〜忘れられた君の思い〜
来たのは久しぶりでも、そんなにこの森に惑わされることはなかった。
今は亡き、戦友…いや、短い間だったけど、仲間だった“彼”の住処。
“彼”カルネシアが消えてからもう5年経つか…。
ここへ来ることになったのは竜花が急にあの森に帰りたいと言い出したから。
彼女は今までずっとカルネシアのことに触れなかったので、みんなやたら慌ててこちらへ来る準備をした。
少し前まで、彼女は毎晩のように泣きはらしていたから…少しでも力になってやりたかった。あの小屋は5年経っても変わらない。埃一つ積もらずにいた。
小屋が見えた瞬間、竜花は走り出した。
私たちはそれを見ても追いかけず、歩いてついていく。
瑠美那「…急にカルビーが恋しくなったのかねぇ」
私の呟きは風に消えた。
この森独特の、涼しくも温かくもない風。なんとも寂しい風だ。
もう住む者はいない小屋は、その風にも物音一つたてずに頑丈に建っていた。飛成「ねぇ、なんで竜花がここに来たい、って言い出したか知ってる?」
竜花は何かを探しているらしく、小屋の中を引っかき回してから外へ飛び出した。
そうして静かになってから、飛成がポツリとそんな言葉を漏らした。
私と羅希は見合わせてから首を横に振った。
飛成は彼女の夫、アステリアとの間に子供ができないと知ってから、竜花を自分の娘のようにかわいがっている。竜花もずっと前から飛成を気に入っていたので、二人はずいぶん親密な仲になっていた。
飛成「気になることを思い出したんだって───」アステリアに甘えられない夜は、いつも竜花のベッドで寝ていた。
竜花は別に誰かの添い寝が欲しいわけでもなかったが、あったらあったで嬉しかったので、眠る前に飛成とたくさんのことを話した。
思い出話、おとぎ話、噂、みんなのことについて。
そして昨日の夜、また竜花と一緒に眠ろうとしたときだった。
飛成「薔薇?」
竜花「そう…カルネシアがね、大切そうに持ってたの。私には絶対に触らせてくれなかった。」
彼が大切そうに花を育てているところなんて想像できなかった。
薔薇のアクセサリーか何かだろうと思った。
飛成「…それって、薔薇の花?…あーっと、植物?」
竜花「うん。すごく綺麗だった。
ガラスみたいに光にあたるとキラキラ光ってね、葉っぱは真っ黒で花は真っ赤なの。
小物かなって思ったけど、すっごく小さかったのが少しづつ、少しづつおっきくなってたの。
だから多分、花。
私のそば以外にいるときは、いつも湖に浸かってるか、その薔薇のそばにいたの。」
飛成「…そっか、今はもう枯れちゃったかな?」
竜花「…分からないけど…」
彼女は飛成から視線をそらすと蹲って何か考え込んでいた。
飛成「もう一回見てみたい?」
竜花は少し考え込んでから頷いた。
竜花「あの花、枯れてるかもしれないけど、枯れててほしくない…」
何故か泣きそうに言う彼女を見て、飛成は母性本能もとい暴走がはじまった。
その夜に羅希や瑠美那をたたき起こし、明日カルネシアの住処へ帰ると言い出したのだった。羅希「薔薇、ねぇ…私がいた時は見たことないな。
少なくともカルネシアは花を愛でるような人じゃないから別のものだと思うけど。」
それは私も飛成も思っていた。
瑠美那「私達が初めて来たときはそんなもの無かったよな。」
羅希「ああ、多分…枯れたか、捨てたか、隠したか…」
瑠美那「少なくとも、小屋の中にはないよな。これだけ引っかき回したんだし…」
改めて小屋の中を見てため息をつく。
もともと何もなくて散らかりようのない部屋だったのに、家具がひっくり返って散らかっている。
羅希「…僕らも探しに行こうか。」
羅希の言葉に、私と飛成は頷く。
飛成「じゃあ、僕は竜花と一緒に探すね。」
瑠美那「了解」
闇雲に探し歩く前に、少し検討をつけて探そう………ということで、湖に来た。
とりあえず湖の周りを一周してみようということで、散歩気分で歩いている。
瑠美那「相変わらずこの森、変なのがいっぱいだよなー…なんか食える植物ある?」
