造型的な身体が硬直する。
中にいる俺の熱を巻き込んで、締め付けてくる。
触れるどこもかしこも熱いが、一番熱いのはその身体の中。
刺激的な快感。

だが耳に叩きつけられる喘ぎ声、うめき声、罵る声。
白い睫毛の間から流れ出る涙。
縋るより反抗的に叩きつけてくる拳と突き立ててくる爪。
それの方が俺には重要な刺激だ。

不意にその涙の奥の青い眼孔と視線が交わる瞬間。
それは最高の快感だった。

どれだけ乱しても壊れない氷の視線。
捕食しているのかされているのか分からなくなる。
だが相手が恋人でも食う側でいたい、それは本能だ。



覆いかぶさり顔を寄せると、切れ切れな吐息と身体の細かい痙攣さえ伝わってきた。
長い間息を止めて身体も強張らせ続けたせいだろう。

「……の、うち…こ…す…」

『そのうち殺す』
それが肌を重ねている恋人のささやき。
思わず笑いがこみ上げた。
アンタらしい、いや俺達らしい。

宥めるように髪を撫でた。
一緒に尻も撫でたのは別にセクハラじゃない、労りだ。
ぐしょぐしょに塗れて心なしか腫れてるようだった。

手首近くまで汚れた俺の手に、少し血が付いてる。
気をつけてやったつもりだったんだが。

「なら、首を絞めて殺せよ。」

ふざけてそう返しながら、汗に濡れて脱力していた腕を首に回させる。
女の腕と違って柔らかいわけはなかったが、不思議とそれより気持ち良い。
髪を撫でていた片手を腰に回して、尻を撫でていたもう片手の指をまたそこに差し込む。

肛門なんか感覚がなくなってるようで中指一本挿してもまったく反応がない。
だが前立腺まで麻痺はしてなかった。

首の後ろで髪を引っ張られる。

「抜くなよ。」
「…っ、っ…」

薬飲んで前立腺直接刺激されて声を抑えるってのはなかなかできるもんじゃない。
経験があるだけ彼のこういうところには感服する。
全く容赦する気はないが。

「っ!…っ、…っん、ん!」

もがく彼の足が俺の太ももあたりに何度も擦れる。
誘われてるんじゃねーかって勘違いするような動きでも、彼にはもう気にする余裕もないらしい。

「…っく…ぅ、アアッ!」

やっと臨界点。
どこもかしこも快感に震えている。

「触っていいぜ」

そう言えば彼は自分の脈打ってるものに手を出して、あえぎ声を深めた。
そしてやっと観念して首に回す片手に力を込めて、引き寄せるようにすがり付いてくる。
彼がイク瞬間の俺のささやかな楽しみの時間か。

容赦なく身体の中で擦り上げられる前立腺の刺激と自分のものを扱く手のリズムを合わせてる。
神経とか身体感覚が優れてるから自然とできることなのかもしれないが、そこらの並の娼婦よりも手馴れてるように思えた。

「はぁっ…!んん、ぁあ!っああ…!」

身体を赤子みたいに丸めて、俺の腹も濡らして彼は達した。
まだ出てるのか余韻なのか、しばらく俺の首にしがみついたまま軽く震えている。

反抗的で気高い男を捻じ伏せる、それも確かに最高にイイが。
この男に関してはただ単にこうして腕の中に収まること自体が嬉しいとも感じている。
絶頂の瞬間だけ縋りついてくる、その一瞬は何ともいえない感覚。
いつも捻じ伏せてやりたいと思いながら、そうなる瞬間に感じるのは優越感ではない。
その瞬間だけはただ腕に抱きしめて支えておいてやりたくなる。

だから少しのあいだ、ほんの少しの間だが強張っているその背中を撫でてやった。
そして脱力する身体を抱きしめながら、汗の味のするこめかみに口付けて
アサシンらしい細いのに筋肉がよく分かる首筋と白い肩を滑り落ちていく汗をなんとなく眺めていた。

ああ、数年前までは全くこうなると思わなかった。
性欲をぶつける以外の目的で誰かを抱いて
満たされた心地でそのあとの余韻にひたるとは。

まぁ何度満たされた気持ちになろうと数分後にはこいつの顔や身体にまた興奮してきてやりたくなるんだが。
事実、また下がまた熱くなりそうでやばい。
これだけやりまくって壊れないこいつの体も、枯れない俺の身体も、相当なもんだな。

