まるで死闘の舞台の為に備えられたような何もない部屋の床に夥しいまでに血が飛び散り、人間の身体の一部まで転がっている。
その血と肉の保持者であった男はまだ生きている。
生きたまま冷たい床に転がり、周りにいる人からの視線を浴びている。


「李沙」
銀髪の青年が全てを指示する前に、リサと呼ばれた女性がそっと前へ出て行動に出る。
合流したギド、シンリァ、そしてそこにいるホワイトスミスのシェイディと同じく、彼女も転生二次職である。

不意に女性がその床に転がる男の脇に座り込んだ。
白と赤の布で作られた法衣には皺一つなく、サファイアのように鮮やかで絹糸のように光沢あるセミロングの髪。
その顔はマスクで見えないが出で立ちだけでも威厳ある、ハイプリーストだ。

「ご安心下さい。」
彼女はそうとだけ言って、床の血溜まりに転がる男であった残骸に向き合う。

片腕と両足を無くしたその体は壊れた人形のようで無惨だ。
それを見ても彼女は顔色一つかえず、彼女は主であるシェイディの意図をくみ、本人の言葉も待たずに男の治療にあたった。
彼を傷つけたマナを殺人者にしない為に。


「…これが君の望みだったのか。」
シェイディが治療を受けている男の傍らに膝を付き、問い掛けた。
だが男はそれに答えない。

「…もう、立ち上が、る…足も、ない…。殺、せ。」
男は地を這う声で抗議する。
その声は取り囲む男女に向けられたものではなかった。

「殺せ…」
つぶやく男は視線を李沙でもシェイディでもなくマナに向けていた。
彼女に向かって「殺せ」と言っていた。

「マナさんに人を殺させるわけにはいかない。」
「殺、せ」
「命を投げるな。君には後に話したいことがある。」
「こ…ろせ」
「君を許しはしない、贖罪などさせない。君が望まないのだから。」
「ならば…!」

「だが人には何かしら価値がある。君を腐らせ土に還すのは惜しい。だから俺達の為に、マナさんの為に、まだ生きて動いてもらう。」
言うシェイディの声には批難も慈悲もない。
ただ厳格で無感情。

「殺、して…くれ…」
「君は俺達に加担することを決めたとき、もう罪を重ねることに疲れたと言ったな。贖罪の代わりにすべてを終わらせたいと。
だから俺は君を許しはしない。二回目言わせるな。生きるか死ぬか、それは後で冷静になった頭で考えろ。
それまでは俺が君の価値を使わせてもらう。」
男の声は懇願になっても、シェイディは容赦なかった。




「ルーカス…」

まるで呪文のように、かすれた声で瀕死のアサシンクロスはつぶやいた。
それを聞いた瞬間、マナがシェイディの腕をつかんだ。
また怒りに我を忘れない為に。

「…黙れ。お前が…」
男の声に答えるように呟く、マナの声は男と同じくらい掠れて弱々しかった。

「レナ…」
「お前がその名前を口にするな!!」
マナは悲痛に叫んだが、彼に飛びかかるのはなんとかこらえていた。

それでシェイディやルナティスには分かった、男がつぶやいたのはマナの両親の名前だと。
彼女に向き合い、そのアサシンクロスを視界から隠すようにして話しかける。

「マナさん、話したいことがある。この男の言葉は少し無視してくれ。」
彼女の肩を押してその場から離そうとしたが、彼女の足は地に張り付いたようにそこから動かない。
まだ仇をとりたい、しかし殺してはいけないと葛藤しているのだろう。

「この男は俺たちの内通者です。」
「……。」
男との会話を打ち切り、シェイディがマナに向かい合う。
「……ど…ゆ、ことだ…。」
泣き腫らし声は涸れ身体はボロボロで、いつもと変わりきったマナが、シェイディに呆然と聞いた。

