まだ成長しきらぬシーフの青年の体。
ゴーグルを深く被り、肌を露出しないスタイルであるために白い肢体。
けれど、それは意外にもしっかりと鍛え上げられ、細いながらも筋肉を浮かび上がらせている。
余計なものを取り去り美を追求して創り上げた彫刻のようだ。

「…っ…」
触ればじっとりと汗ばんでいる。
その彫刻をぶち壊そうと、犯している足の間へ腰を強く打ち付ける。

「…っ!…はぁ、はぁッ!ぐっ…」
シーフは一度限界と言わんばかりに荒い息を吐いたが、けれどまた口をつぐんで声を出すまいと耐え始める。
もう何度も繰り返しているのに青年の精神は折れない。
片手で手のひらが白くなるほどシーツを掴み、その腕に自ら爪を立てて、歯を食いしばる。
爪を立てられた腕は皮が薄く向けて血が出ているが、耐えるためにはどうしようもないのだろう。。

声を出せ。
そう命令しながら何度も何度も媚薬入りの潤滑油を使った中を蹂躙しつつける。
だが最期まで彼の口から甘い声も、狂わんばかりの喘ぎも漏れることはない。



「…ぐ、ぅ…っ!!」
喉を潰されるような声をもらしただけで、突然のように青年は糸を切らして触れていない性器から体液を解放させた。
同時に強く締め上げられて、貫いている騎士の性器からも熱い液体が注ぎ込まれる。

――― …くそっ!!
覆いかぶさる男は青年の頭の脇のベッドに拳を叩きつけ、苛立ちをごまかすように事切れた青年をうち捨て、一人服を着始める。

何度もこの青年を押し倒して、あらゆる手で犯し続けているのに、どうしても満たされない。
かといって捨て置くとこちらの体が青年を求めだす。
けれど一度も青年は屈服しない。
抱きたいと焦燥に駆られるのに、抱けばどうしようもない敗北感を味わう。

実に腹が立った。
八つ当たりで床に落ちている相手のシーフの服を蹴り飛ばした。



安い宿の質素な部屋を出ようとしたとき、ふと振り返ると
青年はこちらを見ていない。
傲慢な男に犯され体内に残された残骸を自ら掻き出している。
その動作は辛そうだが、まるであきれて処理をしているように見えてしまう。

眉間に深く皺を刻み込み、部屋からさっさと出て行った。







もう何ヶ月も執着しているシーフがいる。
きっかけはただ見目がいいと思って…眼光の強さに惹かれて、臨時で誘い出した。
確か2度ほど臨時狩りで彼を物色し、それから襲い、犯した。
さっさと諦めることをせず、限界まで戦ったせいで余計に傷を負った体。
そんな状態でシーフは犯されても、怯える様子も無く、屈服する様子も無く、ただ堪えていた。

いくら犯しても、傷つけても、薬を使っても、彼はこちらを見ない。
お前に興味など無い、そういわんばかりの瞳で、騎士の闘争心が敗北感に蝕まれるまで変わらずにいた。
以前の鋭い敵意の眼光も見せることはない。






「嫌ぁああ!!!」
「黙れ、殺すぞ。」
甲高い少女の声は、低く凄んで言いつければすぐに啜り泣きへ変わった。
少女はいつも騎士が本来狙っていた、返り討ちの心配も無いレベルと性格。

まだ金にも女にも飢えていなかったが、シーフのことを思い出してむしゃくしゃし、気づけば少女を誘い出していた。
アコライトの法衣の襟口に手のように剣を忍ばせると、少女は面白い程に震えて嗚咽を漏らした。
肌を傷つけられそうで怖いのだろう。

