〜あらすじ〜
ずっと親友だと思ってきたルナティスの罠で、「自分は彼の恋人であるマナを、酔って襲ってしまったんだ…」と思わされ、襲われたヒショウ。
けれど翌日に、彼は真実を告げられ、ルナティスに告白された。
騙されたとわかっても、悪い気はしないし、ただ嘘であったことにホッとしたヒショウ。
そして彼は、ルナティスからの告白に『10年保留』を言い渡す。

 

 

「ベナムスプラッシャー!!!」
常に空中にいるような華麗な動きと、パタパタと倒れていくモンスターを背景に、後輩の一次職の少年少女の目を引きつけていたアサシン、ヒショウ。
彼が突然、今まで使わなかった技を発動した。
「ぎゃあああああああ!!!!!!!!!???」
「「「(|||゚Д゚)ルナティスさああああああん!!!!!???」」」
さっきまで敵を正確に射抜いていたヒショウが、イキナリ手元が狂ったように、隣でパーティーのクルセイダーを支援していたルナティスを攻撃してしまった。
「ああ、悪い、手元が狂った。許せ。」
「……よりによって、僕が毒になった瞬間にベナムやっといて、わざとじゃないだと…?」
さらりと言うヒショウを、ルナティスはぢろりと睨む。
辺りの敵は、みんなでそこそこ一掃でき、♀BSのマナと♂クルセイダーのレイヴァは、一休みしながらヒショウとルナティスの騒ぎを眺めている。
一次職軍の♂アコライトと♂アーチャーと♀剣士はみんな似た様子で、2人のやりとりをおどおどして見つめている。
さっきからこんな2人の騒ぎはずっと起きている。
わざとルナティスをいぢめるヒショウだが、元はといえば先に仕掛けたのはルナティスなので、誰もどちらが悪いとは言えずにいる。

 

最近、前以上に仲が良くなったように見えていた2人だが、誰もそのことをあまり気にしていなかった。
むしろ、過剰にみんなの前で無口だったヒショウが、ルナティスだけでなく、みんなにも柔らかくなっていた気がしたので、良いことだと思われた。
しかし、それは数十分前に崩れた。
「ねーねー、ヒショー」
「何だ?」
周りはすでに他の戦士達が戦闘を開始していたので、とくにモンスターと戦うことなくほのぼのと話しながら歩いていた。
「お前さ、僕とは10年保留とか言ってたじゃん」
「……言ったな」
その2人の会話に、マナ以外は頭の上にクエスチョンだ。
「なんかもー、それを宣言された時はちょっとガク〜っと来たけどさ」
「……」
「僕、10年くらいなら待てる」
「………」
「かもしんないけど、やっぱちょっと不安なんだ」
「…………………。」
なんだか一瞬、顔が温かくなったヒショウだったが、あとに続いた言葉で眉間に皺が寄った。
べつに、期待していた訳ではない…、と、本人は自分に言い聞かせる。

「で、僕が待てないって事は、ヒショウも待てないと思うんだ!」
「(何を勝手な……)」
てゆーか、ヒショウはやはり性別のこともあって、あまりルナティスをそうゆう目で見られない。
ただ、一緒にいられて、彼と楽しく過ごしていられれば、恋人にでも何でもされてしまってもいいとか思っていただけだ。だから、本人は待つも何も考えていない。
「だから、僕なりに解釈したんだ」
「(解釈…ってことはタダの言い訳だろうが)」
ヒショウは彼にツッコミを入れたくてもツッコまない。
下手に口を出して、押し問答して、ボロを出して、レイヴァや後輩達に知られたくない。
ヒショウ自信が同性愛だのなんだのが嫌だと思わなくても、やっぱり少しは男同士がそんな関係だなんて異常だ、と思うから。
ルナティスもそのはずだ。誰にも言えずに、マナに開かしてしまうまで、ずっと1人で悩んでいたのだから。

その、はずだった。

「10年っていうのはもっと上の関係のことで、もう付き合ってもいいと思うんだ!!」
「………………………………は?」
力を込めてそう言うルナティスに、ヒショウは開いた口が塞がらなくなった。
その他のメンバーも同じくだ。
全員その場に立ちつくした。
「で、僕たちずっと一緒だったからお互い知り尽くしてるよな!だから、来年くらいには結婚しよう!!
「……………ぇ、ちょ……」
ヒショウは言われていることがわからなくなって、マスクの下で口をパクパクさせていた。

けれど、
「きゃ──────!!告白キタ───────!!!」
マナがイキナリ歓声をあげた。
その“告白”という単語のせいで、ヒショウが知られたくなかったことが…みんなに一斉に知られてしまった。
「……ぇ、まさか…2人ってそうゆう……?」
レイヴァが危ない物を見るような目で見てくる。それでヒショウは少し泣きたくなった。
「えええ…ヒショウさん抜け駆けっ…!!」
「ヒショウ、ルナティスにだけは砕けてるとは思ってたけど…まさかそんな関係だなんで…」
ルナティスを目指しているというアコライトのセイヤと、アーチャーのウィンリーが『まぁ聞きました?奥さん』スタイルでコチラを見ながらヒソヒソと話している
「ヒショウさんの馬鹿ぁああああん!!!!」
剣士のメルフィリアは泣いている。
夢見る乙女にこんな話はかなりショックだったのかもしれない…、とか、何故だか罪悪感を感じてしまった

