「ごめんなさい。私には恋人がいるんです。」
少し感づいてはいた、後輩のアコライトの好意。
私はそれをやんわりと突き放した。
少女の顔は真っ赤なままだけど、目にどんどん涙が浮かんできた。
ああ、泣かないで下さい。
人の涙は苦手なんです。
「ありがとう。君の気持ちに応えることはできないけれど、すごくうれしい。」
私はにっこり微笑んだ。
彼女が一緒に微笑んでくれるといいな、と思いながら、にっこりと。
けれど、彼女はうつむいたまま、お辞儀をして、その場を走り去ってしまった。
…すごくうれしい。
そんなことを言ったけれど
本当はちっともうれしくなんてない。
私が欲しいのは、あの人だけ。
あの人の心だけ。
あの人の体だけ。
あの人の魂だけ。
「ただいま。」
小さな紙袋を抱えて、明かりの灯っていない家に入った。
私が入ったとたんに、家の奥で物音がしだした。
そして、獣が唸るような声がしている。
あの愛しい人の声。
あの人の存在を感じるたびに、私の心は満たされて
けれど、新しい欲求が生まれる。
私は奥の部屋へ足早に向かう。
「ただいま。」
もう一度、今度は彼の前で言う。
綺麗な、銀の髪のアサシン。
細身で、肌は白くて、綺麗な声をしていて
美しくて官能的な、私の天使。
「…ッ、アぁ…ヴゥ…」
彼の呻き声を聞きながら、私はその部屋に明かりを灯して回る。
薄暗い明かりの中に、彼の姿が浮かんだ。
目隠し、手錠、足枷。
それらで縛られ、ベッドの上で丸まって、私を待っている。
アサシン装束はほとんど肌蹴ていて、胸や腹はむき出しで、べルトの付けられていないズボンは腰に引っかかっているだけ。
あられもない姿で、赤ん坊のように私を求めて声を上げている。
「いい子にしてましたか?」
彼の座っているベッドに腰かけて、彼の髪に指を差し込んで、梳いた。
指の間を流れる髪はキラキラと光って、綺麗。
首元で切られた髪は日に日に長くなってっている。
いつか私くらいに伸びたら、もっと綺麗だ。
彼が肩口に顔を埋めてきた。
「寂しかったんですね。大丈夫。明日はずっといますよ。」
私はそう囁きながら、また彼の頭を撫でてやった。
「喉、渇いているでしょう?お水を飲んでくれないから、今日はジュースを買ってきたんです。」
「ッアァ!!うぁ、ヴ!!」
私が差し出したリンゴジュースを、彼は飲まずに投げ飛ばしてしまった。
ジュースのビンは壁に叩きつけられて割れてしまった。
「ああ、ダメじゃないですか…いい子にしなきゃ…」
「ンァア!…アゥ、ハッ…」
彼は、欲しいのは別のものだ、と言いたげに、手錠で縛られた腕を私の首に巻きつけてきた。
彼は、昔はよく笑っていた。
私たちは一緒のギルドにいて、彼の方がずっと強くて、光り輝いていて…
アサシンは、人を殺すことを生業とする者もいるけれど
彼は普通の冒険者で、潔癖だった。
人を生かすために、戦っていた。
あまり話すことは無かったけど、私はずっと彼を見ていた。
ずっと、憧れていて、ずっと好きだった。
けれど、私は臆病で、彼に気持ちを伝えることができないまま月日は流れて…
ある日、ギルドは壊滅してしまった。
ダンジョンで油断していて、みんな死んでしまった。
私と彼だけ生き残った。
真っ暗闇の中、彼は必死にみんなの体をかき集めて、プリーストに蘇生して貰おうとしたけれど、4人分の死体を持つことはできないし、みんなほとんどバラバラにされてしまっていたから、それはできなかった。
それでも、体の一部を抱えたまま、彼は私とダンジョンを出た。
皆が生き返るはずもない。
その体の一部は、原型に戻ることなく腐り果てて土に還っただけ。
彼はずっと泣いていた。
私も悲しかったけれど、彼が生きていたから、それがとてもうれしくて、そんなに悲しくは無かった。
壊れたように泣いて、髪や体をかきむしり、
ギルメンの形見の剣で腕や足を突き刺していた彼を私はずっと止めながら
もう終わったんだ、と囁き、頭を撫でながら
抱いた。
ずっと怯えていて、泣いていて、苦しんでいた彼を、私が守らなければと思った。
だから、彼をここでずっと守っている。
もう傷つかないように。
何も見なくてすむように、目隠しをして
この家から出なくて済むように手錠と足枷をして
誰にも汚されることなく、私だけのもの。