「…おい。」

呼びかけて、ぐったりして動かない身体を揺さぶってみるが反応がない。
意識はあるようだから、ただもう動くのが億劫なだけに違いない。
寝かせる前に中の処理をしてやろうかと思ったがやめた。
俺が中出ししたのは始めの方だけで、あとは手を突っ込んでやってたからもう掻き出すものはないだろう。

ただベッド脇の小棚から適当にポーションを出して開いて血に濡れてるわき腹の傷に塗りこんでやった。
放り投げたらさっき使って放り投げてあったハイスピードポーションの瓶にぶつかったらしく、少し割れるような音がした。
まあ、いいか。
足元に押しやってあった布団を引き上げて俺も横になった。







「んぅ!!んっ、はんっ!」

恋人は仰向けに寝ている俺の上で白い喉を晒して雌みたいにいやらしく身体をくねらせる。
許しを請うような、でももっととねだるような。
だが現に俺が緩やかに突き上げるよりも激しく腰を動かしているんだから、後者か。

いつも鋭いはずの眼光は一転して完全に俺に無防備に服従している。
口の中に突っ込ませた涎が零れる穴付きボールを外してやればいやらしいすがる言葉が出てくるに違いない。
だがそれはできないし、後ろ手に麻縄で縛られているから、必死に腰を動かして体の中で俺に媚びている。

「…っは!んぐぅ!…ぅう!!」

乳首を思い切りつねり上げたら身体を震わせて、それでも腰を動かそうとしている。
ガバガバになっちまった下の口も、痛みを与えれば条件反射で絞まった。
彼の性器を射精も塞き止めて拘束してるベルトを外した。
だが亀頭の下は指で締め付けてまだ射精は許さない。

「…ん、ぉ、ふっ…ふ…」

なさけない声が少し漏れただけで言葉にならなかったが、擦ってくれと言いたいのは分かる。
だが擦らないで、親指と中指を輪状にして苦しいところを締め付けたまま人差し指で先端に爪をたてた。

「んんんぅ!!!んんっお!ふぐっ…!!」

男にとっちゃ一番の弱点かもしれないところに爪が食い込む激痛に、彼も流石に涙をぼろぼろ流して身をよじった。
体裁もなく逃げればいいもんを、中から俺を逃がすのが嫌なのか、ご丁寧に俺の腰の上に乗ったまま少しの動きで逃げようとしている。
なんだか可笑しくて笑いがこみ上げる。
引っ掻く度に潰されそうなほど彼の下が絞まる。

軽く揺さぶりながら、言葉を制している轡をむしりとるように外してやった。

「あ、あ!痛、い!!やめて…」
「なら逃げればいいだろ?」
「あぐ!や、ううぅ!!嫌っ…!」

やっぱり逃げようとはしない。
本当は好きだからだ。

「逃げないのは気持ちいいからだろ。もっと痛くして欲しいからだろ?」
「痛い、痛い…!」
「正直に言えよ。そうしたらもっとお前がイイようにしてやる。」

涙が溢れる目で俺を見て、また腰を動かし始める。

「き、もち…イイ…もっと、して…」

そんな正直に言われたのは初めてで、また笑えてくる。
不気味なほどおかしくて。

ありえなくておかしい。
なんていう違和感だ。
コイツがこんなに服従して、自分から腰振ってずっと強請ってきて。
こんな裏返る猫なで声で俺を呼んで。

…こんな奴だったか?俺が惚れた奴は。
俺がずっと対峙して、恋人であり戦友でありながらどこか天敵のように感じていた男は。


「好き勝手言いやがって。一度死んでこい。」

そうだ、そんなことを言いながら本当に俺を殺そうとするような…




というか、今現に首をしめられている。

「っっ!…っ!」

苦しいというより激痛がして、窒息するというより喉が潰されると思って、必死に喉にかけられた手を引っつかんで引き剥がした。
死ねという言葉は半分本当だから本気で首を絞めて、半分嘘だから比較的簡単に手が剥がせたんだろう。
喉が自由になってから、はきそうな感覚を抑えしばらくむせた。

