―――55―――
〜エピローグ2 来世〜
季節は冬。
あの戦いと同じ季節になった。
今、町中では冬到祭の準備が進んでいる。なんだかんだ言って、結局私は羅希と一緒にいる。
孤児院も離れて、2人で暮らし始めた。
羅希はまさか私が彼のこと好きだなんて夢にも思っていないだろうが…。
話を切り出したのは私で、いつまでもアステリア邸や孤児院にお邪魔してるのも悪いのでから離れようか、と考えていた頃。
「2人で暮らす?」とかさりげなく言ってみた。
今思えば、私なりの告白でもあったのかもしれない。
それを聞いた羅希は、初めは驚いた顔をしたものの…
羅希「2人ともアレイジになったし、情報交換とかもしやすいな」
と、彼は解釈してしまった。
確かに、話を切り出したのは、私が再度フリーアレイジライセンスを取った直後だったけど…。
なんとも強引なこじつけと思うのは気のせいだろうか。
でも私と暮らす、という事実にはすごく喜んでいた。
そんなある日、うちを龍黄が訪ねてきた。
話したいことがあるから…と言って、そのまま引きずるようにアステリア邸へ連れて行かれた。会食堂。
久しぶりに、メンバーが集合した。
…ただし、カルビーを除く。
龍黄「時間があまりないから、率直に話す。」
それだけ言って、彼はテーブルの上に何かを置いた。……………目玉。
瑠美那「うおっ!!?」
飛成「いきなり変なもの出さないでよー!!」
私と飛成が思わず叫ぶ。
だが、落ち着いて再度見たら…
見覚えのある、その瞳の色。鮮やかで、でもどこか深い真紅。
瑠美那「あれ?これって……」
龍黄「カルネシアの左目」
龍黄はそうあっさり言ってのける。
でもなんでいきなり目玉なんかを出す!?
セリシア「と、いうか…カルネシアの“核”だ」
龍黄側に立つセリシアが、付け足しをしてくれた。
瑠美那「え、カルビーの“核”って目だったのか。」
私はてっきり、もっと体の奥に埋まってるものかと思ったのに。
龍黄「核があれば、彼を転生できる。先日、やっと神王を処分して、彼の転生を実行できるようになったんだ」
え………v
瑠美那「神王、死んだのか?」
龍黄「いや。……隠居してもらっただけ。新しい神王はまだ選考中」
なんだぁ…。
龍黄「それで、彼の転生先は、彼自身の希望で…人間になることになった」
………やっぱり、ちょっとカルビーったら寂しかったんだろうか。
私達とは時間の流れが違って、ずっと一緒にはいられなかったから?
龍黄「それで、俺とセナートで…」
龍黄が、その先を口ごもらせる。
それを見て、セナートが隣から割り込んできた。
セナート「あのな、うちら今回神王に逆らったから、表向き罪があるやろ?
で、うちらはその責任を取って、しばらく精霊界、魔界追放なろうて思ってるんや。
みんなは処罰なんかされんでいい、って言うとるけど」
全員が息ピッタリで「はあ!!?」と声を上げた。
龍黄とセナートまでそんな……
セナート「あ、安心しぃ。これはうちらには好都合なんや。むしろ執務大変で疲れるからちょっと逃げる〜みたいな〜」
あ、そーゆーことか。
セナート「でなでな。うちら人間界に来よう思ってんねん。そこで、みんな来世も一緒に集めよかなーて。カルネシアさん込み」
そこで、みんな考え込んで沈黙がはしる。
羅希「…それは…?」
羅希が口を開くが、いまいちよく分かってない。彼は言葉を探すが、その前に龍黄が回答してくれた。
龍黄「今回、みんなに迷惑かけたし、羅や瑠美や飛なんかも、神界のせいで一生をめちゃめちゃにされただろ。
だから、神界サイドからのお詫びって感じで、俺たちが来世でも一緒になれるように配慮する。
まあ、そうしたい、って希望の人だけでやるつもりだけど……ぶっちゃけ俺とセナートの暇つぶしだから、付き合う必要は全然ない。」
暇つぶし………。
暇つぶしで人の人生動かしますか。
でも
羅希「それって、もう私達には昔の記憶はなくなるのか?」
私が聞く前に、羅希が聞いた。
龍黄「…うん。体が覚えていても、本人に記憶はないだろうね。」
それを聞いても、私は
瑠美那「私は乗る」
この気持ちは揺るがない。
だって、覚えていなくてもまたみんなに会えるし…龍黄とだってまた会える。多分、彼は少しは寂しい思いをしてると思うし…。
飛成「僕も。やっぱ来世でもアッスー会いたいし〜」
飛成は、話の初めからノリノリの様子だったので、言うと思った。私は羅希の方を見た。
彼はその視線に気づき、私にちょっと困ったような微笑み返す。
羅希「私も…乗りたいな」
私がおもわず笑みがこぼすと、彼はその微笑みから困った様子を消した。
少々みんなと雑談したあと、家に帰って夕食にした。
もちろん、作るのは羅希。
……思いっきり新婚夫婦のような状況なのに、彼は特に何かを思うことはない様子。
無欲と言うよりは……なんなんだろう。鈍いんだろうか?