彼はずっとここで私に守られて、美しく生きていく。
彼の体には多くのピアスが付けられている。
右耳に小さなピアスが三つとリングが二つ。
左耳にも小さなピアスは二つ、十字架のピアスが一つ。
唇の端にリングが二つ。
あと首の後ろに二つ、上下並んでいて、
右の乳首にもリングが一つ。
彼に似合うだろうと、耳に開けてやってから、彼はずっとこれを強請る。
私も彼にピアスを刻んでいくのは好き。
何日かに一度、彼の体にピアスを刺して、彼はどんどん綺麗になっていく。
「ああ、貴方はいつでも、本当に綺麗だ。…そうだ、今日は、どこに入れようか?」
目前にある彼の顔を、頬を指でなぞり、ずっと苦しげに息をしている唇をふさいで、舌を差し込んだ。
少し乾いていた彼の口内は、私の舌ですぐに湿り、私たちの唇は濡れて、ピチャピチャと音を立てる。
彼の舌を私のもので絡め取って、私たちは存分に交わった。
「ッハ、ァ…はっ、はぁ…ア…」
唇を離すと、彼はさらに苦しそうに息をしていた。
けれど、頬は赤く染まり、私たちの体は火照っていた。
「ああ、そうだ…舌にしましょうか。」
私はうっとりとした表情で、彼の頬を手のひらで撫でた。
彼はわかったというように、そっと舌を出してきた。
紙袋を漁り、底に落ちていた銀色の小さなリングのピアスを取り出した。
薄くて、赤い、彼の舌を指でそっとつまんだ。
暖かくて、湿っている。
ここに私の手でピアスが埋め込まれるのを思い、胸が温かくなる感じがした。
また、私の手で彼を綺麗にする。
舌先の端を、私は自分の舌でツッとなぞり、そこにもう何度も使った針を宛がう。
彼の手が、シーツを握り締めている。
グッと針を差込み、彼の舌に通した。
瞬間、彼が上ずった声を上げて、ビクンと痙攣した。
知り合いに聞いたけれど、口内、舌、性器、のように粘膜で守られているような場所にピアスをつけるのは激痛を伴うらしい。
けれど、そのほうがいい。
そのほうが彼は妖しく反応する。
「い…ア…ぅ、ん…」
彼は少しだけ震えて、シーツをぎゅっと握り締めていた。
その声が響き、私は彼の体内に自分の猛るモノを差し込んだときのような快感に襲われた。
針を抜くと、彼の舌からは予想以上に血があふれ出る。
それをふさぐように、ピアスをはめ込んだ。
「んァ…グ、アゥ…」
まだ痛みに舌をしまえずにいる彼を、ベッドに押し倒した。
彼の足の間に体を挟みこんで、ピアスのついた乳首を舌先で転がした。
おとといつけたばかりのそのピアスは、既に彼の体の一部と化していて、少し強く引っ張っても彼に痛みはなく、甘い声を漏らした。
ピアスのついていないほうは指で引っかくように愛撫してやる。
「あぅ、ンン…っく、アァ…」
彼の甘い声。
今までの唸るような声とは違う。
待ち望んだものを貰えた様な声だった。
「ああ、綺麗…もっとないて…?」
舌で彼の白い肌を舐めて、緩んだズボンの中で憤り始めていた彼のモノに手を伸ばした。
「ア、ぁ…ッカ、はぁっ…アァ…」
強く扱いてやるたびに、彼は苦しげに息を詰まらせて、
逃げ場を探すように、唇を噛んで、シーツを握り締めて、体を退こうとシーツを足で蹴る。
気持ちよくて、もっとして欲しいくせに、逃げるしぐさをする。
それが逆に相手の男を欲情させるということを知っているかのように。
「そうだ、ハイスピードポーション、切れてたから新しく買ってきたよ…」
すっかり忘れていたのを急に思い出し、私はグシャグシャになった紙袋の底から、それを2瓶取り出した。
感覚を鋭くさせてくれるそれは、覚醒剤とも言われている。
快楽も、痛みも、激しく感じさせてくれるそれは、彼の必需品とも言えた。
彼はそれを強請る様にまた唸り出す。
そんな姿がかわいくて、私はその1瓶の蓋をあけ、指先に垂らして彼の唇につけた。
「ん、ん!!アァ、ヴぅ…!」
彼はすぐに私の指にしゃぶりついてきたけれど、それほど量が無いと知ると、苛立たしげに声を上げた。
「ごめんごめん、…ほら」
今度は三本の指にたっぷりすくって、彼のやわらかい口内に注ぎいれた。
まとわりつく彼の舌がやわらかくて、暖かくて、気持ちいい。
「じゃあ、今度は下だね。」
彼の腰からズボンを引き摺り下ろして、全部脱がせた。