「っ、まえ…この馬鹿…っ!」
みんなの反応で、気がおかしくなってしまいそうになりながら、ヒショウはルナティスを思い切り睨んだ。
けれど彼はその睨みにも動じず、ヒショウの手をぎゅっと握る。
「それで、お前が言ってた10年後には僕らの子供を作ろう!!!
作れるかぁあああ!!!!
戦闘以外では本当に珍しいヒショウの叫びに、一同が目を丸くした。
そして、容赦なくカタールをなぎ払った。だがルナティスはそれを間一髪で交わし、再度ヒショウに詰め寄る。
「多分大丈夫。愛があれば作れると思わない?
聞くな阿呆!!大体俺にはお前に対して友情以上のものはない!!」
「そ、そんな…!!『俺の愛で10年後には子供を産んであげる』って言ってくれたじゃ…」
言ってねぇどこも合ってねぇ!!!!!
ただ、彼の傍にいられればいいと思っていたヒショウだが…
やはり傍にいるのは危険かもしれない…と思い始めた。

「…っ、これ以上、訳のわからない、変なことを言うな!!」
もう、この環境に耐えられなくて、みんなにさっさと進もうと声を荒げて先に歩き出す。
「で、でもヒショウ!!僕は…」
ルナティスがまだなお叫んでくる。
苛立ちながら振り返ると、ルナティスは眉根を寄せて、拳を握って…必死になって叫んでいた。
「ほんっとうにお前のこと好きだから!!」
ものすごく人通りも多い上にギルドメンバーのいる中で叫ばれて、もの凄く恥ずかしい…の、だが、ルナティスの表情を見ていると、胸の奥が熱くなった。
ルナティスは更に、ヒショウに伝える言葉を探す。
「なんていうか、俺、ずっとお前のこと考えてプリーストになったし、もうみんなに知られたってどうってことないくらい好きになったし」
「………」
ヒショウだけではなく、周りのみんなも、2人を咎めることが出来るわけがないと思うほどに、ルナティスの必死さを感じた。
「それに…、俺が空っぽになるくらい壊れるくらい子供だってできるくらいにヤりまくっていきたいっ…!!

 

 

チーン

 

「あ、違っ!!そうじゃなくて…!」
ルナティスが慌てて訂正しようとするが、みんなが問題発言にパカッと顎が外れるのと同時に、ヒショウのカタールがルナティスに容赦なく遅いかかっていた。

「……気持悪いわボケ」
血に濡れたカタールをダラリと下げて、ヒショウは先に進む。
「じゃなくて…それくらい仲良くやっていきたいって…」
「言い間違いすぎだろ」
泣きながら力尽きるルナティスの傍らで、マナが楽しそうにながめながらそんなツッコミをくれた。

 

それから、彼の機嫌は最悪だ。ルナティスはもちろん、他の誰が話しかけても何も言わず、戦いになる度にルナティスを誤撃する。
みんなはそわそわしているけれど、ルナティス本人は悪い気はしなかった。
彼がそんなに感情を表に出すのは久しぶりだったから。

 

やっと町に着いた。みんなで宿を取り、それから自由行動になった。
が…
「てめぇ…」
いきなりマナがヒショウの逆鱗に触れた。
何故なら、ヒショウとルナティスがダブルの部屋で、他五名はまとめて六人部屋に泊まることになっていたからだ。そしてそれを決めて宿をとったのはマナだ。
「だって仕方ないじゃんそれしか空いてないっていうし〜」
「普通性別でわけるだろ、ここは…!」
「だって、んなことしたら私がメル襲うゾ?」
マナの発言に、メルフィリアは隣で「いやんv」とか言っている。
「襲うな馬鹿、赤くなるなメルフィリア」
二人に高速でツッコミを入れたあと、ヒショウは深いため息をついた。
「六人部屋だけとれ。俺は野宿する。」
言うと彼はさっさと宿をでようとした。慌ててそれをルナティスが止めるが「朝には戻る」とだけ言って、彼は逃げるように行ってしまった。

 

野宿なんて久しぶりだ。
小川からそう遠くない所に火を起こした。まだ太陽は沈みきっていない。明かりの為ではなく町で買ったもので料理をする為だ。
水と野菜と調味料を適当に小鍋に入れ、煮ている間に小動物を狩ってきた。
それらが食べられる状態になった頃には日は沈みきってしまった。

腹がいっぱいになり、ぼんやりと焚き火の炎を見つめていた。

 

『なぁ、ルナティスはなんでプリーストになったんだ?』
あれを聞いたのも初めての野宿の時だった。
二人でずっと育ってきた施設から、逃げ出すように出てきた時だった。
もう僕らは他の世界で生きていけるから、と…ルナティスに手を引かれていた時だった。
『ヒショウがアサシンになったから』
彼は笑いながらそう答えたのだった。
今、思えば…ルナティスはあの時からずっと自分のことばかり考えていた。だから自分も彼のことばかり考えていた。
今日だって、腹を立てながらもモンスターとルナティスの位置を気にしてばかりいた。それが必然であるかのように…。
今だって…。
「……」
正直、ルナティスのあの言葉は嬉しかった。それ以上に恥ずかしかったけれど。
嘘だったが、マナと付き合うと聞いたとき、確かに祝福した。
だから、ルナティスにいつまでも引っ付いていなくても済むように、独りになる努力をしていた。彼の支援は受けないようにしたし、一人で戦う時間を増やした。
そうしながら…いつも、本当に独りになる時に、脅えていた。
独りに脅えていたから…、今日の彼の言葉は『独りになることはない』と慰められたようだった。
けれど、恋人だとか、結婚だとか、子供だとか(どこまで本気か分からないが)、真剣に言われると悩んでしまい、焦ってしまう。
いろいろと問題がある…世間呈だとか…。ヒショウ本人の気持ちだとか…。
ただでさえ、女性にもそんな感情を持ったことがないヒショウには全く予想だにしなかった展開だ。
「………っあー………」
前髪をクシャリと掴んで、かすれた声を漏らした。
考えすぎて頭が痛い。まだ三分も悩んでいないのだが。