私がそんなことつぶやいて振り返ると、羅希が両手いっぱいに奇妙な植物を抱えていた。
羅希「はい。」
その中から三つくらい渡された。
どれも不気味な色で不気味な形である。
羅希「あ、その青い実ね、吸盤をもぎ取らないと唇に吸い付くから気をつけてね。紫色のはゆっくり食べないと悲鳴あげるから気をつけてね。」
だからなんでここの植物は意味のない進化を遂げているのだ…。
でもこんな気味が悪い植物でも食べると美味いという謎。
一番気持ち悪い赤と緑の斑点の植物は柔らかくて甘くて一番美味い。
瑠美那「…この森は気持ち悪くてあんまり好きじゃないけど、ここの湖はすごく綺麗で気持ちいいから好きだな。」
羅希「…うん」
何がうんなのか分からないが、そう答えた彼が私の隣に並んだ。
隣で彼は微笑みながらこっちをじっと見ている。
瑠美那「………なんだよ」
羅希「……生きれてよかったなぁ、と思って。」
瑠美那「は?」
羅希「ここ、私も好きだから。一緒に来れて良かった。」
瑠美那「そうか。………でも他に言いたいことあるんじゃないのか?」
二人同時に足が止まった。
私の言葉に、羅希は何も反応を示さない。だから、もう一回言ってやった。
瑠美那「他にも、思ったこと、あるんじゃないのか?」
羅希「……やっぱわかる?」
瑠美那「ずいぶん一緒にいるしな。なんか言いたそうな顔してた。」
彼は観念したように肩をすくめた。
羅希「瑠美がすごく綺麗に見えて」
瑠美那「あ、それ思いつかなかった、うわキザいクサいあー寒い寒いー」
羅希「言わせておいて何その反応」
向かい合って小さく笑い合う。
今の彼女の微笑みは変わり、心から喜んでいるようで好きだった。
以前はいつもどこか投げやりに笑うだけだったから。瑠美那「うわ、な、羅希っ」
ぼんやりしていたら反射的に瑠美那に抱きつこうとしていたらしい。
彼女も反射的に逃げようとして一歩後退した。
が、
瑠美那「うわっ!!」
………逃げようとして木の根に足を取られたらしく、彼女は後ろに思いっきり倒れる。倒れかけてる瑠美那に手を伸ばそうとした瞬間、彼女の後ろに見えた赤い光に気を取られる。
そして彼女の手を掴み損ねた。
羅希「瑠美!瑠美!しっかりしろ!!」
倒れた拍子にどこかに頭をぶつけたらしく、彼女は意識がない。
抱え上げて懸命に声をかけるが反応はない。
息はあるし痛そうな様子もないので大丈夫だとは思うが…
湖の水で濡らしたハンカチをぶつけたところに当ててやっている。
羅希「あー、もう、ごめん、私が変なことしなければ…」
瑠美那「う゛っ…」
ぎゅっと強く抱きしめたら、彼女が少し唸った。
羅希「あ、瑠美…?」
腕の中で彼女がもぞもぞと動いて、こちらを見上げてきた。
羅希「よかったぁ、すまない、ちょっとボケッとしてて…」
瑠美那「あ…うん、いいよ…別に…」
ちょっと小さめの声で彼女はそう答える。
罵声を浴びせられることを覚悟していた羅希は少し唖然とする。
羅希「…あ、瑠美、大丈……………瑠美?」
頭を打ったせいだろうか。
彼女の様子が変だ。
顔が赤くて、目の焦点がいまいち合っていなくて、でもこちらを見ている目は潤んでいる。
可愛いとか色っぽいとか言ったら、確かにそうなんだが……なんだかこんなの瑠美那じゃない。
瑠美那「あ、私ったらなんかすごい汚れてるっ、はしたないっ」
そんなこと言って顔を手で覆う彼女は…やっぱり変だ。
羅希「あの、瑠美…大丈夫」
瑠美那「羅希の腕って気持ちいい」
変な様子でいきなりそんな変なこと言われて、思わず彼女から一歩離れた。
瑠美那「やだ、もー照れちゃって」
そう言って、うふ、とか笑う瑠美那の笑顔も…なんていうか…乙女だ。
羅希「あ、の…瑠美……頭うっておかしくなった?」
こっちをぼんやりと見て…見とれている彼女には羅希の言葉はあまり聞こえていない。
それで、どうしよう…とか考えていたら、彼女がいきなり詰め寄ってきた。
また一歩離れようとしたら、肩を痛いくらいの力でがしっと掴まれた。
羅希「ひぃっ!」
瑠美那「羅希…」
羅希「は、はい!?」
