大切な人と別れるのはとても悲しいけれど
でも、悲しんでいるよりも、それを乗り越えて強くなって
何かをすることが大切なんです。

お母さんのうけうりですw

こんにちは、ロンリーハートな『ろうしぇん・ロキア・フィート』です。
前回、僕はお姉ちゃんには好きな人がいて、その人はいなくなっちゃったけど、その人がいないからお姉ちゃんが寂しがっているという事実を知って、ある意味、失恋しました。
ショックです。とてもショックです。
もうお姉ちゃんのことはしばらく諦めるから(しばらく、ですよ?そのうちまた再アタックです!)
そのお姉ちゃんに寂しい思いをさせている男に会ってみたいものです。

会ったらまずお姉ちゃんをかけて決闘します。
…きっと僕より、大人だろうから
ハンデは欠かしません!!(ひきょうだ、とか言う無かれ)
話によると、その人は死んでしまったりしたわけではないので、どこかにいるのだろうと思いますが…。

でも、世界は広いですよね。お姉ちゃんたちに見つからないのだから、僕に見つかるはずがありません。
僕は寂しいため息をつきつつ、お屋敷のまわりの散歩にでかけました。
じつはまだお屋敷に泊まっています。
ここは何故かゲームセンターとか、お土産やさんとかがいっぱいあるので、とても楽しいです。
何日でもお泊まりしたいです。

今日は何年か前によく行ってはお母さんに怒られていた、湖に向かうことにしました。
小さくて浅くて、綺麗な湖です。
もう大きくなったので、お母さんも怒らないでしょう。
万が一、落ちてもそこそこ泳げます。

湖に到着しました。お花や木の実があって、とても綺麗な林です。
動物や魚もいっぱいいます。
ここの湖は少し特別で、不思議で、神聖な力があるんだそうです。
とくに魔力が強いらしいです。魔力っていうのは、魔法といって自分の意思で火を出したり、風を起こしたりする術のエネルギーのようなものらしいのです、が。僕は使えません。
学校の授業でよくやるのですが、見事なほどにできません。
悲しいです。頭がいいというのは自負してますが。
それは置いておいて、その魔力がいっぱいあるこの湖には、妖精さんとかもいっぱいいて、おかげで木や草や花はきれいで、水も綺麗なんだそうです。
妖精さんは普通の人には見えませんが、時々見える人がいるそうです。
じつは僕も少し見えます。
ホタルのように、うんと薄い光が、ほわほわと宙を泳いでいるのです。
そう、今日もいっぱい光や、可愛い女の子が……

ぇ、女の子…?

「わあ!妖精さん?!人の形初めて見た!!」
湖の水の上に、まるで地面に立つ様に、水面に立っている子がいました。
僕とおんなじくらいの女の子で、黒ダイヤのように黒くて長い髪と、雪のように白い肌と、ルビーのように綺麗な赤い目をしていて、とても人間には見えません。
きっと妖精さんです!とっても綺麗です!!

「はぁ?誰が妖精だ、誰が。」

…妖精さん、とってもガラが悪いです
僕の方を見て、眉の間にしわをちょっと寄せています。
てかにらんでます。妖精さん。
…なんかケンカ売られてる気がします。

フッ、僕はクラスのガキ大将とケンカして、ちょうど僕のクラスの授業に来ていたお父さんにガキ大将がいじめる〜って泣きついて、勝った男ですよ?
だからケンカはよしましょう!
暗算対決なら引き受けますが!

で、いきなり僕のイメージをぶち壊してくれた謎の女の子は、水面をてくてくと歩いてこちらに来ます。
「で、坊主、お前がフィートか?」

…知らない人に、付いて行っちゃいけないってお母さんが…!!