「長年俺達が此処を調べ、交渉を持ち掛けられると判断した男。彼はこのサバトの中で数少ない外界を知る人間で、生まれもサバトの外だった。だから内通者に仕立てるにはうってつけだと。」
「……」
「…その過程で彼の過去と行いを知り、マナさんから聞いた両親のことを思い出して…貴女の両親の仇だろうと、見当はついていた。」

彼女は終始、話を聞いているのかいないのかわからない様子だった。

「…本当は、サバト内部の情報を騎士団に売りつけるだけのつもりだった。
俺たちが動くつもりはなかった、サバトを潰すことも考えていなかった。
でもこの男と接触することで、マナさんの両親がここに関係していたかもしれないと知ったから、今回踏み切った。」

両親のことを口に出され、マナが顔をあげて赤く充血した目でシェイディを見た。
彼女に「知りながら教えずにいてすいませんでした」と告げてから、そのまま謝罪を続けるように続ける。



「この男とマナさんの両親は三人でパーティを組んでいた。ルーカス、レナ、そしてアイヴ。
その時はまだ、サバトはこんなにも影の存在ではなく、引き込まれた三人はその組織が何をしているか知らなかった。
けれど怪しんでいた頃に二人の間に子供ができて、その子を守る為に二人はサバトを抜けた。」

「…それで、追ってきた元仲間に殺された、ってのか…そこの男に。」
男を弁護するでもマナをなだめるでもなく、淡々と告げる。

「確かにこの男は俺たちにアイヴだと名乗り、確認したらそれは本当でした。
そして彼がサバトに命じられてマナさんの両親を殺害した記録もありました。」

しかし、と逆接をつけて彼はマナに言い聞かせる。
「ただ記録上、アイヴという男と二人を殺した男は一致していない。」
「…記録のミスとかだろ、そんなん。」
「…アイヴとサバトの追跡者でマナさんの仇が別人であることは確かな記録です。でもこの男がそのどちらでもあることも事実。
何故そんな食い違いがあるかは分からないが、そういう小さな食い違いが隠れた事実の鍵になりうる。
早まって仇と決めつけるべきではありません。」


仇だとただ憎んで殺す。
それで復讐が済めば彼女にとってどんなに楽だろう。

だが彼は敵ではないかもしれないと曖昧なことを言って、殺すなという。
それが彼女にとってどんなに辛いか、シェイディは理解しているつもりだ。
だがそれでも、彼女には真実を見つけて欲しい。
真実にたどり着いた上で、すべてを終わらせて欲しい。

「…後は、俺達に任せて下さい。」
珍しく、苦虫を噛みつぶしたような顔で、声に迷いを持たせながらシェイディはマナの肩を叩いた。

「……後で文句は聞き入れる、殴って構わない。だから今はすぐにくる支援に合流して、戻って身体を休めて」
「シェイディ」
「…?」
マナは俯いたまま言う。

「私を殴れ。」




「……は?」
彼は目を点にして固まった。
言うまでもない、そんなことができるわけない。

「シェイディ駄目ならルナ、私を殴れ。」
「マナさん、何を」
「ほいきたあ!!!!」

「!!!??」
困惑するシェイディをよそに、言われたルナティスは喜々としてマナの頬を走り込む勢いもいれて殴った。
しかもグーで。
只でさえ重症なのにそこに男から思い切りグーで殴られ、当然彼女はバランスを崩して床に転がった。

「マナさんに何しやがる!」
「げふっ」
シェイディがカウンターの如くルナティスを殴った。
もちろんグーで。

「いや、頼んだのマナじゃん。」
「だからってグーで行くか?!」
「マナはグーで殴られたって打ちのめされたって泣いたって、ヘロヘロになるタマじゃない。」
だろ?とルナティスは膝をついて頬を押さえているマナに笑いかける。

その口元が、引き締まり、笑った。
そして「当然だ」と呟いた。

「でもだからって女をグーで殴るんじゃねータコ。シェイディ、も一発そいつ殴っておいて。」
「え。」
本当は彼女も殴り掛かりたかっただろうが、先の闘いで負った傷が響くらしい。
シェイディにそんなことを言って笑う。