「…・っおい、いきなり何…」
「首を絞めて殺せと言ったのはお前だ。」

相手を睨みつけて、ちょっと固まった。
俺の上に跨っているのは変わりないが、普通にアサシン装束を着ている。
目も、あんななよなよしさの欠片もなく鋭く俺を見下ろしている。
……夢かよ。

「お前、発情期の動物として檻に入れられるのと去勢されるのならどっちがいい。」
「選ぶわけねえだろ。朝から不機嫌だな。」
「昨晩あれだけ好き勝手にやりまくったくせに朝から勃ててる雄犬に腹が立ってな。」

言われて初めて、布団を少し押し上げて勃起してる自分に気づいた。

「そりゃ、あんな夢を見てればおっ勃つか夢精はするだろうなぁ。」
「…どんな夢だ。」
「完全ドMなのとヤリまくってる夢。」

アサシンなのに隠しもせずに殺気を放出してる。
絶対に本気で俺を檻に入れようとしている、そんな気がする。

「相性のいい従順な子と夢の中で楽しみたいらしいな。今度からSMクラブにでも勝手にいけ。」
「相手お前だったぜ。」

そう言うと彼の言葉は途切れた。
そしてしばらく沈黙が続いた。

「…そうゆう俺がいいのか、お前は。」

やっと口にしたのはそんな言葉。
お前が何をいいたのか、すごく分かるさ。

「今思い返すとかなり気持ち悪いな。」
「夢見てる最中に気づけ。」

即つっこまれた。
昔は弄った後に脅すか薬で従順にさせることが多かったから、相手は夢のなかのあんな感じのが多かった。
だからリアルに想像できて、このアサシンにも重ねられたんだろう。

つーか、こいつがあんな媚びているのは、今目の前にしてる男を見るとまったく想像も付かなくなる。
俺があんなふうになるくらい気持ち悪い違和感。
それなのに勃ったんだから、夢ってすげえ。


「俺はいやしけいに狩りに呼ばれてるからな、もう行く。」
「ケツは大丈夫か。」
「お前の首を全力で締め上げたくなるくらい、いつも以上に痛い。」

ああ、それも理由のうちだったってことか。
まあ文句は言えないな。

それでもアサシン装束を着て武器の確認をしているその後姿は針金でも通したみたいに綺麗に伸びていて全く隙がない。
マフラーだけでなく包帯も巻いて隠しているらしい首の印と痕を誰にも見せないで。
誰にも手折れない華。
俺の華。

何も持たず求めない、だが誰のものにもならず気高いこの男がいい。
惹かれて、仕方がない。
俺をおかしくしてるのはお前なのに、全く無自覚で憎らしいほど。

「行く前にもう一度、俺の首を絞めていけよ。」

笑いながら言うと、相手は一瞬きょとんとした。
そして躊躇いなく喉笛を潰す勢いで引っつかんでくる。
流石に死ぬ気がして寸前で止めた。

「アサシン特有の殺人的な絞め方をするな。」
「絞殺に殺人的も何もあるか?」

絞殺しろとは言ってない。

「こうだろ。」

掴みとめた彼の腕を引いて、首の後ろに回させる。
ついでに腰も引き寄せればバランスを崩して倒れこんできた。
全身で受け止めて顔は互いに目の前だ。

「……。」
「……。」

数センチの距離に相手の瞳。
引き込まれそうになりながらしばらく見詰め合っていた。

「……全力で頭突きしたくなるんだが。」

ちょうど俺も同じことを考えてた。
が、勘弁してほしい。
結局、おはようのキスは頂けず、さっさと離れていった。

「帰りは遅くなる。」
「了解。」

俺の言葉なんか聞いてるのかわからないくらい、さっさと部屋を出て行った。

まだ朝は早い。
今度はちゃんとアイツらしいアイツを抱く夢でも見るか。
そんなことを思いながら寝返りを打って目を閉じた。


 




やりすぎました =■○_

彼らならやりすぎくらいがちょうどいいと言い訳しながらも、やっぱりやりすぎました。
夢とかももうそうですが、最中もすごい惨劇になりそうだったので直しました。
最中に何をされたかは少し分かるように書いたつもりですがご想像にお任せ。
できてしまったらアップしたいと思いますゲフッ