2人で丁度良い大きさのテーブルを囲む。
食べるよりも先に、まず話すのが自然と習慣になってきた。
瑠美那「羅希、お前さ…カルビーの目が出されたとき、あからさまに嫌そうな顔しただろ」
羅希「…ばれたか。」
二言目には、2人とも料理に手をつける。
羅希「…だって恨みがあるから」
瑠美那「…恨みって…私にキスしたことか?」
彼は迷わず頷いた。
なんだか呆れる。されてないのに勘違いしている事じゃなくて、もう半年以上経つのにまだ根に持っていることが。
瑠美那「あれ…されてないから」
私がそう言っても、彼は信じられないと納得しない様子。
羅希「……本当に?」
瑠美那「ああ。なんか…羅希を頼むって言われた。あいつはまだ危なっかしい、だって。カルビーの照れだったんだろ、あの意味不明な行動」
私が言ってから、彼はなにやら考え込む様子。羅希「瑠美」
瑠美那「なに」
羅希「私は…来世も君の傍にいていいか?」
てゆーかいきなり何…。
そう言う彼の表情はすごく不安気。ま、昔の私だったら速攻突き放してるし…仕方がないか。
でも…もう私は昔とは違って羅希をうざったくなんて思ってないのに…いい加減に気付け。
今までそれとなく彼に伝えてきた。
でも、言葉にしてはっきり言わないと全然分からないらしい。
瑠美那「ああ。そうしてくれると嬉しい」
またちょっとアピール込みの言葉を選んだのに、彼はいつも通り微笑むだけ。
羅希「よかった。君にうざったがれると思って、龍達の話に乗っていいか迷ってたんだ」
瑠美那「そうか…」
やっぱ気付かねえ!
瑠美那「あのさ、私はお前が思ってるほど、お前のことをうざったいとか思ってないぞ…今は」
それを聞いても、彼は嬉しそうな表情をするだけで…大した反応がない。私の気持ちに気付かない彼に…いい加減、腹が立ってくる。
2人とも食べ終わって、私が食器を洗い、その後ろで羅希は紅茶を入れていた。
私は手を休めずに彼に話しかける。
瑠美那「羅希」
羅希「何?」
紅茶がしみ出すまでヒマな彼は、私の隣で食器洗いを手伝ってくれる。
瑠美那「まだ私のことを好きだとか思うのか?」
…思わない、と言われたら泣くかも。
羅希「思うよ。だからまだ離れられずにいるし…。何故そんなことを?」
隠しているつもりかも知れないが、彼は旅から帰ってきて、表情が豊かというか…思っていることがすぐに顔に出るようになった。
今の彼には…また不安の色。私のこれからする答えに不安を持っているようだ。
でも別に、「いい加減に私を諦めろ」なんて言うつもりもないから、彼が不安に思わなくてもいいのだが…。
瑠美那「前みたいにやたら近づこうとすることもなくなったし…私がちょっと告白っぽいこと言っても全然反応しないから」
羅希「……え、告白?」
瑠美那「やっぱり全然気付いてないし…。もう私のこと飽きたんじゃないか?無意識で」
羅希「それは絶対無い!!」
すぐ隣でいきなり叫ばれて、驚きのあまり手を滑らせて食器を落としてしまった。
落としたのは洗い場の上なので、音がたっただけで割れることはなかった。
瑠美那「変なところでムキになるなよ…」
彼は自分の考え事で頭がイッパイらしい。意味のない所に視線を向けて、黙り込んでいる。
羅希「…とりあえず、それは絶対にないから。昔とは違って、少し焦ってて…慎重になりすぎてた…かも。瑠美の気持ちを見極めようとして…必死になりすぎてた。」
やっと小さな声で話した。
瑠美那「焦る?」
羅希「…昔は、瑠美のことは好きだけど…どうせ死ぬから叶わないって…」
瑠美那「ああ、それ聞いた。」
羅希「私は生きて、0に可能性が生まれて……それで、どうすればいいのかわからなくなってたかな…」
それは、彼に限らず誰もが思うことだと思う。
どうすれば振り向いてもらえるのかわからない…。
積極的になれば、相手が愛想を尽かして逃げるかもしれないし…。
瑠美那「……私は」
私は「羅希が私を好きだ」っていうことを知ってるから、まだ楽な立場なんだろう。
……なのに、相手が入ってきてくれるのを待っているのは、少し卑怯なのか。
瑠美那「………私は、お前のこと…嫌いじゃない。」言って、真っ先に私は泡のついた手でも構わず顔を覆った。
………踏切るタイミングを逃した………。
どうしてあと一歩ができない。
羅希「…瑠」
瑠美那「てかさ!なんで私が最近こんなに悩まなきゃならないんだ!?いやちゃんと理由は分かってるけどー!」
羅希「あの……瑠美……」
瑠美那「大体飛成とかならともかく私がこんな乙女チックなことを考えてること自体おかしい!てか飛成ってアイツなんなんだよ!何でいつの間にかアステリアとよろしくなっちゃってるんだあ!?」
羅希「瑠美、5秒でいいから黙ってくれる?」
瑠美那「5秒?何だよ」
羅希「いいから」
苛立つ気持ちを抑えながら、とりあえず言われたとおりに5秒口を閉じ…
瑠美那「……!」
ようとしたら、彼に唇を塞がれた。……そういや、私ってばファーストキスってやつか…?