彼女の心身の強さを思い知り、シェイディは苦笑いした。
やはり、いつまで経っても彼女には叶わない。

「今は時間が惜しいので帰ってから比較的死に近い半殺しにしておきます。」
「それ半殺しじゃなくて殺しじゃないか!?」





「さて、セイヤ」
シェイディに突然名前を呼ばれてセイヤは驚き返事を忘れてただ姿勢を正した。
「…外に向かえばすぐに騎士団が突入してきている。そこまで送ってやってくれ。」
「は、はい。」
マナは重傷を負った為、セイヤをつけて戦線を抜けさせた。




シェイディは既に総勢で突入してきている騎士団が、時期にここを完全包囲すると言う。


「…本当に大丈夫なの?!」
全力で走り息を切らせるルナティスが叫ぶように聞く。

「ここの大まかな見取り図は自警団に渡してきた。
皆が囮になったから奴らは俺達の包囲に気を回してその更に外のことには無防備だ。
幸いここの“最凶兵”も今は息を潜めてるしな。」

最凶兵、そう言われ思い出すのはあの獣のような女性。

ルナティスは初めて彼女を見た時はただ恐ろしいと思った。
だが二度目に見た時、違和感を感じた。
彼は爪を向けられながら咄嗟に『敵ではない』と判断して油断したのだ。

「まだまだ騎士団の突入やこちらの勝機の確証はあるが、きりがないから省く。」
こちらの勝機を誇りも喜びもせず、ただ現状報告としてシェイディは口にしただけだった。

それだけで、周りにいる皆の不安をどれだけ軽減させたことだろう。
ただルナティスはずる賢い。そのシェイディの言葉は皆の不安を軽減させることが目的の言葉であって、それが真実かということは疑った。

現に、過去にここへ来た者達を全滅させたルイ、もしくはまだあるかもしれない兵器は残っている。
そして自警団がここにきているのが確かでも、突入している最前線は今ここにいる皆だ。
統率された部隊ではない、一介の冒険者のパーティーなのだ。

そう思ったところで口にするわけにはいかず、ルナティスはただ走りながら苦笑いをひとつしただけだ。
「シェイディ、少し見ない間にエラソーになったな。」
「見合う力は付けたつもりだ。」
「なら僕におぶらせないで自分で走ってくれないかな!?」
「この方が早い。」

そういうシェイディの身体はルナティス達が最後に見た時より少し若くなった。
年は10代半ばだろうか。
本当ならば成長期を越えて男前の青年になっていた筈だ。

しかし若くなってはいるが、身体は鍛えあげられている。
足も遅くはないはずだ。

つまり走るのが面倒臭いだけだろう。

「疲れるし咄嗟に戦闘できないよ!」
「もう皆が戦う必要はない。」
「え、なんで?」
ルナティスの頭の後で、彼は密かに口元をゆるめた。

「我らが切り込み隊長がきた。」

「切り込み隊長って…いった!?」

シェイディは突然会話の最中に馬の手綱をひく様な動作でルナティスの後ろ髪を引っ張った。
頭皮から引きはがされそうな痛みにルナティスが声を上げて足を止めた。
「…すぐ上で騒ぎが起きてる。」
そう言って彼はルナティスの背から降りた。

髪を引っ張ったのは本当に手綱と引いたのと同じ目的だったらしい。



細長い廊下を走り続けてきて、一同は地上から建物の頂上まで吹き抜けになっている広間に出た。
ただしそこは広間を見下ろす螺旋階段の途中で、一番下までは4,5階ほどの高さがある。

その現状を把握するのに数秒、あたりを見回していた。







その瞬間に目の前を階下へ、人影が二つ落ちていった。

「ヒショウ!?」
その正体に真っ先に気づいたのはやはりルナティスだった。
ぎょっとしてみんなで階段の手すりから乗り上げて階下を見下ろした。
どこから落ちたのか分からないが、そう簡単に飛び降りれる高さではない。

