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・・・私達は銃声響く会社の中を走りまくっていた。
私だったら銃向けられただけで足が止まるのに、こいつらは平然と結界で防いで走り続けている。
おかげで会社の兵士達は容赦なくマシンガンをぶっ放しまくっている。
・・・「殺すな」って命令忘れてないか?あの人達。
瑠美那「羅希!コンピュータ管理室ってどこだよ!」
うるさい銃声に紛れて聞こえにくかっただろうが、彼は理解してくれた。
羅希「32階!壊すのにも結構時間かかるけど、特に操作は必要無いからみんなで足止めだけで良い。」
羅希の声は結構大きかったのでしっかり聞こえた。
私達がコンピュータ管理室へ向かっているのは、今まで会社に提供してきた飛成(幻翼人)のデータを消すためらしい。
羅希「でもエレベーターは使えないから、行くまで時間かかるよ」
瑠美那「じゃあどうやっていくんだよ!」
飛成「階段で走っていくに決まってるじゃん!」
瑠美那&龍黄「なにぃ!!?」
羅希「やっぱりキツイ?」
瑠美那「当然だろ!32階だぞ?!」
龍黄「また今度の機会に消しに来る方が・・・」
羅希「じゃあ飛と龍は瑠美をつれて飛んで逃げて。私は後から行く。」
龍黄「聞いてないな」
飛成が彼に言われたとおり、私を連れて行く用意をしに、隣に走ってきた。
飛成「羅、気を付けて。」
羅希「はいはい。」
羅希は笑いながら手を振って、私達とは違う階段を駆け上っていった。
龍黄「じゃあ、あの窓から出よう」
と彼が指さしたのは廊下の突き当たりにあるすこし大きめの窓。
窓の前まで行き、飛成が翼を出そうと構えた、瞬間
___ガガガガガガガ!!!
窓の外から入ってきた大量の銃弾が、一瞬ゆるんでいた飛成の結界を破り、私達に何発か飛んできた。
飛成が慌てて結界を張り直そうとするところに、少々大きめの爆発が起きる。
龍黄「わっ、瑠美!」
飛成「うわああ!!」
龍黄と飛成が爆発でえぐり取られた壁と床から落ちた。
瑠美那「龍黄!飛・・・!!?」
外から銃撃を行っていたのはどうやらヘリらしく、そのヘリは私に向けて銃撃を行ってきた。
瑠美那「くそっ・・・」
私は再度建物の中へ入っていった。
その時、腿と腕に走った激痛でそこに弾が当たったと理解できた。
どこかに隠れる必要がある。もうすぐここに建物内にいた兵士達が来るかも知れない。
近くにあった部屋は、羅希達がいた部屋みたいな感じで、どこも鍵がかかっていそうな感じだ。
___カチャリ
そのうちの1つから誰かが出てくる。
チャンスだ、と私はそのドアに走り寄り、出てきた人物にすかさずナイフを突きつけた。
???「!」
中から出てきたのはいかにも貧弱そうな少年、ともとれる青年だった。身長も私よりは高いが同じくらいだ。
髪が染めているのか根本だけ白く、毛先は茶色。そしてそれはバサバサとのび放題の様子。
顔つきもやせ形で、顔色も悪い。
瑠美那「悪い、少し中に隠れさせてくれ。変なマネをしなければ何もしない・・・」
急に走ったせいで傷、とくに足の方が痛み出した。
???「どうぞ。もう一人いるけど、寝てるから大丈夫です。」
彼はあっさりと私を中に入れてくれた。
私は念のため彼にナイフを向けながら部屋の中へ入っていった。
瑠美那「っはあ・・・」
室内に入ってすぐに、私は壁に背を付けてしゃがみ込んだ。
傷口を見ると、思ったよりも出血していて、ズボンに模様のように赤黒くなっている。
腕の方はかすり傷のようで、たいして出血もしていない。
青年「これで止血してください。」
青年がベットのシーツをはさみで切って持ってきた。
瑠美那「・・・ああ、すまない。」
私はとりあえず、その布で傷口をまく。
青年「あ、そうじゃないです」
瑠美那「え?」
私がまこうとしていた布を彼はさっさと取り上げ、足の付け根の方から巻き始める。
瑠美那「いっ・・・」
青年「我慢してください。こうじゃないと出血が止まりにくいんです」
妙に手慣れた感じで、一度手が触れたところは傷口に当たらないよう、綺麗に折り返しながら布をまいていく。
彼は侵入者(私のこと)に怯える様子はなく、手際よく足と腕の止血をしてくれた。
瑠美那「・・・すまない」
青年「いえ。慣れてますから」
そういって、にっこり笑う。
元々子供っぽくてカワイイ系の顔なので、笑うとすごく可愛かった。
瑠美那「慣れてる・・・?」
青年「ええ、うちのご主人、目を離すとすぐに自殺するんですよ。」
瑠美那「え・・・・・・」
なんか恐ろしいことを言い残して、彼ははさみやシーツの残骸をしまいに別室に行ってしまった。
私はちょっと呆けていたが、気を取り直してこれからのことについて考える。
瑠美那「・・・ふう。」
この足で逃げ回るのは不可能に近い・・・。隠れながら動く必要があるな。
___カチャッ
青年がさっき消えていったドアが開いた。
瑠美那「あ、さっきは・・・」
ありがとう、と言いかけてその言葉を飲み込んだ。
そこから出てきたのは別人だった。
それ以前に言葉を失った。
さっきの青年とは対照的に身長がたかくて、体格もしっかりしている。それに、すっごい美形ってか・・・
羅希と飛成と龍黄も顔はイイけどあんまし唖然とされる感じではない・・・けど彼にはそれがあった。
この人はどっちかってゆうと葉蘭みたいな感じの雰囲気で、男なんだけど、綺麗と言える容姿だ。
束ねられていない背に落ちる栗色髪はあまりつやが良くない。多分、カラースプレーかなんかで染めてあるんだろう。
彼は下はスーツのズボン、上はYシャツという格好で、眠っていたのかすこし寝癖がついているように見える。
・・・そしてこの男、愛想が悪い。
深緑の瞳は濁り、目つきは鋭い。(ソレが逆にかっこよく見せてるのかも知れないが)