さっさと眠ることにした。
防具や、体を締め付ける帯を外して、毛布にくるまる。
今夜は温かい。たき火は必要ないかも知れない。幸い、ここに獰猛な動物も、アクティブのモンスターもいない。
安心して眠りにつけた。
「…………」

珍しくものを深く考えたせいか、完全に寝入ってしまった。

 

 

 

「レイヴァ!!頼む!!お願いっ!!!」
さっきからにぎやかな室内で、ルナティスの懇願が響いている。
「俺ではなくても、お前が行けばいいだろう。」
対するレイヴァは仏頂面でそれの一点張り。
「僕が行ってもヒショウに嫌な思いさせるだけだし…」
「…やましいことを考えなければ問題ないだろうが」
「考えて無くても既に前科があるから、ヒショウは安心できないだろ」
“前科”という言葉に、眉根を寄せたレイヴァだったが、あえて聞き流した。
ため息をついて横目に、後輩達とカードゲームをしているマナを見た。
「……マナ、お前が行ってやれ」
彼女はこちらを見もせずに「嫌だ」と返してきた。それにルナティスが深くため息をつく。
「…ルナティス、アイツだって立派なアサシンだ。あの森のモンスター達は獰猛でないし、仮に襲われてもヒショウなら楽に倒せる。」
ルナティスの落ち込み様をみても、行く気にはなれないレイヴァは、そういって彼を説き伏せる。
が、彼は項垂れた頭を上げる気配はない。
「モンスターはあんまし問題じゃないんだよ…」
「…では何が?」
「人間」
「…この辺りは別に賊の噂はないから…」
「そうじゃなくて!!アイツすっごい寝付きが良いんだよ!一回寝たら本格的に起こさないとなかなか起きないんだよ!!森で1人で寝てるアイツを見たら誰だってこう…ムラムラっとくるんだよ!!!」
あまりこうゆうことに免疫のないレイヴァは、心の中で「それはお前だけだ」と言いながら、こめかみに青筋を浮かべた。
「それにさぁ、ヒショウ、表に出さないけど、本当に寂しがりだし、独りがすっごく嫌いなんだよ…」
「………」
ルナティスのヒショウを気遣う様子は、誰でもその本気さが分かるほどだった。
思わずレイヴァは、いってやろうか…、と考えてしまう。けれど
「ルナティス。…お前はヒショウのことが好きなんだろ。だったら嫌われてても、アイツの傍にいるのはお前の役目だろう。」
珍しいレイヴァのまっすぐな姿勢に、みんながおおっと拍手をする。
ルナティスは彼を見上げた。その目が異様に輝いている。
「そうかな…?」
「お前以外に、誰がアイツの気持ちが分かる?」
子供っぽい彼の表情に、思わずレイヴァの表情が緩む。
「…うん、そうか…。やっぱ、僕、行ってくる」
彼は立ち上がり、ローブではなくコートを羽織ると、さっさと部屋を出ようとした。

「ルナ」
ドアノブに手を掛けた瞬間、その時を待っていたかのようにマナが声をかけてよこした。
彼女はベッドの上に置いてあったカバンの中身をあさり、何を取り出し、ルナティスの方に投げてよこした。
「油断しないで、ちゃんと準備くらいしろ。それ持ってけ」
ルナティスはそれをキャッチした。
「……………」
しばし、呆然。“それ”が何なのかしばらく分からなかったから。
けれど、たっぷり時間を置いてからそれに気付き、顔を真っ赤にした。
彼女が渡してきたのは、いわゆる“潤滑剤”だ。
「ま、マナッ…!!今日は別にそうゆうので行くんじゃないんだから!!!」
「(´▽`)気にするな、取っておけ」
みんなは何を渡されたのか分かっていないらしい。
手の中にあるそれを隠すようにして、ルナティスは部屋を去った。

 


 

潤滑剤持ってる時点で確実にやるね…(マテ


 

「…っはぁぁぁ〜〜……」
彼は音は小さく、深くため息をついた。
やっとヒショウを見つけた。
河の近くだろうと推測して探していたが、まさかたき火をしないで野宿しているとは思わなかった。
いや、今夜はそんなに寒くないから、小さなたき火を作っただけで済ませたのだろう。
まだわずかに熱を持った炭が赤く小さく灯っている。
思った通り、ヒショウはすっかり寝入っていた。

「……どうしようかな…」
ここで一緒に寝てしまっては、なんだか情けない。
仮眠にして、ヒショウの眠りの番をすることにした。今日の、せめてもの詫びだ。
ヒショウの隣に静かに腰を下ろした。
たき火の周りに、動物の骨と、わずかな料理の跡。ちゃんとしっかり食べていたことにホッとした。
してから、なんだか自分がお袋みたいで、少し可笑しくなった。

今夜は月も星も明るい。
火の明かりが無くても、ヒショウの顔がよく見えた。
猫のように横向きになって体を丸めている。まったく、無防備だ。
青白く映る頬に、顔を洗ったのか、濡れた髪が張り付いていた。
黒い睫毛がしっかりと下を向いて、目がしっかり閉ざされているのを強調している。
「……」
ルナティスは彼の頬の髪を払った。
その髪は闇のように真っ黒なのに、今は月に照らされて繊細に輝いている。
指を通すと、サラリと流れた。几帳面な彼のことだから、こうゆうところにもしっかりと手を入れているのだろう。

月の下のヒショウは綺麗だった。
目を開けたらきっと、もっと綺麗だ。
そして…それを脳裏に描いたら、不安になった。
自分は彼に釣り合わないのではないか。
一度抱いた。
その感覚は今でもハッキリ覚えている。
けれど、ハッキリ覚えすぎていて…少し、おかしくなりそうになる。
その一度で、自分はもうヒショウを忘れることは消して出来ないと、分かってしまっているから。
手を出してはいけなかったのかもしれない。それなのに、触れてしまったから、自分は呪われたのかも知れない。