「いいえ、違いますよ。」
僕は迫真の演技で知らん振りをします。
でも、女の子はもっと眉の間にしわを寄せて、腑に落ちない顔をしています。
「…どーみでもお前、あの2人のガキだろうが。何シラ切ってるんだ。」
知ってるならわざわざ聞かなくてもいいでしょうが。

「てゆーか、お嬢さんは誰ですか。」
「お嬢さんとか言うな。気持ち悪い。」
……。
「だってそうじゃないですか。僕と同い年くらいでしょう?」
「お前みたいなガキと一緒にするな。まあ、この姿じゃややこしいが…。」
この人、何言ってるのかよく分かりませんが
タダものではない、ということはなんとなく分かります。

「じゃあ、あなたの名前は?僕の名前はフィート…ってゆーのは、知ってますよね。」
名前を聞くと、彼女は少し黙り込んで悩んでいました。
「…名前は、まだない。前にあった名前は、もう忘れた。」
「へ、なんかよく分からないです。」
「とにかく、名前はまだないんだ。不都合だったら適当に呼んでくれ。」
「そうですか。じゃあジョセフでいきましょう」
なんでだ。…親子そろってわけの分からないネーミングセンス…」
親子…ってことは、この人、お母さんのことも知ってるのでしょうか。
あの人のネーミングセンスはすごいです。僕もビックリ。
お父さんと僕が拾ってきた捨て猫に“伊勢エビ”とかつけましたから。
…伊勢エビ、ってどこのエビですかお母さん。
ちなみに伊勢エビは最近、お嫁さんのおうちにご厄介になっているようです。

「で、ジョセフ」
「結局それでいくのか。」
僕が呼ぶと、ジョセフは呆れたため息をついていましたが、僕の話はきいていました。
「ジョセフは妖精さんじゃないってことは、幽霊とかなの?」
「あー、似たようなものだが、別に死んだわけじゃない。まだ生まれていないだけだ。」
「まだ、生まれていない?」
「そう。俺は人間に生まれるためにここへ来たんだ。この姿は、生まれた姿の予定だな。完璧に反映されているではないが…まぁ、女に生まれる予定らしい。」
ジョセフは自分の体を見て、そう説明してくれました。
なんだかよく分からないけど、SF小説っぽい展開が起きているような気がします。

「じゃあジョセフは、ヴァル・ヴァヌスに生まれるんですか?」
「いや。もっと遠い国だ。」
「じゃあ、なんでここにいるんですか?それに、僕の名前も…」
「…俺は少しの間だったが、お前の両親と一緒にだったことがある。今更あいさつなんてしに行く気はないが、その前にあいつらの子供の顔でも見ておこうと思ったんだ。」
「僕の顔?」
ジョセフは口元に笑みを浮かべて、僕の傍にきました。
多分、僕よりも背は小さいはずだけど、浮かんでいるから僕を見下ろしています。

卑怯だ!
僕だって背があんまり伸びなくてがんばってるのに…!!

「子供ってのは面白いな。本当に親に似てる。」
「お父さんによく似てるって言われます」
「ああ、確かに…」
ジョセフは、初対面のはずの僕を、懐かしそうに見ていました。
「一瞬、小さいころのお前の親父が来たんじゃないかと思った」
「そんなに似てるんですか」
「ああ。」
なんだか、ちょっぴり嬉しくなりました。
…お母さんに似てたら、もっと嬉しいんだけどなぁ。

「ジョセフ、お父さんやお母さんに会いに行きませんか?」
「やだ」

うわ、即答。

「なんでですか?ケンカしたとか?」
「てか、無理だ。」
「なんで?」
「俺が意識を保てるのがこの湖の上だけだからだ。
この湖が特別な力を溜め込んでいるのは知ってるだろう?
俺の前世は人間じゃなく、いわばその特別な力の塊だった。
この人間界に降りて、ここに落としてもらい
この湖から、俺は失ったその力をもらい続け、存在している。
だからここを離れたら最後、俺はその力を失って前世の記憶も存在も消える。
“転生”が完了して、完全に人間の魂になる。」
だからだ。となんだか一気に説明されました。
…分かったような、分からないような。
てゆーか、僕はまだ八歳なんですよ。
もっと優しく分かりやすく…または理解できないような説明なら適当に誤魔化すとかしてください。

「じゃあ、お父さんとお母さんをこっちに…」
「フィート!」
言い切る前に、お父さんが走ってきました。後ろにはお姉ちゃんもいます。
ナイスタイミングです!!!
「やっぱりここか…湖に近寄るなって言っただろ?」
「もう泳げるから大丈夫」
「なわけないだろ。服着て泳いだことあるのかお前はー」
はぅ、それは盲点だった!