瑠美那「こんなこと言ったら、怒るかな…?」
羅希「な、何が…?」
そして彼女は頬を赤らめ、ささやいた。
でもそれとは対照的に、肩を掴む腕は「ぜってぇ放さねぇ…」って感じだ。飛成「竜花ー、何か見つかった?」
竜花「ないー!」
竜花の見える位置に立ちながら、手分けをして草むらを探していた。
湖に行ったら羅希と瑠美那が二人で探してくれていたから、別の場所を探し出した。
竜花「…………あれ?」
竜花の漏らした声は、森が静かだったので飛成にも聞こえた。
飛成「どうしたの〜?」
竜花「・・・・あれ」
彼女は振り返って前方を指さした。
そこには
羅希「…………!!!」
無言で、でも必死の形相で全力疾走する……ベーガンツに追いかけられている時のような羅希と
瑠美那「るぅ〜お〜しぃ〜、待ってよぉ〜!」
なんだか花でも飛びそうな可愛らしい声、走り方をして、でもその羅希にも劣らないスピードで彼を追いかける瑠美那だ。
飛成「……見なかったことにしよう。」
竜花「…うん」
彼女は竜花とうなずき合って、薔薇探しを再開した。
息絶え絶えになって、木の根に座り込んだ。
やっと瑠美那をまいて、一息がつける。
近くに生えていた実を取ってかじりつく。
羅希「それにしても、瑠美、なんであんなに速いし、体力あるんだ……」
───超愛してるっ!結婚して!!
そう言われて抱きつかれた。
瑠美那にそんなことを言われるのは嬉しいかぎり…のはずなのに…超恐かった。
てか寒気がした。
目の前にいたのは間違いなく瑠美那ではないと思った。
彼女がそんなことを言うはずがない。それにあんな可愛くないもん。
だからもう無我夢中で逃げ出したのだった。
それにしても、なんであんなことになったのか…。
少し冷静になって考えてみる。羅希「てか…アレのせい…?」
倒れかけた瑠美那の向こうに見えた…黒い葉の赤い薔薇。
竜花の話通り、確かにガラスの様だった。
いや、多分ガラスの様な物質だ。
彼女が倒れたとき、薔薇はなくなっていて…黒と赤の塵が地面に散らばっていた。ガラスの欠片のように。
ただ、それはあっという間に消えて無くなったが…。
多分、彼女がおかしくなったのはアレを壊してしまったせいだ。
でも
羅希「そもそもあの薔薇はなんだったんだ……?」
瑠美那「ああ、確かにアナタには薔薇が似合うわ…v」
羅希「ぎゃあああああああああ!!!!!!!!!」
いつの間にか隣に座っていた瑠美那に声をかけられ、心臓が口からでそうになるくらい驚いた。
叫びつつまた逃げる。が、
瑠美那「逃げちゃ嫌!」
羅希「うわっ!!」
腕を捕まれ、もの凄い力で引き戻された。
座っていた木の根にまた座らせられる。
でもまた懲りずに逃げようとしたら、彼女に馬乗りにされて動けなくなった。
瑠美那「もう照れちゃってー」
照れてない、照れてない。
むしろ怯えてます。
この瑠美超嫌だ。もうベーガンツ並みに嫌だ。
羅希「瑠美、頼む、から……どいてくれない………?」
この状態だと何をされるか………。
瑠美那「どいたら羅希逃げるでしょ」
そりゃもちろん。
瑠美那「だから嫌」
ひぃ。
羅希「あの、瑠美…」
瑠美那「うふ、汗に濡れたアナタも素敵v」…………すっげぇ鳥肌たった。
瑠美、目が怖い、目が怖い、なんかイッちゃってる……。
瑠美那「ねえ、なんで逃げるの?私のこと嫌い?」
うさ耳でも生えそうな、可愛らしい仕草で聞いてくる。
でも、羅希からしたら『可愛い』なんて全く思えなかった。
怖くて仕方がない。
羅希「…好きだけど……なんか今の瑠美はすっげぇ怖い……」
涙目で訴える。
瑠美那「そっか。よかったv」
げ。
今『好き』までしか聞いてなかったなこんにゃろー。
羅希「うわっ!!何してんだ!!」
羅希は、楽しげにシャツのボタンを外してくる瑠美那の手を掴んだ。
引きはがそうとするが………それ以上、外させないのが精一杯で、突き放すこともできない。
なんだこの怪力は。
瑠美那「え……何って………言わせないでよ恥ずかしい」