「……なぁ…僕たち…ずっと……親友でやってきたよな……」
これから“友”でなくなったとしても、これまではそうだったはずだ。
「……僕は、お前に出会って、良かったんだよな…?」
彼の頬に触れた。温かい。
「……アスカ…」
ヒショウの本当の名前。
自分だけが知っている、ヒショウの本性。
ヒショウの全てを知っているのも、アスカを知っているのも、自分だけだったはず。

 

『ヒショウ、もうここを出よう』
考えもしなかったことを言われて、しばらく目を丸くした。
目の前のルナティスはとにかく必死な様子だ。
もう消灯時間で、薄暗い部屋の中、寄り添って小さな声でやりとりをしていた。
「ここを出よう」と言われたのはルナティスが晴れてプリーストになり、施設に帰ってきた夜のことだった。
『どうして…?』
『だって、やっぱり、ここは普通じゃない…。みんなどこかに連れていかれたり…それに、ウォルスが館長に酷いことされたって…』
けれど、外にでたことはない。この施設の保証のない道を歩んだことはなかった。
だから、自分は出て行くのが怖かった。
『ヒショウ、このままじゃ僕たちも何をされるか分からない…』
彼は眉根を寄せて、逃げようと言った。
その必死さを伝えるかのように、ルナティスは自分の手を取り、指をきつく絡める。
『ルナティスは、逃げたいのか…?』
自分が問いかけたら彼は小さく頷いた。

『でも、独りは怖い…。けど、ヒショウ…いや、アスカがいれば怖くないから…』

だから、一緒に逃げよう。

その言葉に頷いて、彼の手をとった。
自分は外に出るのが怖かった。けど、それはルナティスも同じ事…
彼が“アスカがいれば怖くない”というのなら
自分も“ルナティスがいれば怖くない”と思った。

───だから…、ずっと一緒だよな…?
                ルナティス…

 

 

「ルナティス…」
眠っているはずのヒショウが、息を吐くように小さく彼の名を呼んだ。

それだけで、ルナティスは涙が込み上げてきた。
彼の心の中に、自分はちゃんといた。
たまらなくなって、彼の眠りを妨げるかもしれないということも忘れて、名を呟いてくれた唇に、自分のものを強く重ねた。
彼の唇を舌でなぞり、湿った口内を貪った。

「っ…はぁ…ぅ、ん…ふ…」
ピチャピチャという水音が耳の奥でしている。口内で何かが暴れている。
けれど嫌な感じはなくて、頭がぼーっとして…官能的な心地良さ。
そして、それには流石のヒショウも起きた。
けれど、自分が貪られているのに気付いても、それがルナティスであることに気付けば、彼に抱かれた時のことが浮かんで、抵抗する気が失せた。だから、彼の舌に応えて、それと絡まる。
「んぅ…ッ…ンッ…」
互いに息が荒くなって、どちらからともなくそっと引いて、触れるだけのキスをした。
「……」

火がともってしまった情熱が、ルナティスを攻め立てる。彼を最後まで貪りたい、と。
不意にマナに渡された潤滑剤を思い出した。
ポケットから取り出してヒショウの顔の脇にそっと置いた。
焦点の定まらない瞳で見上げてくる彼のシャツを胸の上までたくし上げて、露になった滑らかな雪原のような肌を、舌でなぞり、吸い付いて汚した。
「ぁ…ん、っ…ル、ルナ…、ィス…ッ」
ヒショウの腰に緩く巻き付いていたベルトを引き抜いて、ジッパーを引き下ろした。
「ッ…!」
恥ずかしさからか、ビクッと体が反応した。
けれど、まだ高ぶってはいないヒショウのモノには触れず、さっき出した潤滑剤に手を伸ばした。
ヒショウの見えないところでたっぷりて中指の先にすくい取り、それを彼のズボンの中に、後ろからそっと忍ばせた。
「っ…あ…?」
彼の秘部以外にも少し付いてしまったが、大体を彼のそこに塗り込み、中まで押し込んだ。
「ふ、ぁ…んっ、んぅ…!」
ローションの滑りで、ヒショウは以前とは比べ物にならないほど、簡単にルナティスの指を加え込んみ、最奥まで簡単に侵入できてしまった。
「ッあアァァ!!!や、ぁん…!!!ッそ、そこっ…」
その奥に触れた瞬間、彼がひときわ大きな嬌声をあげてたじろいだ。
腰を引こうとする彼を追い、更に奥に指を入れる。
「ここ…?」
さっきの場所を、指の腹で押したり撫でたりする。その度に指がぎゅうぎゅうと締め付けられる。
「っアアァ!!や、ヤだッ…!!!イぁ、ヤッ、やめっ!!!ヤァアぁア!!!!」
体を弓なりに反らせて、今にもイッてしまいそうなヒショウをみて、ルナティスは指を引きぬいた。その瞬間、ヒショウは糸が切れたように、ルナティスの下で脱力した。
ルナティスはまだ蓋が開いたままの潤滑剤に手を伸ばし、それをまた指先にすくう。

また…痛い思いをするのかと思ったのに、指だけでおかしくさせられてしまった。
よ過ぎる。
もうイカされそうになって、後ろ手に毛布をひっかいたり、草を掴んだりした。
そして不意に気付く。
───……草?
とゆうことは
───……野外?
なんでこんなところで、ルナティスとこんなことをしているのだろう?みんなは…?
確か、今日、町に着いたはず。
宿屋をとって…そうだ、自分は野宿にしたんだ。
何故なら………