だが彼ともう1人の女性は共に全く危なげなく床に着地していた。
落ちてきたのではなく、飛び降りてきたのだ。


「待て馬鹿!!」
突然、レイヴァが珍しく声を荒げた。

探していたヒショウが突然目の前を通りすぎて混乱した頭で彼らの着地を見て、できる筈もないのにそこから飛び降りられると勘違いしたのだろう。
ルナティスが手すりに足をかけて今正に飛び降りんとしていたのだ。
レイヴァが間一髪のところで羽交い締めにしてとどめた。

「ヒショウ!!」
「早まるな、せめてちゃんと階段から下りろ!」
とは言うが、階段は5階分としてもぐるりと空間を回る大きな螺旋階段。
それをいちいち降りていたら時間が掛かる、とルナティスはそこだけは冷静な頭で判断していた。

聞き分けのないルナティスにレイヴァは押さえる手を放してやろうかと思ったかは分からない。
だがシェイディが冷静に口を出した。



「あそこは最下層だ、上から追ってくるサバトの奴らにヒショウはすぐに囲まれる。」
「…?!」
よりによって更にルナティスを煽りそうなことをさらりと口にした。
ちゃんと先を見越した上でものを口にする男だというのはその場のメンバーは既に理解していたが、それにしても毎回ひやひやさせられる。

「あそこに突っ込んで一緒に囲まれるのは不毛だ。俺達はその更に周りを囲む。」
「今度はヒショウを囮にしろっていうのか!!」
「そうだ。一番確実に勝利して、彼を取り戻す最善の策だ。」

とても簡単に口にできないことを、確信して彼は言う。
一体その自信はどこからくるのか、だが彼の自信は信用に値すると見ている者は思う。
そんな力がシェイディにはあった。

「…ヒショウの、安全は。」
「安全は保証できないが命の保証はできる。あと確実なのはあそこに突っ込んだ奴は、ヒショウとその隣の女以外確実に殺されるという事実。」
だから下がれ、そうまで言わずともルナティスは眉をひそめながらも時期に手摺りから身を引いた。

シェイディが何故そう言い切れるのか、理由を聞けば彼は的確に答える。
彼はちゃんと答えを持っている、だから聞かずとも信用できる。

「シェイディ、本当に変わったな…。体は小さくなったのに中身が格段に男前だよ。」
苦笑いしたルナティスにたいし、シェイディは疲れた笑みをこぼす。

「危険な戦地を駆けるくせに無謀に突っ込む馬鹿共の参謀を押しつけられてたからな。」





「ルイ」
ヒショウとルイの前に姿を現したのはサバトの頭領。
あたりには騎士団が駆けつけ、ヒショウとルイを囲むサバトの一団をさらに囲っている真っ最中だ。

サバトの勢力はその場に残り30程度。
それに比べ騎士団は倍近くが彼らを囲み、階上では狙撃班が待機。
絶体絶命の状況でありながら彼らは動じず、頭領は中心の2人と向かい合って回りを見ていない。
その2人がこの場を切り抜けられる兵器であるからだ。

「ルイ、戻ってこい。」
頭領は手を差し出す。
それを向けられた女性は張り詰めさせていた表情を僅かに緩めた。
彼が本来の主人であると、優秀な番犬は戻るべき場所を心得ているのだろう。
だがその主人と同じくらい大事な仲間がいる、とばかりにヒショウを見た。