わざと少しだけ剣先を下ろして、胸の下辺りに刃先を走らせた。
「っ!い、いや…い、痛ぁ…!」
「何が痛いだ、少し切れた程度で。」

あのシーフの痛みはこんなものではなかったはずだ。
確かどこかしらの骨が折れたままだった。
あの時は吐血した口元を見て、まさか舌を噛んで自害したかと心配した。

それを思い出している自分に気づいて、騎士は顔をしかめた。
そしてそれを見上げていた少女の涙がいっそう増えた。

「きゃっ…っ、うっ…」
剣を引いて、法衣の前を全て切り払った。
まだ成長しきらぬ乳房の乳首は初々しいピンクで、おそらくまだ処女だととれた。
穢れを知らない少女を犯すのは好きだが、無垢な裸体を前にして腹が立った。

何故腹を立てる?
自問自答して得た答えは、あのシーフを求めているからだ。

初めての時、彼の体はまだ穢れていなかった。
それを散々に痛めつけて堕とし、体に男を受け入れることも覚えさせた。
それでもあれは思い通りにならない。
今自分が支配したいのはこんな綺麗な体ではない、こんなひ弱な精神じゃない。

白い足の間に腰を入れて、中心に怒張した性器を添えた。
色も薄く、毛も生えそろっていない少女のそこに、騎士のモノは不釣合いで酷く汚いものに思える。

「や、いやああ!!お願い、やめて!やめて下さい!!」
「黙らないと殺すといっただろ。」
先に差し込んだ指2本でそこを急いてめちゃくちゃに広げさせながら関節の限界まで足を開かせた。
慣れさせてやるのも面倒で、すぐにたいして勃ってもいない性器を押し込む。

荒らされ濡れた粘膜に先端だけは招き入れられたが、それ以上は無理だと入り口は口を閉ざしている。
「力を抜かないと痛いのはお前だ。」
それを聞いて顔を真っ青にしている少女の瞳は困惑した。

結局少女は全身を緊張させたまま力を抜かず、迷い続けて答えを出さなかった。
力を抜いたところで、騎士の侵入を手助けするだけで痛いことには変わりないだろう。

痺れを切らし、少女の体内を突き破った。
そこは裂け、膣を一瞬で荒らされて、少女は甲高い悲鳴を上げた。ブチッと音さえした気がする。

その瞬間に体毛が逆立つ感覚に襲われた。




これじゃない 俺が欲しいのは
こんな綺麗なものでも こんな細いものでもない
ずっと押し込めていた本心が抑えきれずどんどんにじみ出る。


「…っ」
騎士は唇を噛み、眉をひそめた。
それを見た少女は相手が更に不機嫌になってしまったと怯えた。
呻きながら涙で顔をぐしゃぐしゃにしている。

気分が萎えた。
突き放すように少女の身体を放し、性器を抜いた。
痛々しく血が少量出ているが、かまわずそのまま捨て置いて去る。





『…おい。』

憤りに任せて、あのシーフにWISを送る。
だが

それはどこにも届かない、相手に受け取られた気配がない。
こんなことは今まで無かった。
このままあの青年を一生逃がしてしまうかと思うと背筋が凍る思いだった。

思えばこれは当然の結果だ。
こちらがあのシーフとコンタクトを取れるのはWISとプロンテラの臨時広場のみ。
WISなんて受信拒否してしまえばそれまでで、臨時広場なんていくらでも避けられる。
そうなればこちらはもう向こうを探す手段はなくなる。

振り返れば、少女はもう既に逃げた後。
苛立ちに任せて木々にむけて、抜いた剣を振りかざした。

「くそっ!!」
ニ撃で太め木を切り倒した。
無茶な扱いで剣も痛んだが、気にならなかった。

「逃がすか、絶対に…!俺のだ、あれは…!!」

ここにいない相手に唸るように叫んだ。
頭が痛い、喉の奥が熱い。











臨時広場の木陰にうずくまり、じっと人の群れを見つめてもう何時間か。
あの白髪のシーフは性格からして、もうここには来ないだろう。
ほかにいる場所もさっぱり見当が付かない。
手当たり次第にレベルに合う狩場や広いゲフェンを探し回るくらいしか思いつかないが、それでも奴は身を隠しているだろう。