絶対性格ひねくれてるな。
瑠美那「・・・あ、あの・・・」
その男はぼーっと私を見たまま動かない。
私が困惑して動かないでいると、あの青年が彼の後ろから出てきた。
青年「領主様、なにぼーっとしてるんですか。さっさと着替えてきてください。」
男「サンセ・・・アレはなんだ」
“領主”と呼ばれた男の声は結構低いが線が通っていた。
彼の言った“アレ”とはもちろん私のこと。
サンセ「ああ、なんか会社の人たちに追われているみたいで、怪我をしていたので入れてあげました。」
・・・つーか、お連れの方にナイフ突きつけて入れて貰ったなんて言えない・・・。
領主「・・・幻翼人とやらがつれてきた娘か。」
彼は興味なさ気にソファにドカッと座る。
彼はそのままテーブルの上に置かれた書類を眺めていた。
しばらくして、さっきの青年、サンセが飲み物を持ってきた。
ご丁寧に私の分まで。
瑠美那「悪いが、いらない」
サンセ「・・・そうですか」
ちょっとがっかりしている様子を見て私の良心がちくちくを傷つけられた。
一応『毒が盛ってあるかも知れないから』とか理由があるが、それを直に言ってもがっかりしそう(と言うか怒りそう)だし・・・。
領主「お前の連れはどうした」
いきなり“領主”とやらからそんな質問をされた。
瑠美那「・・・みんなはぐれた。」
領主「お前一人だけか」
瑠美那「ああ」
領主「ではさっきそこの窓から希麟殿の走る姿が見えたのは気のせいか」
瑠美那「なにっ!?」
希麟って羅希のことだよな・・・。
領主「彼もはぐれたのか。一人だったぞ」
本当は、羅希はコンピューター管理室に向かってるんだが、そんなこと親しいわけでもないやつにいうわけない。
領主「追いかけたらどうだ。おそらく下の階は逃げ場を塞ぐのに多くの兵士達が構えているだろう。」
瑠美那「・・・」
確かに・・・。それに降りるときに羅希がいた方が何かと安全だ。
けど・・・
瑠美那「この足であいつの俊足に追いつくのは不可能だ。」
こんな状態でエレベーターを堂々と使う馬鹿はいない。
領主「・・・彼が向かっているのはコンピューター管理室だろう。」
瑠美那「え・・・」
領主は相変わらず無表情だ。
領主「幻翼人のデータを消しに。」
・・・合ってるし
領主「図星だな」
・・・はいはい、そーですよー
領主「コンピューター管理室なら一直線にいける道があるぞ」
瑠美那「本当か」
領主「ああ。ただし、一人でたどり着くのは無理だ。」
領主はソファから立ち上がる。
領主「私が連れて行ってやる。サンセ、用意しろ」
___・・・はい?
兵士「君子殿!?何故ここに!!」
領主の姿を見たとたん、兵士達がざわめきだした。
そりゃそうだろう。この空間は兵士達が群がっている特別なエレベーターの真ん前。
このエレベーターは会社内の重要な部屋に直接つながっていて、何かがそこで起きたとき、真っ先に駆けつけられるように作られたらしい。
そこに大事な取引先の相手が乗ろうと現れたのだから、おかしく思うはずだ。
領主「コンピューター管理室にはこちらにとって大事なモノが残されているのでな、それを確保しに行く。」
兵士「し、しかし、今コンピューター管理室には賊がいまして、兵士達も行くべきかと倦ねていたのです・・・」