「お父さん、それより…ほら、この子!」
僕はジョセフを指差します。
お父さんは僕の指の先を見て…固まっていました。

「…やっぱり、老けたなこいつも」
ジョセフはお父さんを見て、苦笑いしながらそんな言葉を漏らしました。
けれど

「…何もいないよ?フィート、何かいたの?」
対するお父さんは、そんなことを言いながら僕の方を見てきて、首を傾げました。

「え…?」
僕はお父さんとジョセフを交互に見ました。

さっき、明らかに目が合ったと思ったのに…
それに、ジョセフは間違いなく、まだそこにいるのに…

「こうゆうことだ、フィート。」
ジョセフは驚いた様子も無く、僕のほうを見てそういいました。
「天国の決まりでな、前世で関わった人間との接触はできない。
お前の両親には俺の姿は見えないし、声も聞こえない。」
「そんな…」

ジョセフはきっと、お父さんたちにも会いたかったはずです。
だって、僕を見て嬉しそうにしていたから…
僕を見て、お父さんに会ったような気分になっていたんじゃないかと思うんです。
それなのに、会えても気づいてもらえないなんて、酷いと思います。

「…ジョセフ!お父さん達に伝えてほしいことはありませんか!」
僕はジョセフに言いました。
伝言くらいなら、してあげられると思ったのです。
天国の決まりで、話しちゃいけないとしても
これくらいは許してもらえるでしょう!
許してください神様!

「え、え?…ジョセフ?」
「誰…?」
お父さんとお姉ちゃんがなんか首を傾げてますが、気にしない。
ジョセフは少し悩んでいました。
「ジョセフの気持ちとか、話したいこととか話せる最後のチャンスかもしれないんですよ。
僕が伝えますから!」

「…そうだな」
ジョセフは頷いて、僕を見ました。
「…じゃあ、そのまま伝えてくれ。」
「はい!」
僕は嬉しくて、うきうきした気分で、お父さんの方を見ました。

「お父さん、これから、お父さんの昔のお友達の言葉を、伝言するよ。」
「…昔のお友達…?」
お父さんは、なんだかよく分からない…というよりも
もしかして…、というような顔をしていました。

「…我侭言って悪かったな。」
僕は、彼女…いや、彼だったっけ?
その言葉を、お父さんに向かって伝えます。
「わがまま言って悪かったな。」

「…あとは言うことないぞ?」
「あとは言うことないぞ…ってええ!!短っ!!!」
僕は思わず、ジョセフの方を振り返りました。
が、途端にジョセフは思い出した、と手を叩きました。

「ああ、あと、無事“転生”の準備はおわった。」
「…あと、無事“てんせい”の準備はおわった。」
僕はホッとして、お父さんに向き直りました。
気づけばお父さんの視線は、ジョセフの方に向いていました。
きっと見えていないけれど、そこにいるような感じがするのでしょう。

『だから、俺はもう消える。』
お父さんと、お姉ちゃんが、顔をしかめました。

『せいぜい、今世を楽しめ。お前の家族と一緒に。』

「…アンタこそ、今度こそまともな人生送れよ」
…なんか、お父さん、性格違うような…
「俺より…この子にちゃんと何か言ってから逝け。アンタがいなくなって、ずっと泣いてたんだからな…」
そう言って、お姉ちゃんを前に押し出すお父さんは、やっぱりいつもよりガラが悪い…。
てかジョセフに似ている気がするのは気のせいでしょうか?

『……大きくなったな、見違えた。』
ジョセフの言葉を伝えたら、お姉ちゃんがボロボロ泣きだしました。
ええ、前置きも無くいきなり…。
僕のお母さんが、特技とか言って10秒で嘘泣きができますが、それよりも早かったんじゃないかと!やっぱり本物は早さが違うね!!