うわぁ、この瑠美、可愛いフリしてやることやるな……本物より激しくタチが悪い。
顔を赤らめる瑠美とは反対に、羅希は顔面蒼白だ。
瑠美那「だってもうこんな羅希みてるとたまんないんだもん」
羅希「私もこんな瑠美みてるとたまんないよ。マジ舌噛んで死にたくなるよ…。」
瑠美那「きゃv羅希ったらぁ」
羅希「あ、君、また都合良いところしか聞かなかったな!?うわっ!」
油断した隙に瑠美那の腕が首に巻き付いてくる。
とっさに引きはがそうと試みるが、何故こんなにもこの瑠美那は怪力なのか…。
瑠美那「羅、もう放さないっv」
もう半分泣きながら、羅希は貞操の危機を感じた。
そして、もう
この緊張感に耐えるには限界だった。羅希「ブッ………
魔王血印封界 おおお!!!!!!!!!」
龍黄「…ったく、何をしてるんだ君は」
召還されたと思って来てみれば、その攻撃対象は自分の妹だった…ということで、困惑しながらも怒り気味の龍黄だった。
そんな態度をとっておきながら、召還されたし仕事だから、と攻撃した龍黄も龍黄なのだが。
そして攻撃された瑠美那は…外傷は無いものの、のびている。
羅希「すいません…つい…………」
そう言って小さくなる羅希。
龍黄も、彼が自分を召還したのは何かワケがあるだろう、と思っているので、そんなにせめてはいない。
龍黄「……で、何があったの?」
羅希「………」
羅希は、これまでのいきさつを話した。
龍黄「そぉ。僕にはさっぱりだね。カルネシア本人に聞かないと」
龍黄ははっきり言ってどうでもよさそうにそう言った。
別に、龍黄に事の解決を期待したわけではなかったが、ちょっとがっかりしてため息をつく。
龍黄「ああ、でも」
龍黄が相変わらずぼんやりした様子で言う。
龍黄「ヴァレスティなら何か知ってるんじゃないか?カルネシアさんとは最も交流が深いと思うし。」
ぼんやりしてても、言ってることはナイス。
彼女は相変わらず暇人らしく、龍黄から連絡があったらすぐに飛んできてくれた。
だが、来た彼女は顔色が悪い。
すぐに飛んできた理由は、暇だったからというだけではなかったようだ。羅希「…と、いう訳なんですが、ヴァレスティ様…何か知りませんか?」
ヴァレスティ「…………あー」
羅希「…………」
ヴァレスティ「…………」
羅希「……ヴァレスティ様…なにか知っていますね?」
ヴァレスティ「…………んー」
羅希「…………」
ヴァレスティ「…………」
羅希「てゆーか、今回の件は、ヴァレスティ様が原因…とか?」
ヴァレスティ「………やっぱり分かる?」羅希は小さくタメ息をついた。
羅希「…あれって、何かを封印していたんですよね…?一体何を入れていたんですか」
羅希の質問に、ヴァレスティは閉口した。が、彼が話を変える前に話し出した。ヴァレスティ「私が、錬金術に詳しいことは知っているな」
羅希「ええ。カルネシアに吹き込んだ張本人ですしね」
ヴァレスティ「……あの花には少し細工がしてあってな」
語り出す彼女はどこか楽しそうだ。
ヴァレスティ「壊れると、カルネシアが私に惚れるはずだったのだ。」一同は言葉を失った。
羅希「えっと…つまり………?」
訳のわからないことを言われて、整理ができていない羅希の変わりに
この手の話が大好きな飛成が乗り出してきた。
飛成「惚れ薬、みたいな感じですか?」
ヴァレスティ「まぁ、仕組みはそうだが、特別で“惚れる人”“惚れられる人”が決まっているのだ。誰があの花を壊しても、効果はカルネシアに飛んでいくはず。だったのだが…」
当人はもうどこにもいない。
羅希の中ではもう謎は解けた。
羅希「…もういないから、壊した瑠美那に効果が出た、ってことですか?」
ヴァレスティ「そんなところだな。」
羅希「てか、カルネシアがあれを大事に持っていた、っていうのは…」
ヴァレスティ「いや、じつはカルネシアも錬金術に通じたせいで、あの花の効力を知られてしまってな…。だから、効果がでないように見張っていたのだろう。」
羅希「では、あれがヴァレスティ様の作った物なら…貴方なら瑠美を治せますよね?」