領主「心配ない。彼とは少々つきあいがあったのでね。殺されはしないだろう。」
と言いつつ、領主は兵士達をかき分けてエレベーターに押しかけた。
マントで全身をすっぽり覆い隠した私と、私だけを気にさせないカモフラージュとなって同じく全身覆い隠したサンセが後ろにぴったりついて歩く。
そのままあっさりとエレーベーターに乗り込めた。
サンセ「まだ名前を聞いていませんでしたね。」
サンセがマントのフードを外しながらそう言ってきた。
サンセ「僕はサンセバスティアン。長いので“サンセ”でどうぞ。で、こっちの方はアステリア様です。」
瑠美那「・・・!アステリアって・・・アステリア・ヴェル・なんとか・ヴァル・ヴァヌス?」
なんとかの部分忘れた。だって長いんだもん。
コレで彼が“領主”と呼ばれていた理由が分かった。
彼は世界中で最も豊かであると言われている、このヴァル・ヴァルヌス公国南部の領主だ。
その名前は何かと有名なので知っている。
なんか王族の血筋で、王位継承者だったが、何かの理由で宮殿から離れた南部の土地と屋敷に幽閉状態で押し込められたが、そこで勝手に政治をやって国(南部のみ)を発展させたとか言う、めちゃくちゃな人物だ。
アステリア「・・・ずいぶんと懐かしい名前が出てきたな。“ヴェル”ですら忘れていたというのに」
サンセ「僕もアステリア様の下の名前聞いたのは久しぶりですね。」
瑠美那「・・・そんな人物がなんでここにいる?」
と聞いた瞬間、サンセがギクリと反応した。
___やばいことなのか?
サンセ「え、それは・・・」
アステリア「武器の密輸だ」
サンセ「そうゆうことをあっさりばらさないでください!!!」
瑠美那「密輸・・・いいのか、んな世界の条約を破るような犯罪を犯して・・・」
アステリア「良いわけないだろう。ばれたら処刑ものだ」
サンセ「だから僕が毎日びくびくしておかげで執務も手につかない状態で、おかげで胃潰瘍気味になるし・・・」
うわ〜サンセ君可愛そう〜
サンセ「なのにこの人ってば全然僕に気を遣ってくれないんですよ!薄情者なんですよ!!冷血人間なんですよ〜!?」
アステリア「そんなことより、もう着くぞ。」
そんなことより、って・・・確かに冷血人間。(←人のこと言えない
その言葉と同時にエレベーターがチン、と音を立てて止まった。
ガーっと錆びた音を立てて扉が開いた、と同時に・・・
___ガキィン!!
何者かがエレベーター内の私達に向かって短剣を振り下ろしてくる。それを危ういところでアステリアが銃で止めた。
私は1つ遅れて、その音を聞いてから武器を取り出した。
にしても、あの速さをよく止められたな・・・この人・・・。
アステリア「いきなり斬りかかってくるとは無粋だな。希麟殿。せっかく落とし物を届けに来てやったというのに。」
羅希「え・・・」
その短剣の持ち主、羅希の前に私はマントをすべてとって出た。
羅希「瑠美?!どうしてここに?!」
瑠美那「・・・外に逃げようとしたら外から銃撃くらって・・・飛成と龍黄とはぐれたんだ。どうしようか考えてたら、この人達に助けられた。」
・・・本当は脅して無理矢理・・・
いざとなったら人質にして逃げるつもりだったけどな!!