てか、お姉ちゃんの泣いているの、はじめてみました。びっくりです。
「…すごく、寂しかった…けど、ずっと…がんばってたよ…?」
お姉ちゃんは苦しそうに肩を揺らしならが、手で顔を隠してしまいました。
「魔法とか、剣術とか…多分、上手くなったし…今は…貴方みたいに子供達に…いろいろ教えてる…」

そうか…、とジョセフは呟いたけど
僕はそれを通訳しなかった。
だって、ちょっと気づいたから。

お姉ちゃんの片思いだった人って…ジョセフじゃないか、と。

少し、複雑になってきました。
なんだか、モヤモヤします。
多分、ジョセフにシットしてるのかな…。

お姉ちゃんに惚れられたジョセフに、悔しい!と思うけど
でも、今はそれよりも、お姉ちゃんに、ちゃんとジョセフと話をさせてあげたい、と思います。
僕って偉い!

『…すまない。』
ジョセフはおねえちゃんの涙に動揺しているようです。
ハッ!女を泣かせる男は最低だぜ!!
『でも、お前のおかげで、俺も大分救われたから、感謝してる。』
うっわ!うまく丸めてるよこの人。
『ありがとう。』

「…フィート、本当にその人の言ってることそのまま代弁してる?」
不意に、お父さんがそんなことを言ってきました。
「してるよ?なんで?」
僕が言うと、お父さんはなんだか神妙に頷きました。
「いや、その人がありがとうなんて言うなんて気持ち悪うわっ!!」
いきなり、お父さんのすぐ後ろで爆発が起きました。
…ジョセフの魔法のようです。
…ジョセフ、そんな意思伝達の方法があったんじゃないですか。

『とりあえず、最初から最後まで俺のわがままばかりだったが、これでもう自由になれる。』
「ああ、よかったな。」
「よかった。」
お父さんが投げやりに言うのに対して、お姉ちゃんは本当にうれしそうに言っています。
なんだか、この三人の当時の関係が垣間見えた気がしました…。

『最後に、また話ができてよかった。』
ジョセフがまたありがとう、といいました。
伝えてから後ろを見ると、ジョセフは少女の顔で、微笑んでいました。
けれど、それとは別物のように涙が流れています。
本人も気づいていないみたいですが。
また、ジョセフは小さく、ありがとう、と言います。

『じゃあ、もう行く。』
ジョセフが意外にもあっさりそういうと、お姉ちゃんが顔を上げました。
お別れはしなければいけないはずですが、それでもしたくないときというのはあります。
僕もありました。
僕が飼おうと思って川から取ってきたお魚、メリー…元気でやっているでしょうか…。
あの時は、あのまま家で飼っていたら、お母さんに焼き魚にされたでしょうから、お別れしたのでした。
海に。
あとで聞いたらお父さんが「あの魚、淡水魚じゃなかったっけ…?」とか言ってたけど
タンスイギョってなんでしょう?

ああ、また話が反れました。
ジョセフが泉の端ギリギリまで、お姉ちゃんに近づきました。
けれど、お姉ちゃんには届きません。届いても、きっと見えないでしょうが…。
『自分勝手だが、誰かに泣いてもらえるのが嬉しいなんて、知らなかった。』
「あっ……」
お姉ちゃんが泉に近づきました。
そのまま、泉に足をつけて…

その瞬間、お姉ちゃんの周りが光りました。

「…ありがとう。」

 

ジョセフが一瞬、大人の男の人のサイズになったように見えました。
けれどそれは本当に一瞬で

もうどこにも、ジョセフはいませんでした。

 

「っ…」
バシャン、とおねえちゃんがしゃがみこんで
腰まで濡れてしまうのも気にしないで

お姉ちゃんは誰かの名前を…
多分、ジョセフの本当の名前を、叫んでいました。

 

 

しまった。
ジョセフがお姉ちゃんの片思いの人だったんなら

決闘を申し込むのを忘れた…!!!

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