白い足を露わにして、彼は惜しげもなく足を広げて、私にそこを晒す。
さっき彼に半分ほど飲ませて、まだ残っている液体を
指先にまた垂らし、私だけに侵入を許した彼の蕾みに塗りこむ。
「アァ、ヴ…ぅぅ、ん…ンッ、んッ…」
薬で湿った指が一本入っただけで、彼は怖気づいて足を閉じてしまう。
けれど私はそれを開かせる。体と片手で、彼の足を押さえつけた。
たっぷり薬をすくった指を2本。
そんなに馴らさなくても、彼は私の指2本を軽く飲み込んだ。
暖かく濡れて、ぐちゅぐちゅと音を立てる。
馴らすのもあったが、それ以上に私が楽しむためと、彼を恥ずかしがらせるために、指を開いたり閉じたりして、そこをもっと音を立たせた。
彼は手錠で繋がれた手で口元を覆い、声を抑えていた。
私はあまり馴らさないで、彼に侵入する。
あまり馴らさないほうが、彼は声を上げる。
痛みと苦しさに悶えていたから。その姿が見たくて…
けれど、最近では私を受け入れることに慣れてしまって
本当は指を入れずに、いきなり私のモノを突き刺しても、なんとか受け入れてしまう。
本当は、もっともがいて欲しいのに。
「そうだ。今度は初めに、もっと大きいものを入れればいいのかもしれませんね。」
「っう…ン?」
「…この瓶なんてどうだろう?」
彼の口と秘部、両方に流し込んで、空になったハイスピードポーションの瓶。
きっと、大きさは私のものよりもずっと大きい。
底も丸に近くて、調度いい感じだ。
私は瓶を手にとって、自分のモノを抜いた。
彼の膝を、激しく上下しているしている胸あたりまで持ち上げる。
片手で彼の片足だけしっかり押さえつけて、さっきまで私を受け入れていた濡れた彼のそこに、瓶の底を押し付けた。
ヒヤリとした感覚に、彼はビクリと体を竦ませた。
そして私が何をしようとしているのか悟ったらしい。
「アッ、ィ、あ…」
止めても無駄だとわかっているくせに。
本当は止めてほしいと思っていないくせに。
私は心の中で笑って、彼を見下ろしていた。
「ッ!!ァ、ぐぅッ!!ぎっ!アヴ!!アアァウ―−!!!」
喉から声を絞り出して、彼はシーツを掻き毟った。
赤い頬、食いしばられた歯。目隠しを外したら、紫の瞳が艶っぽく潤んでいるだろう。
瓶を力を込めて、ぐいぐい押し込めていく。
彼は掠れた悲鳴を上げる。
それを聞きながら、私は最高に幸せな心地で彼を見下ろしていた。
瓶を一度そっと引き抜くと、薬と彼の粘液でうっすら赤く色づいていた。
ああ、やっぱり裂けたか。
漠然とそんなことを考えただけで、また瓶を宛がい、押し込めた。
「んあァア、アぁあ!!!ゃアァあッ!!!」
元々傷んでいたシーツが、完全に音を立てて破れた。
ぐちゃぐちゃと掻き混ぜるように動かしながら、押し入れて、彼の体内に異物を埋める。
押し入れるのがキツくなったところで、それを抜き差し始める。
抜かれるたびに、透明な瓶の底には白っぽく濁った粘液と、赤い血液が混じってみえる。
そんな痛々しい光景にもかかわらず、彼の声はだんだんと高くなって、甘くなる。
「気持ちよくなってきた…?」
「ッア…ア、アァッ…うっ…んくっ…」
「…でも、まだだめですよ…」
硬かったのもかまわず、瓶をまた奥へ押し込める。
乱暴に、強引に、彼に突き刺す。
私が入ったときよりも、声を上げているのが悔しい。
けれど、今の彼はとても素敵だ。
うっとりしながら、完全に立ち上がって白い液を迸しらせている彼の性器に舌を這わせ、
大分奥まで収まってしまった瓶を、乱暴にかき回す。
彼は体を反らせて、悲鳴を上げた。
元々、彼の荒らされている所は女性器とは違い、広がるにも限界があるし、中は真っ直ぐではない。
それなのに、太くて硬い無機質の瓶が、異常に深く食い込んでいる。
快楽など関係なく激痛ばかりが走っているだろう。
そんなことを考えず、いや、分かっていながらプリーストはひたすら、アサシンの狂った声を求める。
微笑みながら、アサシンを掻き乱す。
それはもう、性行為でもなんでもなかった。
「イアァアアァア!!!ウアアア!!!ヤァ!!アヴ、アッぐぅ…!!!」
「何で…こんなにグチュグチュいうのかな…?そんなにこんな瓶がイイの?」
「アァ!!い、いあぁ…!!」
「ああ、前もこんなに立ってて…でも、まだですよ?私が入ってないから…」