ヴァレスティ「ぇ、治して欲しいのか?」
本当に驚いた表情をしている彼女に、当然です、と強い口調で言い放った。
後ろで飛成も、えー、とか言っている。
ヴァレスティ「貪欲なヤツだなぁ…」
飛成「まったくまったく〜せっかくだからこのままにしてもらえばいいのにー」
羅希「…………君らは…………」
女は怖い、と心から思った。
女性陣二人にため息をつく。
羅希「まあ、普通なら…ちょっとは嬉しいけどさぁ…
この瑠美の場合、好きになる以前に性格が変わってるから」
ヴァレスティ&飛成「「それくらい気にするな」」
羅希「気にするっての!」
ソファの上で羅希に抱えられた瑠美那が、ゆっくりと目を開いた。
もうヴァレスティに解呪してもらった後だ。
羅希「瑠美…?」
少し慎重に話しかける。
瑠美那「…………あー」
いきなり飛びかかってくることもなく、恥じらうこともなく、ぼけっとしている。
とりあえず、治ったんだと分かり、羅希がホッと一息ついた。
羅希「瑠美、ごめん。私のせいで…」
瑠美那「……いや、もうどーでもいーけど、んなこと…」
ものすごく気分の悪そうな声に、少し不安になる羅希だ。
瑠美那「私、すっごい気持ち悪いことしなかった…?」
羅希「…すっごい気持ち悪いこと………アレか………ああ、怖かった。」
瑠美那「……私だって怖かったさ」
一同は、羅希がとってきた怪しい果物を食べて、一息ついていた。
瑠美那「んー…効果とか原因は分かったけどさぁ。オカミさんは、カルビーをそうして、何がしたかったわけ?」
ヴァレスティ「フッ、愚問だな」
食べる意味はないのだが、ヴァレスティは果物をひとかじりして、瑠美那の質問に笑みを浮かべながら答える。
ヴァレスティ「私は男遊びが激しい女が大嫌いでな、私は付き合うのなら最高の男を1人だけにしたいのだ」
瑠美那「うんうん。で?」
ヴァレスティ「ある日ふと気付いた。最高の男なんているのか、見極められるのか、そもそもどのラインが最高なのか」
彼女の言葉に、瑠美那と飛成と竜花が深く相づちをうった。
羅希は「なんかすごいこと言ってるなぁ」とか、少し離れた位置でぼんやり思っていた。
ヴァレスティ「だったら、もう自らの手で作ってしまおう、と。自分の好みの男を作り上げてしまおうと思ったのだ。」
瑠美那と飛成と竜花が拍手した。
瑠美那「ぇ、じゃあなに…まさかその第1号が…」
ヴァレスティ「まあ、カルネシアだったわけだ」
羅希が果物にむせた。
飛成「おー!!ヴァレスティ様イイ趣味してるぅ〜」
瑠美那「じゃあなに、あのファッションセンスとかはオカミさんの趣味?」
ヴァレスティ「それだけじゃないぞ。口調とか仕草とか性格あたりまで計算してみっちり仕込んだからな!!」
『おお──────!!!さすが神様!!!』
ヴァレスティ「せっかくイイ感じにできてたのに、結局転成されてしまった時にはヘコんだな…」
ひょっとして、カルネシアもこの人に出会わなければ…もっと優しい人になってたのかなぁ…、とか羅希は窓の外を眺めて思っていた。神王に利用されたり、キャディアスに利用されたり、ヴァレスティに利用されたり…
カルネシアを含む“セリシア”って結構可哀想だなぁ。けれど、もう…
きっと利用されない生き方ができるはず。
場所は魔界。
魔王城の執務室。兼、精霊王と魔王の雑談の間。
セナート「なぁなぁ龍ちゃーん。今度みんなを転成するときはさ、ちょっとカルネシアさんとセリシアさんラブラブ〜にしてみたくない?」
龍黄「別に…。てかあの二人確か兄妹にするはずだっただろ…?」
セナート「うんうん。兄妹でラブラブなん。どうよ!!」
龍黄「どうよ、って………みんなは君のオモチャじゃないんだよ…?」
セナート「え、違うの?」…………………………。
龍黄「………………どうでもいいけど、ややこしいことするなよ。」
セナート「ダイジョーブ!!うちの計画は完璧っ!!」
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