺の親友はやけに深刻そうな顔をしていた。
何かと思えば
「すまない、俺が思い出せれば早く駆けつけられたのに…」
そんなことを考えてたのか。
昨晩、俺の家に手紙が届けられた。
ちょうどこの時間に届くように調節されたのだろう。
白い髪のうさみみプリーストのこと。
先日、俺の親友のアサシンに手を出そうとして、そいつに邪魔をされたから
代わりにそいつを借りていく、とか。
場所は、アサシンが知ってるかもしれないな、なんて書いてあったが
残念ながら彼は覚えてなかった。
行ったことはあるが、周りを見ていなかったから場所が分からない、と…。
けれど、フェイヨンではない、モロクではない、ルティエではない、と
気候などから消去法を使って上がった残りの街を、すべてポタで飛びまくって一晩探し続けた。
運が悪く、2周目のゲフェンでやっと見つけた。
朝の雰囲気と、見えた風景で、親友がどの建物かを思い出してくれた。
「アンタがいなきゃ、今頃まだ世界中彷徨ってたさ。それに、ずっと探してくれただろ。」
それでも、彼は俯いて苦渋に満ちた顔をしている。
「なあ、気になってたんだけど…なんであの男、お前があそこを知ってるって言ったんだ?」
とにかく、話をそらしたくてそう言い放ったが
それがそもそもの間違いだったようだ。
「あの男に、やられるときに連れて行かれた場所。」
「…は?」
しばらく目が点になった。
「……まさか…昨日、襲われかけたって言ってたけど…前に、もうあったのか?」
彼はうなずいた。
けれど、俺の驚きなどきにしないで、いやしけいを巻き込んだことばかり悔やんでいる風だった。
「いつだよ!一回や二回じゃないのか!?」
「まだ、シーフの時。転職前後に何度かだ。」
シーフ時代終盤からの知り合いだが、そんなこと一言も聞いていない。
それに、転職前後と言えば…俺が毎日五月蝿いくらいWISを送っていたはずだ。
返事が帰ってこなかったことはない。
具合が悪いとか、悪そうだなって時は…頻繁にあった気がする。
転職の追い込みで疲れてるか、狩り中かと思っていた。
あれのどれだけが…彼が苦しんでいる最中のことだったのだろう。
「すまない。」
こちらが怒鳴りつける前に、先に謝れてしまった。
「お前を頼りにしてなかったわけじゃない。知られたくなかった。」
こちらに口を開く隙を与えず、彼は間髪いれず言葉を続けた。
「けれど、今…いやしけいが同じ目に遭って、少しお前の気持ちが分かる。」
「お前、卑怯だぞ…怒らせろ、よ…」
「…ありがとう。」
謝られたと思ったら、今度はいきなり礼を言われた。
「何がだよ…」
「…いろいろと。」
一人で苦しんでいたことを悲しんでくれて、と…
恋人のことも、親友のことも
悔しくて、俺に隠していた親友が許せなくて、俺の大事な奴を傷つけた騎士が許せなくて
何も知らずに、何もできずにいた自分が許せなくて…
どうしようもなく、苦しかった。
それを分かっているかのように、親友が俺を抱きしめた。
ずっと俺のが背が小さかったけど、いつからか彼を追い越した。
それでも、いつまでも彼に甘えていると思う。
「俺は大丈夫だ。一人でいるのが性に合ってるんだ。
守ってくれる人はいらない。今のお前みたいに、支えてくれる奴がいればいい。
だから、お前は…いやしけいだけ、守ってろ。」
「…っ…」
もう、悔しさやら悲しさやらで、思考能力が働かなくて
ただ頷いて、彼に少し抱きついていた。
「鼻水は止まったか。」
「涙と言え、涙と。」
もう大分落ち着いてきた。
泣いていたのは5分くらいだろうか。
時計をみたら30分くらい針が進んでいた。うそん。
離れれば、相変わらず呆れたような顔をしている親友がいる。
「そろそろ、いやしけいのところに戻れ。
今でもこんな風にお前に抱きつかれてるとアイツにぶっとばされそうだ。」
「いやしけいはそんな乱暴なことしねぇよ!」
頬を膨らませて、彼はそんなことを言っているが…
騎士から俺を守ったときのあの勇ましさというか凄まじさを見たらなんというだろうか。
…惚れなおして終わるな、こいつの場合。
アサシンは、顔を手の甲で拭いながら寝室に戻る親友を見送った。
それまで人の良い笑みを浮かべていたが
バタン、と扉の閉まる音が響いた瞬間
彼の表情は消え去った。
その凍りついた表情のまま、玄関をくぐってどこかへ出て行ってしまった。
最愛の恋人が寝ているはずの寝室に入ると
彼はベッドの上でクッキーをかじっていた。
こちらを見て『しまった見つかった!!』なんてカンジにビクッと震え上がっている。
「いーやーしーけーいーーー…なんでクッキー食ってんだお前は。」
まぁ、人間になりたいから食べたんだろうが…なんで今、人間になりたいのか。
「ご主人に抱きしめて、ほしいからです…」
彼はベッドの上にちょこんと座って、こちらを上目遣いで見てくる。
……。
「うん、まぁ別にいつでもいくらでも抱きしめてやるけどな?」
「…すいません、真剣な顔で鼻血出してる状態で抱きしめてほしいとはサスガにちょっと思いません。」
だって可愛いんだもん。
鼻血だって全開で流れ出ますよそりゃあ。
それにほとんど丸一日離れっぱなしだったんだし!!!
「ごめんな。」
「鼻血は仕様ですから仕方ないかと。」
「今、鼻血の話はしてねぇ」
まぁ、まだちょっと出てるけどな?
「辛い思いさせたな…って。」
もう一度、ごめんと言って、いやしけいの背中をなでた。
いつもと変わらず柔らかい。
…顔を埋めたいが、今やるといやしけいが鼻血で汚れる。
「不謹慎な話ですが…」
ご主人が鼻血を拭いながらこちらを見てきました。
「…あれが、ご主人や、アサシンさんじゃなくて、よかったと思いました。
だから、ひょっとしたら…私が一番安心してるかもしれません。」
だから、謝らないでください。
そういわれて、俺は何もいえなくなった。
「お前も、アイツも…なんか、似てんなぁ…」
「あ、それ、あの騎士にも言われました。」
「…アレだよ、泣きついてくれれば俺だって楽になるのに…
俺に謝らせたり、怒らせたりもしてくれない。」
「私も、アサシンさんも、自分勝手なだけですよ。
自分が楽で、楽しいのが一番好きなんです。」
いやしけいは小さく笑って
いきなり、ベッドの掛け布団の上から、枕の上へ移動した。
いつもルナティックの状態で寝るときに、こうやって催促をしている。
思ったよりも元気ないやしけいに安心して、彼の隣に滑り込んだ。
白い毛に擦り寄られて、幸せな心地で体の力を抜いた。
…ああ、そういえば昨日から走り回ってばかりで
全然寝てなかった。
それに気づいて数分後、俺は泥のように溶けるように眠り込んだ。
…せめてもと、道具プレイで抑えました。(爆)
Σ(゚Д゚;三(;゚Д゚)視姦ですか!!視姦ですね!!!??
本当は挿れないかわりにもっと恥ずかしいことをアレコレで精神的ダメージを…と思っていたのですが(ォィ)
なんかそうすると後々つじつまが合わなくなるので我慢してみました(´ω`*)
てゆーかなんだか書いていて、ルナログよりルナアサ風味になってると思ったのは私だけかしら…。
(゚∀゚)次(多分)完結でェロ編になります。