羅希「よかった。ありがとうございます」
サンセ「良かったですね。では、アステリア様、早く帰りましょう。」
サンセは反逆者に協力した、というのが後ろめたいらしく、早く帰ろう、とアステリアの服を引っ張った。
羅希「アステリア・・・。って南部の領主・・・?」
有名人だな〜。私も知ってたけど。
アステリア「私もそろそろ此処とは手を切る。行く場所がなければ来ればいい。軽い歓迎はできる。」
彼が吐き捨てるように言ったそのセリフに、サンセが大げさに驚いてみせる。
なんだ?なんか人を招くとやばいところなのか。
羅希「確かに、宿も決まってないですから、お邪魔するかも知れません。その時はよろしくお願いします。」
彼はそう返事をすると、機械に向き合う。
羅希「瑠美、じゃあ・・・あ、終わった。」
またしばらくいじりはじめる。
瑠美那「・・・?」
羅希「・・・よし、コレで・・・」
羅希が機械から離れて、扉に向かう。
アステリア「で、どうやって逃げるつもりだ。」
羅希「あーっと、とりあえずここから一階まで突っ切っていこうかなと。」
サンセ「あ、ダメですよ。警備兵は真ん中の階と一階に固まってます。それに、瑠美那さんが足を怪我しています。」
羅希「え、あ、本当だ・・・結構ひどいね・・・」
瑠美那「悪ぃ」
彼はにっこり笑う。
・・・私だったらぶっ飛ばすのに、やっぱり優しいのな。こいつらって。
アステリア「逃げるなら屋上へ行け」
けれど、逃走経路はどうしようか・・・と話しているところに、意外な言葉をアステリアが発した。
羅希「え・・・」
もちろん、屋上という意外な言葉に私も羅希も声を上げた。
アステリア「屋上に窓ふき用のクレーンがある。それを使って降りればいい。」
羅希「ああ、・・・でもその前に見つかりません?」
アステリア「ある程度下がったら飛び降りればいい。それに、位置的にも死角になっているはずだ。」
瑠美那「・・・やけに詳しいな」
その異常な情報網に、羅希はもちろん、サンセも目を丸くする。
アステリア「会社のコンピューター内に“ウィルスをまき散らす”準備が施してあったのを偶然見かけてな。・・・会社を抜け出すのだろうと思い、暇つぶしに逃走経路を確保していた。」
羅希「え・・・。工作は完璧なはずだったんだけど・・・」
アステリア「確かに良くできてはいたが、あの手の応用は熟練者なら見抜ける。」
サンセ「熟練者って、いつのまにそんな知識つけてんですか、あなたは」
アステリア「まあ、確保しておいたのは良いものの、当日には忘れて眠っていたがな。」
私がサンセにかくまって貰っていたときの事を話してるんだろう。
瑠美那「そういや、寝てたな。」
羅希がどう反応して良い物やら思い悩んで固まっている。
少し静かになったのを機にサンセが「急いで帰りたい」という自分の思いを思い出して、エレベーターの方へ走る。
サンセ「領主様!急いで戻りますよ!」
アステリアはなにか言いたげに羅希を見たが、結局何も言わずに去っていった。
瑠美那「羅希、信用していいと思うか」
羅希「いいんじゃないか?」
瑠美那「・・・そんな疑問形で返すなよ。」
羅希「デマだったらデマで、なんとかなるだろう。とりあえずけが人を出したくないからこんなややこしい事をして逃げているんだし。その気になればこの会社ごと壊して逃げられる。」
瑠美那「・・・で」
できるのか、と言う言葉を私は飲み込む。
・・・こいつらならできるな。大黒柱でもぶっ壊せば・・・。そうでなくともこいつらの魔法とかで。
羅希「じゃあ、行こうか。」
瑠美那「屋上は・・・8階上か。結構多いな。」
羅希「ま、ぶち抜くんだからあまり関係ないだろう。」
と、彼のセリフで固まる。
ぶち抜く?・・・何処を。
私がその思いを言葉に出す前に、彼は行動を起こしていた。
羅希「瑠美、離れて」
その言葉と同時に・・・
瑠美那「・・・げっ!マジかよ!!」
___部屋の天井に大穴が空いた。
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