ヒショウの頭が覚醒した。
それと同時に、そこに冷たい、ゼリー状の物が押し込められた。
「っんの馬鹿野郎がぁああ!!!」
「うわっ!!?」
同時に、ヒショウはルナティスを怒鳴りながら突き飛ばした。
「っルナ、ティス何…ローションなんか持ってるんだ…このッ…」
ヒショウが少し動くと、もはや性器ではないなんて思えないほどにぐしゃぐしゃに濡れたヒショウのそこが、くちゃ、といやらしい音を立てた。
さっきのローションが、奥まで押し込められていなかったのだろう。
それがヒショウの耳に届き、彼は余計にルナティスへの怒りを爆発させた。
「…ご、誤解!そんなつもりで来たんじゃなくて、これはマナに持たされて…!」
「だからって使うなこのウルトラ馬鹿たれが…!!!」
「…ごめん、本当に、今日はやましい気持ちなしで来たんだ…ヒショウが1人で、心配だったから…」
ルナティスの声は心からの反省を滲ませていたが、ヒショウは頭に血が上ってそれに気付かない。
ヒショウは体温も高ぶってしまった体を抱き込んで、ルナティスを睨んだ。
その瞳に居竦んで、彼は今更自分がしてしまったことの馬鹿さ加減をさらに反省した。
「っ、ごめん、ほんっと…」
「…もう、いい」
ヒショウは息をつく。

「…ルナティス、そのコート、貸してくれ…」
ヒショウの言うのは、ルナティスが羽織っているコートの事だろう。
彼はコートを受け取ると、腕を通さずに羽織って立ち上がる。
「おい、どこ行くんだよ」
「…川。体洗いに…」
「あ…分かった。」
木の幹に手を掛けて、ヒショウは立ち上がった。…つもりだった。
「…………?」
気がつけば、自分は座っていた。
もう一度立ち上がる。
「っ!?」
足に力を入れた瞬間、さっきルナティスに荒らされたところが熱くなった。
いや、もっと奥まで熱い。
「な…?」
体がどんどん火照ってくる。ただ背筋だけが寒い。
体が疼く。
「ヒ、ショウ…?どうした?」
しゃがみ込んだまま、また体を抱え込んだ彼を心配して、ルナティスが声をかけてくる。
彼に肩を掴まれた。
それだけで、顔が火照って……このまま押し倒されてしまいたいと思う。
そんなふうに思っている自分の異常さに、唖然とした。

「…ルナティス…何を、した?」
普通に話すだけでも、変な声が出てしまいそうで…なんとか平静を装うとしたが、妙に息が荒い…。
「何って?…おい、大丈夫か」
顔をのぞき込もうとしたら、ヒショウが肩を掴む腕を振り払った。
「わ、からない…、なんか…」
彼は体の疼きが抑えられなくて、声が上ずるのも抑えられなくなってしまった。
それを見たルナティスは、もしや…と思い、さっき使った潤滑剤を調べた。
「ひょっとして…媚薬入りとか……?」
それにそれらしい記載なんかはなかったが、ヒショウの様子を見る限り、そうに違いないと思った。
「……貴様ぁ〜…」
普段より数段低い声で唸り、ヒショウは近くにあったカタールに手を伸ばす。
「ごめっ、本当にわざとじゃないんだって!!」
「ごめんで済めば警察は要らない…」
そのカタールを装備して斬りかかるだけの力がないらしく、それを掴んでルナティスに投げる。
が、それは彼に届く前に落下した。
もう完全に体がうまく動かないらしい。

「ルナ…これ、を…なんとかしろ…」
彼は完全にへたり込んで、体を丸めた。
コートから白い足がスラリと伸びて、いかにも官能的な光景だ。
ルナティスはそれから目を背ける。
「っつっても…」
「ルナ…!」
本当にせっぱ詰まっているらしく、彼は苛立たしげに声を張り上げた。

ルナティスは息をのみ、倒れ込んでいるヒショウを抱き上げ、座った自分の足の間に挟み込み、抱きしめる。
「力、抜いておけよ」
ヒショウの体を仰向けにして、自分の肩に、彼の頭を載せてやった。訳も分からず、ヒショウはルナティスの耳元で荒い息を抑えようとしている。
ルナティスはさっき潤滑剤を塗り込んだそこに、再度指を差し込んだ。
「っあ…!!な、何して…!!」
ヒショウが慌てて抵抗しようとするのを片手で抱きすくめて押さえる。
「塗ったのを掻きだしてるんだ。これしか方法、無いだろ…」
そういわれれば納得してしまうヒショウだったが、これはどうしても絶えられなかった。
しみこんだローションを掻き出そうと、中でルナティスの指が内壁を擦り、外に出てはまた入ってくる。
本番をやるための準備の愛撫となんら変わりない。だから、ヒショウはこれで終わると思えなくて、泣きたくなってきた。

「ッは…ぁ、や…!ルナ、ティス!そこっ…」
「ん?ここ?…さっきのところ?」
「やめっ…!!」
やめろ、と言う前にルナティスが彼の感じる一点を指で擦り、ヒショウは声にならない悲鳴を上げて仰け反った。それでルナティスの指が締め付けられる。
ルナティスは、もし今入れていたのが指ではなくて自分のモノだったら、どれだけヨかっただろうか、と思い描いて、熱が集まるのを感じた。
正直、ヒショウにこんなことをして、こんな姿をみて、“ただ薬を掻き出すだけ”で済ませられるはずがなかった。
ルナティスはわざとヒショウが挫折するのを誘い、待っていた。
もう、自分のモノはヒショウの体を味わうことなく治まるはずがない。