全く感じたことのない感覚に、意識が遠のくような感じがする。
そこにあたる彼の唇が思ったよりもやわらかい。
瑠美那「ぶっ、うおっ!!!いきなりするな!!なんなんだよお前は!!!」
顔が耳までものすごく熱い。
恥ずかしさのあまり声がうわずったり、でかくなったり…
羅希「2秒しか待たなかったな」
羅希は意外と冷静だった。私と対照的なその様子に恥ずかしさが倍増する。
瑠美那「う、五月蠅い!てかなんかお前何やってるんだ!」
羅希「何やってるって…」
瑠美那「リピートしなくていい!!もう分かったからー!!」
思わずしゃがみ込む私の頭上で、彼の笑い声がする。
唇に残った感触が、しつこく残っている。
…忘れたいの忘れたくないのか、自分自身よくわからない。
とりあえず、その感触に赤くなりながら…放っておいた。
………私と羅希の立場は逆転気味。
でも、私はこれから…少しは素直になれる気がする。
−−−−−−−−*−−−−−−−−−
「ルミナ、起きなさい!!」
まだ猛烈に眠いのに聞き慣れた母親の声がたまに響く。
ルミナ「…るさい…聞こえてるから……」
「ちょっと!40分よ!!入学式早々遅刻するつもり?!」
ルミナ「40分〜!!!?」
目覚まし時計をセットした時間より50分も遅い時間を言われて、さすがに飛び起きた。
「お前ったら高校生になるのになんなのこの自覚の無さ!!」
ルミナ「痛いってば!!叩くな!殴るな!頭つくな!刺すなあ――――!!!!!」「はい、お弁当と身分証明書。あ、あと、お前の名前ね、じつはこんな字で書くのよ。」
そこには、見たこともない奇妙な文字が。
いきなりこれが私の名前、とか言われても………。
いつもこんな感じだが、一層疲れて歩き出す。
ルミナ「行ってきまーす………」
後ろでいってらっしゃい、と声がした。
あの声はしばらく聞けなくなる。
なぜなら私が入る高校は珍しい全寮制。しかもその不思議な校則などで超有名。
超有名だが決してレベルが高いわけではない。何故か超バカも受かったりする。
その理由は…謎だが、容姿で選ばれるという嫌な噂。
それになんで私が受かったのか、悩むところだ。
てゆーか、その学校は…外国にある。
ここからはバスやら電車やら飛行機やらに乗っていく。
ルミナ「あぁー………学校といい、長旅といい……憂鬱」
ま、あの鬼婆の妙なスパルタ教育よりはましか…。
ため息をつきつつ、バスに乗り込んだ。
青年「あの…」
背後から声をかけられ、振り返る。
私と同い年くらいの青年だ。
青年「その制服………“あの学園”ですか…?」
よく見れば、その青年の学ランは見覚えがある。
深緑の生地に黄色の刺繍を施された、私の行く“あの学園”の制服だ。
ルミナ「あ…アンタも?」
青年「ええ。お互い、これから大変ですね」
ルミナ「だな、がんばろう。」
見れば、彼は大人しそうな顔立ちが印象的の、お姉様ウケしそうな青年だった。
色白で、少し緑がかった金髪。瞳は夏の空のような、澄んだ碧。
なんだか…見ていて不思議な感情が芽生える。
すごく心が温まる。
ルミナ「…私はルミナ。アンタは?」青年「私は―――――」
〜終わり〜
っておわりまで長すぎ!!ついに55話という驚異の数に至りました…FLYAWAY。
ここまで見てくださった方、ご苦労様でした!ありがとうございました!!
なんだかまとめるのが苦手なので、またビ・ミョ〜な終幕を迎えました。
………『終わりよければすべてよし』の言葉も使えない(泣)
でも苦情は受け付けません(爆)心の中で囁いてください(o_ _)o))
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