だったら、希望はあの青年の仲間。正反対のような性格した赤毛のシーフ。
顔はよく覚えているが、まだそれらしい人影は見えない。

『おい、いるなら返事しろや!』
『…うるせえ、気分が悪いんだ。話かけんな。』
悪友のへらへらした声にも腹が立って怒鳴るように言い返す。

『なんやねん、こっちはせっかくお前にプレゼント用意してやったのによぉ』
『そんな気分じゃねえ。』
『ふーん…?まあ、しばらく俺らは俺らで遊んでるけどな。夜にはいつもんとこ来いや。』
『…また変なイベントしてるのかよ。』
『まーなぁ。けどな、お前、夜には来ないと絶対後悔するで。』
『…ふん。』

WISを切り、苛立たしげにため息をついて広場に視線を戻した。









「ごめんなぁ、アンタのダーリン来えへんみたいや。」
誰がダーリンだ、と言ってやりたかったが口はどうしてもひらけない。
白髪のシーフをここへ連れてきた男、その呑気な声が聞こえた。
できることならその顔を潰してやりたいと彼は思った。
けれど四方から抑えられて叶わないのは分かっている。
苛立ちを苦痛と共に押さえ込む。

意識を失いそうになる程の嫌悪感の中で、ぼんやりと「何故人間は固体なのだろう」と妙な疑問を浮かべていた。
液体なら意味の無い痛みや屈辱的行為などないだろう。
このままこのシーツに溶けて、悍ましい男どもから逃げて消えてしまえるのに。

「うぅ…」
後ろから突き上げられる度に漏れかける声を喉で押し殺す。
何度かあの鬼のような騎士に凌辱、暴行され、声を殺すのも慣れたものだと思う。

入れ代わり立ち代わり何人かの男と女が仕事の様にそれをする。
男を犯すのが好きらしい奴と、そうではない奴がいるようだが、そちらもわざわざ稚拙なやり方でヤッていく。
嫌ならやらなければいいのに、と思うと再び腹が立った。
男の体など、普通なら興味本位でも抱きたいなんて思わないだろうに。

「なーんかアイツ気ぃ立ってるみたいや。」
半分意識を放り出していたが、モンクの言葉を聞いてなんとなく意味を悟った。
こいつらは近頃俺を追い回していた騎士の仲間で、俺を奴と引き合わせる為…またはただの嫌がらせで、連れて来たのだろう。

「アイツの反応見てみたかったんだけどなぁ」
「マジかよ。あのスカした野郎のポカンとした顔、面白そうだったのになぁ。」

頭上の会話で、そろそろ開放してくれるだそうか、と期待した。

「…ッハ…でも、こいつ慣れてて、結構イイし…このまま監禁しといちゃ、だめ?」

今のしかかってきて犯してきている男がそんなことを口にする。
シーフの身体を気に入ったらしく、腰を動かしながら悦楽な表情を浮かべている。
それだけは死んでもゴメンだ。

「なら…そろそろ、舌を噛んでッ…いいか。」

裏返りそうになる声を抑えながら、それだけをなんとか挑戦的に言う。
一瞬の沈黙。
ずっと口が聞けないかのように黙り込んでいたシーフがやっと喋った言葉といえばこれか。

「ハハッ、このガキ根性は一流だな。」
「あんまいじめんなや、後でアイツに殺されるで。」
「惜しいな…っふぅ…じゃあ、あと一発、やらせろよ」

周りの楽しそうな様子が尚腹立たしい。
けれど、なんとか解放はしてもらえそうで安心した。

今はもう死ぬことだけは嫌だ。
あの頭の弱い友人が悲しむから。
もう少ししたら、あの眩しい笑い顔に会える。

そう思えば気が楽になり、まだ耐えることはできそうだと思えた。