彼の汗ばむ首筋に唇を寄せて、赤いあざを残す。それをまた舌でなぞる。
ルナティスのそんな行為で、もう自分は解放されないと、頭の隅で悟った。けれど、そんなことより…
この疼きをなんとかしてほしい。
体の中で暴れるものを、解放させて欲しい。

背中に、固い物が当たっていた。ルナティスが欲情している証拠。
やっぱりか、とか呆れる余裕もない。
ただ、彼に抱かれないと、この体はもう治まらないから
「ル、ナ……た、のむ…ッ」
彼は首筋に頭を押しつけながら、震える声で懇願してきた。
「なに…?」
「…い、れて…くれ」
「え……って……?」
「分かる、だろ…!」
苦しそうな声で言う。
けれど、指でやっていても、まだそんなにほぐれていないのが分かる。
「アスカ…でも…」
「っ、早く…!」
彼は上擦った声で強く言った。
この熱は収まらない、原因が塗り込められたそこが、満たされない限り…。
「わかった…」
ルナティスはヒショウの体を持ち上げ、地に敷いた毛布の上で彼を組み敷いた。

この熱さから早く解放されたくて、何も言わず従い、ただルナティスに早く、とせがんだ。
だがルナティスに膝を胸当たりまで持ち上げられて、その体勢でヒショウは自分のすべてを彼に晒す形となることに気が付いてしまった。
隠したい気持ちを抑えて、その体勢をなんとか保ちながら、ルナティスの侵入を待つ。
そしてルナティスはヒショウに誘われるままに、そこに自分のモノを当てがった。
まだそこは解れきっていないから、いくらローションで入れられそうでも、痛いんじゃないかと思った。
けれど、ヒショウは苦しそうで……可愛くて……

「んッ…ッアァァアアアア!!!!」
「ッ…ぁ!」
いきおい余って、一気に奥まで入れてしまった。
そこは予想以上に柔らかくて、入れきった瞬間に固くルナティスを締め付けてきた。
「ッ、ヒショウごめん!痛かっただろ?」
ルナティスの腕に血がにじむほど爪を立てるヒショウの手をとり、ぎゅと握ってやった。
「…っそ、…この、馬鹿…後で、殺すからな…!」
「…………(汗」

痛い。
痛くてたまらない。
けれど頭がまっしろになりそうな快感。
痛みは入れられたそこだけだが、快感は脳天から足の先まで電撃のように走った。もう、おかしくなってしまいそう…
それなのに……どうして…

「ルナ…だ、ダメ…」
「何が…?」
ヒショウは目尻から赤い頬に涙を伝わらせた。
「っか、しい…お、俺……」
「ヒショウ……」
これ以上やられたら壊れてしまう。
なのに、まだうずく。熱は冷めない。物足りない。
「ッ…ごいて…くれっ」
「…え?」
「…動いて、っ…もっと…奥…」
「ヒショウ…」
言われたとおりにしたら、ヒショウがおかしくなる気がした。
自分はそうしたいけど、あとで後悔しそうで…
ヒショウが、壊れるかも知れない…けど、自分はもっと彼を壊してしまいたい。
もっと彼をめちゃくちゃにして、しまいたい……………
………気がつけばもう、全く迷っていなかった。(爆

 

多分、誰からこっそりのぞき見をしていたら…
セックスしてる恋人同士とか
レイプしてる男と、されてる男とか
そんな風な理解はされなくて
絶対に“殺人現場”だと思われただろう。
ヒショウは軽く突き上げる度にナイフで臓器をえぐられたような断末魔の悲鳴をあげた。
正直、それのせいでルナティスも楽しむどころではない。今にもヒショウが逝ってしまいようでひやひやしていた。
けれど彼が躊躇いがちに何度か奥を軽く突いただけで、ヒショウは体内で育っていた熱を、ルナティスの腹辺りに放った。

「んっ、アス、カ…先にイッちゃった…?俺も…」
俺もイキたいからもうすこし我慢してくれ、と言おうと、彼の髪を撫でたとき。
「アスカ…?」
彼は返事をしない。動かず、毛布の上に力なく体を放り出しているだけだ。
もしかしなくとも…気絶している。
「…勘弁してくれよ…」
まだ彼と繋がったまま、彼に緩く締め付けられたまま、肩をがっくり落とした。

それでも、そっと中で動かしたら、ヒショウの濡れた唇が苦しげに開いて、震えた。
「……………。」
ルナティスはその様子にしばらく見入って、内心鼻血でも吹いてしまうほど興奮した。
うなされているかのように、不規則な呼吸と時々漏れる声に、ルナティスの方が頭がおかしくなりそうだった。
今度は少し強く、最奥を突き上げた。
「ッあ!!あぁ…!」
ヒショウの体が痙攣して、彼は小さく悲鳴を上げた。
「あ…?」
ヒショウの瞳がうっすらと開いた。目を覚ましたようだが、まだ頭の方は冷めていないようだ。視点が定まっていない。
「アスカ…」
名前を呼んだら、彼はぼんやりしたままこちらをみた。
「…ル」
名前を言い切る前に、軽くキスして続きを鬱いだ。
こんなヒショウに名前を呼ばれたら、それこそ理性がふっとびそうだったから。

「…アスカ、俺もイキたいから、もう少し我慢してくれる…?」
ヒショウは訳も分からず頷いた。
それからまた、そっと中で動かしてやったら、彼は唇を噛んで、ルナティスの肩に爪を立てた。
「痛いか…?」
ルナティスが優しく問掛けると、ヒショウは首を横に振った。
「ん、気持ちいい…」
「…………。」
彼から返ってきた意外な答えに、ルナティスは唖然とした。
まだ、気絶してから意識がハッキリしていないのだろうか。
にしても…
「(やべぇ…可愛すぎ!)」
思わずヒショウに深く、口付けた。舌を少し強引に指し混んで、彼の口内の隅から隅、奥までたっぷりと味わう。
自分でやっておきながら、音や暖かい口内の感覚に顔が熱ってきた。