そっと彼の髪を撫でる。
「ア…イィ、う…!!」
彼が、私の頬に手を伸ばしてきた。
「…こ…ぉ…し……」
潰れた喉で、何かを言おうとしている。
「…ね…がっ、ぃ……」
それは毎日囁かれる言葉。
―――コロシテ…
「………。」
粘液どころではなく、血でも濡れてしまった彼の秘所から瓶を引き抜く。
もう、完全に立ち上がっている私のものを、代わりに宛がった。
「愛しています。」
貴方の為に、貴方の欲しいものを与えてあげる。
私の熱をあげる。
この体を、貴方にあげる。
貴方が望むままに、私が貴方を乱してあげる。
白く美しい肌も、欲望にまみれた体内も
私がめちゃくちゃにして、食い尽くしてあげる。
―――コロシテ…
けれど、それだけは与えてあげられない。
「あっ、アァ…!!」
「んっ…イッて…」
彼が甲高い声を上げて、二人一緒に果てた。
…この人を、この手に抱いていられるなら
もう何もいらない。
君は俺以上に狂ってしまった。
俺は苦しんでばかりで
君が狂っていくことに、気づいてやれなかった。
すまない。
この体、君の好きに使えばいい。
痛めつけたければ痛めつければいい。
犯したいのならば犯せばいい。
ただ、最後には殺して欲しかった。
家族同然の中間達を、俺のミスでみんな死なせてしまったから
その罪が消えるほど、俺を苦しめて
最後には君の手で殺して欲しかったんだ。
ずっと君が好きだったから。
それなのに、君は殺してくれない。
制裁は与えてくれるのに
最後に殺してはくれなかった。
いくら待っても、殺してくれなかった。
俺を縛って、解放してくれないんだ。
これ以上待っていると、君が壊れていってしまう。
ずっと愛しく思っていた君が、壊れてしまう。
だから、もう終わりにしよう。
…最後に殺されるのは、愛しい君の手ではなくて、疲労と乾きと飢えによって。
これこそが、神様からの罰だったのかもしれない。
だからもう、君に殺されたかったなんて我侭は言わない。
「…ぁ…よ、な…ら……」
どうしてだろう。
私の元を離れようとする貴方を、必死に引き留めていたのに…
貴方は離れていってしまった。
この温かみの無い冷たい体だけ残して、私ではない、別の誰かのところへ…?
貴方だけが、私の支えだったのに。
なんてひどい裏切り。
残された私は、どうすればいいのか。
貴方の抜け殻を抱いて、途方に暮れている。
「そんなはずがない…貴方が、私を置いていくなんて…」
私を求めない体。
いつの間にかこんなにも、しなやかで、細くなった体。
冷たい唇にキスをする。
舌を入れれば、乾いた口内に、無機質なピアス。
いつものように、求めて返してくれない…
「そんなはずがない……」
貴方は少し眠っているだけ。
すぐに、帰ってくる。
だってここは、誰も立ち入ることのできない、私と貴方だけの世界だから。
貴方が私を求めてくれるその日まで
私は貴方を抱きしめて待っています。
外は珍しい大雨。
午前からずっと振り続けていて、聖堂には雨宿りをしている冒険者や、修道士や祭司たちでごった返していた。
「ねえ、この間の祭司様への告白はどうなったの?」
聞くのは年若いアーチャーで、聞かれるのはそれと同じくらいのアコライトの少女。
彼女は苦笑いした。
「…振られちゃいました。」
「ええ〜!!なんでー!!?」
「恋人がいるそうです…」
「そんなの奪っちゃいなさいよ〜!!!」
見た目からも気が強そうなアーチャーは、身を乗り出して怒鳴った。
その声は聖堂内で少々目立つ。
「いいんです…。だって、すごく…幸せそうに言っていたんです。」
いつでも優しく微笑む彼だけど
あの時だけ、その恋人のことを思い出しているらしい時だけ、どこか違った。
「きっと、すごく幸せ…なんですよ…。私なんかでは、ダメなんです。」
「ッ…ハァ〜…健気だねぇ…」
「私は、あの人に…一番好きな人と、ずっと一緒に、幸せに暮らして欲しいです、から…。」
暗い空。
冷たい雨。
雨音はまだ止まない。
この冷たい雨が上がって、暖かい朝がきたら
あなたのこの体も、温かくなっていますよね…?
*END*
(*゚Д゚)ただ瓶を突っ込ませたかっただけとかいうオチ(マテチネ)
アァンもう喘ぎ声よりも痛みにあげる悲鳴に萌えはじめてマス(爆)