「…っ」
彼女の視線の先でヒショウが突然倒れた。

ルイが喚きながら彼の傍に駆け寄った。
彼自身何が起きたかわからない。
ただ目蓋が重く、めまいがする。

だが即座に理由を悟る。
階上から飛び降りる直前に肩に刺さった矢に睡眠薬が塗られていたのだ。

「…くっ」
今更手遅れだが、歯を食いしばり肩に刺さった矢を抜こうとした。
矢に指先が触れたが背中寄りの位置に突き立っているために掴めない。

ルイがヒショウの意図を汲み、変わりに矢に手をかけた。
「――ッッアアアアア!!!!」
肩を抉られたかと思った。

幸い鏃に返し刃はなくただの針のようだったが、信じられないほどの激痛。
それが反射神経や感覚が鋭い分、痛みにも敏感になっている。
強くなる為に負わされたリスク。

痛みが頭痛と眩暈を引き起こし、ヒショウは口を閉じることも出来ずに地面に蹲ってもがいていた。
ルイはただ彼の腕にしがみついて心配そうに顔を覗き込んでいた。
その様子は切って離せぬツガイのようだ。

「ルイ、そんなにその男が大事なら、俺達を囲む奴らを始末しろ。」
頭領がそう言って、両手を開いて周りの敵を指し示した。

「奴らはその男も殺すぞ?」

ルイはただ何者からもヒショウを守ろうとしただけで、サバトが彼を殺そうとしたことも知らない。
主人が敵をやれと言い、大切な仲間をその敵が殺すというならば、やらない理由はない。

彼女は即座にターゲットを絞り始めた。



「…やめろ、ルイ。」
今にも周りの人間達を食い殺そうとする彼女を、ヒショウが引き止めた。
強く、彼女の腕をつかむ。
その手は既に先ほどまで行った殺戮で血に濡れている。

それでも、今彼女が殺そうとしているのはサバトを討ち正義を貫こうと集まった騎士達だ。
彼女に彼らを殺させてはいけない、もう罪のない人を殺させては、人を殺させてはいけない。

「ルイ、君は…人間だろう。」
この問いに、彼女は以前首をかしげた。
今もまた同じだった。

「君は、人間だ。」
だから言い聞かせる。
分からないなら教えてやればいい。

「俺も人間だ。彼らも、人間だ。」
請うように彼女の腕を強くつかみ、強く言い聞かせる。

「殺しては、いけない。…もう殺さないでくれ。」
もう血を見たくない。
見てはいけない。



これ以上血をみたら、自分の中の何かが壊れる気がした。

少し前からおかしかった。
睡眠薬が体に入り、弱ってからもっとおかしくなった。

血を渇望している、以前彼女が食わせようとしてきて吐き出した、あの肉を今は渇望している。
ヒショウはそう自覚し始めていた。
彼女の手に付着した血にさえすがりつきそうになる。

「頼む…人間…なんだ、俺達は…俺は…」
喉の渇きが、また酷くなってくる。
渇いて、渇いて、死んでしまいそうだ。
いつの間にかここから逃げることよりも、周りにいる多くの“人間”に飛び掛ってしまわないように自制することしか考えられなくなっている。
おあづけされている犬のように。

犬……もはや、自分もルイと同じなのか。
彼女のように人を食い殺し、人として扱われなくなるのか。

そんなのは絶対に嫌だ。
ルナティスが、すぐ近くにいるのに。
何も知らなかった頃、檻のような施設から自分達は奇跡的に逃げ出した。

自分達には、希望があったのに。


「人間だ」とルイに言い聞かせるよりも、自分で唱えて最後の理性を保たせようとしていた。
汗が涙のように彼の頬から顎の先へ流れた。

「ルイ!!殺せ!!」
頭領が堰を切ったように怒鳴る。
「殺すな!!!!」
それに対してヒショウが必死に叫ぶ。
主人と仲間の声に、どちらもとれずに彼女は立ち尽くす。


番犬を惑わす声に対し舌打ちし、頭領はまだ出回っていない大陸の銃を抜いた。
その場にいるものの多くが、まだ本物を見たことがないとはいえその存在と攻撃方法は知っていた。

「っ!」
ヒショウが逃げようと体を動かす間も無く、鋭い爆発音が一発、響き渡った。