「ッ、ん…」
ヒショウが甘えるかの様に、または誘うかのように、ルナティスの首に手を回して、唇を離しても体を離させまいと抱き締めた。
「(だから可愛すぎだっておい!)」
壁があったら叩きたい気分だ。
「アスカ…そんな可愛いと、僕、暴走するよ…?」
「…ん、…ぅん…」
何が「うん」なのかよくわからないが、それでルナティスにいたずら心が芽生えた。
ヒショウの体を抱き上げ、座ったルナティスの上に股がって座る体勢に持ってきた。
「ッア!!や、ぁ…ッ、お、落ちるっ…」
足に力が入らず、踏ん張れないせいでヒショウ自信の体重が助けになり、ルナティスがもっと奥まで入ってきてしまう。
ヒショウは彼の肩にしがみついて、自分の体重を支えた。
「あぁッ…ん、ルナティ、ス…!やめっ、動かすな…」
普通にしているだけでルナティスが最奥の一番イイとこを貫いていて、頭がまっしろになりそうな快感がはしる。
それでもルナティスの猛りは、ヒショウをもっと奥まで食らいつくそうとする。中に、素直に受け入れるのが怖かった。
もっと突き上げられたりしたら、もう、自分がどうなってしまうかわからない。

けれど、ルナティスは言われた通り動かさなかった。
ヒショウの呼吸や意識が整っても、彼の首筋にただ顔を埋めていた。
安心はやがて不満に変わった。
「…ルナ、ティス?」
彼はヒショウの呼び掛けに応えない。

「…このままじゃイケないだろ?」
まだ首筋に顔を埋めたままそんなことを言ってよこした。
たしかにその通りなのだが
「ヒショウが動いて?」
「…は!?」
ヒショウは言われたことをすぐに理解し、顔を真っ赤にした。恥ずかしさと怒りで。
「っまえ…ふざけ…」
「僕にやってもらわないとできないんだ…?」
彼はいたずらっぽい笑みを浮かべて、ほとんど密着しているヒショウの背、脇、腰と撫でた。
ヒショウは眉根を寄せて、ルナティスの手をはらった。
「ッ、分かった、よ…」
ヒショウはルナティスの肩に手を置いて、そっと体を持ち上げ、彼の突き立つ杭に体を落とした。
だが、中でそれが動いた感覚に体が震え、力が入らなくなって、深く沈みすぎた。
ルナティスのそれが奥に突き刺さる。
「ッヤアア!!!ぁあ…っ!や、いや、だ…!…ぁ、んっ、」
彼はルナティスの肩に抱きついて体を支えた。
それから、しばらく動かなかった。動けなかった。

「ヒショウ、ほら、支えてやるから…」
ルナティスはヒショウの胸回りを腕でしっかり抱き止める。
「腰、落として…」
言われたとおりヒショウは肩にしがみつきながら、腰を浮き沈みさせた。
「ん、ッあ…!ハッ、ふ…、ぅ、あ!」
「…そう、小さくでいいよ。…気持ちいい?」
もうさっきみたいにぼーっとしてはいないらしく、彼は唇を噛んでうつ向いた。
さっきみたいに可愛いのも良いけど、いつものプライドが高いというか、意地っぱりなのがいいな、とか思ったルナティスだ。その方が、いじめ甲斐がある。
羞恥心に顔を赤らめ、それでも薬のせいもあって求めずにはいられず、自分の上で腰を動かす彼は…犯罪的にそそった。
「ほら、もっと奥まで入れないと、イケないよ…?」
わざとかまかけて、少しだけヒショウの体を落とす。
「ッん!ぁ、ッ!あ、や、やぁあ!!!」
ヒショウが奥まで入れようと腰を深く落としてくれたが、また頭まっしろになって、体か快楽に震え、またルナティスの肩にしがみついてしまった。
やっぱり、ヒショウにやらせると加減してしまって、2人とも満足できなかった。

「アスカ、手、ちょっと離して…?」
「…ぁ」
ルナティスだけ仰向けに倒れ、その上にヒショウがしゃがみこむ体勢をとる。
また支えを失ったヒショウは、どうしたらいいのか分からず、手を彼の胸板に置いて唇を噛んだ。
「痛かったら言って。」
「待てッ、嫌、だ…!」
「どうして…?じゃあ何がいいんだ…?」
ヒショウは言葉に詰まり、うつ向いてしまう。
なんだか精神的にも肉体的にも疲れている彼を慰めるように、胸にある彼の手を撫でてやった。
「すぐに気持ちよくなるよ…」
ヒショウの腰を掴んで、始めはゆっくり突き上げてやった。
「ん、あぁああー!!!!嫌、だ!!」
彼はルナティスの胸板に爪を立てた。
「痛い…?」
優しく問掛けながらも突き上げはやめない。
「っかしく…なる…や、ぁ!!やめろっ!!」
「無理、だよ…」
涙を流してやめろというヒショウの姿があまりにも綺麗で、官能的。
上ずった声が耳の毒。おかしくなりそうなのは、ヒショウよりもルナティスだった。
ヒショウの中を、だんだん容赦なく荒らすようになる。
温かくて、ほどよく解れてきたそこは、彼のものを締め付けながらも受け入れて、妖しく誘う。

「ッァアア!!!やあ!!ッ、く、あ!!ッや!んぅ!!」
内壁が擦れる度に、最奥を刺激される度に、全身に電気が走って、体の芯が熱く、痛くなる。
完全に立ち上がって、今にも熱を吐き出してしまいそうなそこに、ルナティスが触れてきた。
「やっ、やめ!!触るなッ!!!」
彼の、そこに触れてくる手を振り払おうとするが、もう自分の体が思うように動かせない。
体が在るのかも分からない。
意識を保つのが、できなくなる。
ただ、ぼんやりと
「ッア!!っ、い、イク…!」
自分の限界を感じた。
それを聞いて、ルナティスは張りつめたヒショウのものへの愛撫はやめず、ただ突き上げるのをやめた。
「…ぁ、あ…?」
「いくよ…」
彼の言葉の意味を理解しないまま、たださっきまでよりも強く、激しく突き上げられた。
全身に壊れてしまいそうな快楽の電気が走って、熱が、抑えきれなくて、ルナティスの腹辺りに放ってしまった。
そのまま二回目の突き上げで、熱を放ちながら、意識が奪われた。
固くなった体の中に、ルナティスの熱が放たれたのを感じたのが最後。
後は何も分からなくなって、ヒショウは落ちた。

 

 

「やほーぃ!どうしたお二人さーん」
お日様がもう傾きかけてから、やっとパーティーの元に帰ってきた二人は、間をたっぷり三メートルは保っていた。
明らかに仲直りした様子ではなかったので、みんなはそろって溜め息を付いた。
だが一人だけマナは楽しそうだ。
「ルナー、どうだったんだよ、そこんとこw」
「どうだったじゃない!!マナのせいでヒショウは酷い目みるしおかしくなっちゃうしめっちゃ色っぽくなっちゃうしすっげぇ可愛くなっちゃうし超キモチ良はぅあ!!!!」
ヒショウのカタール(毒付き)がルナティスにサクサク刺さった。
華の後輩達の悲鳴をバックに、彼はスローモーションで血しぶきを上げながら倒れた。
「南無」
自分でやっておきながら、ルナティスの頭の上で手を合わせるヒショウだ。
「し、死ぬ…プリーストを呼んでくれ〜…(涙」
「プリーストはお前だろが」
どうやらギリギリ生きてるらしい彼の頭をマナが木の棒で突くと、セイヤが慌ててそれをやめさせてヒールをかけ始める。

「…大丈夫か?」
レイヴァが似合わず心配そうな顔をして声をかけてくれた。
もう、色恋沙汰や肉欲とは無縁のレイヴァの傍だけが安息の場かもしれない。
「……いろんな意味で大丈夫じゃないな。」
深いため息をつきながら、ふらふらと木の幹に歩み寄って腰を下ろした。
その様子を見て、レイヴァがまた心配そうに声をかけてきた。
「…目眩でもするのか?」
「なんで」
「足がふらついていた」
あー、それは……。
なんとも回答できずに口ごもったヒショウだった。が、マナがニヤニヤしながらすり寄ってきてレイヴァの耳元でこそこそ話す。
「おおかたルナティスに一晩中突っ込まれて足腰が痛ぁああああああ!!!!!」
セリフの途中でその辺に転がっていたサイズもなかなかの石を腰に剛速球で投げつけられて、マナは唸りながら倒れた。
耳元で思いっきり叫ばれたレイヴァの方も、耳を押さえてしゃがみ込む。

「ん…?てことは…ヒショウ、まさか…」
いきなりレイヴァが起きあがったかと思うと、そんなこと呟いて悩みこんだ。
何を考えているのかとヒショウはやや気になって彼の方をじっと見ていた。
「……ヒショウが女役…?」
「……………………は?」
ヒショウはなんのことを言っているのかよくわからなくて、眉根を寄せる。
が、そんな反応を起こした後で、レイヴァの言っていることの意味を理解して、赤くなった。
「……レイヴァ、言うな…………」
「すまん。てっきりルナティスが……かと…。でもまぁ、考えてみればそうか…」
そこで考えるな、頼むから。
ヒショウは疲れ切って、深く、深くため息をついた。

「でもな、ヒショウ」
涙でも滲んでいそうな切ない瞳で、レイヴァの方を見返す。
「いや、もうその、変なことではない…から、そんな顔をするな。」
「…じゃあ、なんだ」
「…昨日のルナティスだが、本当にお前のことを心配していた。」
「……。」
「だから、俺はその、同性愛とかに免疫がないからどうとも言えないんだが…」
「………。(同性愛とか言わないで欲しい…間違ってはいないが…)」
「ルナティスに、少しだけ応えてやってもいいと思う。あいつは、本気だから。」
まるで鉄仮面、と言われるレイヴァが、どこか照れくさそうな顔をしていた。
周りからみたらいつもと変わらないだろうが、ヒショウには見えた。

「……そうだな。…少しだけ。」
思わず、そんな答えを返してしまった。
けれど、ルナティスのその“本気”と“必死”はヒショウ自信わかっていたことだ。
なのに、他人にそう言われると…相手が男であることの後ろめたさや、迷いが少し晴れてしまう。

 

ああ、きっとルナティスもこうして、マナに受け入れて貰えて…
俺に告白できたんだろうな…。

マナも、レイヴァも、否定しないでいてくれるから
ちゃんと本気になれるかもしれない。

 

「ヒショウ〜!!聞いて聞いて!!!昨日の潤滑剤、闇市にだけど売ってるんだってー!!!!」
大声でそんなことを叫びながらルナティスが、マナ達の方からこっちへ走り寄ってくる。
「昨日の、潤滑、剤……?」
聞き慣れ無い単語に、眉をしかめて考え込みながらも
どこかいかがわしい空気を感じて、レイヴァはヒショウを見つめた。

ルナティスがヒショウの間合いに入るや否や、容赦なく切り捨てた。