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羅希の歌が披露された翌日の朝。

飛成「失礼しまーす!!舞台はどうだった!?」

静かだった部屋に、突然大音量のノックが聞こえて、返事も待たずに飛成が入ってきた。

迎えたアステリアは執務机に置かれた書類に向かって眉をひそめていた。

アステリア「・・・ああ、殺人的に良かったな」

飛成「どうゆうことよ、それ。てかさ、どうだった?自殺願望吹っ飛んだ?」

アステリア「・・・さぁ」

飛成「ちょっとー。せっかく貴方に合うような曲探したのにー。」

アステリア「・・・」

飛成「一体どうすればいいんだぁ〜。・・・試しになんか良い香りかいでみるとか!あ、なんかソレっぽいの売ってたな。ちょっともらってこよ・・・」

また「思い立ったらすぐ行動」の思念で、部屋を出ようとする飛成の腕を、黙っていた相手がつかんだ。

飛成「ん?なに?」

アステリア「・・・」

飛成「迷惑とか思ってる?精神の治療は重要なんだから、ちゃんといろいろやってみないとさー。我慢しろ、我慢。」

アステリア「・・・」

腕をつかむ手に力を入れて、少し引き寄せた。

アステリア「お前が背負ってくれるのか・・・」

飛成「ん?何を?」

アステリア「私の片翼を。お前が私の全てになると・・・」

飛成「・・・え?」

何を言われているのか分からなくて、一瞬魂が飛んだ。

けれど、何処かで聞いたようなセリフ。

その「何処」を思い出して、羅希の歌っていた歌を思い出す。

『貴方の片翼は私が背負ってあげるから

もう、私だけが貴方の全てになるから』

あのフレーズだ。

飛成「あ、あのさぁ!僕が言いたかったのは、そこじゃなくて、そこより前の歌詞!それに、それって新しい恋見つけるんでしょう。僕に言う事じゃないでしょうが!」

アステリア「・・・それで隠しているつもりか?」

飛成「・・・は?何を・・・?」

飛成のそう問い返す言葉には、少しの不安があった。

アステリア「・・・瑠美那という娘にも『何者なんだ』と言われた。」

飛成「・・・んで?」

アステリア「確かに私は普通の人間ではない。ヴァル・ヴァヌス公国の王家に生まれる銀髪の者は常に特殊な能力を持っている。」

飛成「・・・」

アステリア「そのせいか、見えない物まで見える体質でな・・・」

飛成「それで、僕に何か見えたの?」

アステリア「・・・ああ、黒い長い髪をした女が。」

飛成「・・・」

飛成は黙っていた。驚きの表情も見せない。

ただ、アステリアから目をそらした。

そして、自分の腕をつかむ彼の腕を振り払って、部屋から逃げるように走り去った。



飛成「・・・何、あの人・・・」

心臓に悪い・・・。

やけに鼓動が早く、激しい。

内心、結構驚いていた。

けれど、すぐにそれ以上に印象に残った・・・

お前が背負ってくれるのか・・・私の片翼を。お前が私の全てになると・・・

飛成「・・・ふ、普通男に向かってそうゆう台詞は言わないだろう!!そうだよ、あの人おかしいって!うん!!」

妙に自分に言い聞かせるように一人ぼそぼそ言って、立ち直る。

いろいろと思い出される物を振り払って、自室に戻ろうと足を速める。

・・・あの人、どうして髪の色染めちゃうんだろ・・・きらきらして綺麗なのに・・・

と、いつのまにかまた自分がアステリアのことを考えていることに気づいて、はっとする。

飛成「・・・あー、もう、どうしようあの人ー!・・・んれ?」

歩いていて、体に妙な感覚を覚えた。

・・・鼓動が徐々に強くなっていく気がする。速さは変わらず、その動きの激しさだけ・・・。

飛成「・・・あ!!」

以前にも感じた、この鼓動と苦しさ。

まさか、と思い血の気が引いた。

飛成「う、うそ!ちょっ・・・」

羅希「飛?」

焦って独り言のように騒いでいたところに、ずいぶんと悪いタイミングで羅希が現れた。

羅希「なんか、貧血か何かで瑠美那が倒れてしまったんだけどちょっと飛に診てもらいたくて。」

飛成「あっ、ごめっ・・・」

鼓動の激しさと速さまでも増してきた。

あまりの苦しさにうずくまるのを見て、羅希が脇から支えに来た。

羅希「どうしたの、フェ・・・っ?」

せっかく心配してくれたのに悪い、と思いながら、彼は羅希を突き飛ばしてふらつきながらも全力で駆けだした。

その飛成の異常な様子を見て、更に心配になる羅希であった。

なので、つい反射的に彼を追いかけて走り出した。

飛成「っ、なんで今更っ・・・!」

顔を引きつらせて、一人愚痴ってみる。

後ろに追いかけてくる羅希の気配を感じで、なんとか逃げなければ、と近くにあった窓から飛び降りた。

高さは五階。翼の無い羅希は飛び降りるのをためらうだろう。

翼を出そう、としたときに、下には植木があって、もう木にぶつかる直前であることに気づいた。

叫ぶのを押し殺して木に突っ込んでいった。



飛成「・・・」

最近、僕って馬鹿っぽいなぁ、とか思いながら木の枝から抜け出して、地面に着地した。

少々、腕を枝で傷つけてしまったが、かすり傷程度のなので放っておいた。

もう落ち着いてきた鼓動が完全に落ち着くのを、しゃがみ込んで待った。

それから、恐る恐る自分の体に腕を這わせて、自分の体の何かを探った。

それから、深いため息をつく。

やっぱり、と言うのと、これからどうしよう、というため息。

とりあえず、ゆるんでしまったズボンのベルトを締め直し、植木からはい出た。

瞬間、目の前に影。

飛成「・・・」

その自分の真正面にある影に視線を走らせる。

アステリア「こんなところで何をしている。」

正体は、まだ腕や首に包帯を巻き付けた、薄碧のスーツを身に纏っているアステリア。

それを見て、固まった。

アステリア「・・・なるほど、やはり私の推測は当たっていた訳か。」

一人で置物に話しかけているように思えるほど、彼の声しか響かない。

固まったままの飛成は、数分後にやっと立ち上がり、彼に向かって一言。

飛成「人違いです!」

いかにも追いつめられた、苦しい言い訳を吐き捨てて、そのまま速攻で走って逃げようとした。

が、予想以上に強い力で腕を捕まれ、いくら無理矢理走りきろうとしても、それ以上体が進まなかった。

飛成「離してくださいっ!!」

彼の手を自分の腕から引きはがそうと藻掻いてみる。

アステリア「その姿では力が入らないのではないか?」

飛成「五月蠅いなぁ!!離してよぉ!!」

段々と地が出てきていることにも気づかず、彼の腕をポンポンとたたき始める。

その力も酷く弱い。

アステリア「ちゃんと希麟殿に事情説明をした方が良いのではないか。」

飛成「嫌だ!って、コラァ!!」

あっさりアステリアの肩に担がれてしまった。

彼の背中を叩いて抵抗したり、足をばたつかせたりしてみるが、どれもアステリアにはたいしてダメージを与えられず、屋敷内まで運び込まれる。

飛成「ちょっと降ろしてよ!!誘拐する気!!コラァ!聞けぇ!!おーろーせーーー!!!」

まわりの人がちょっと注目するのも気にせず、飛成は叫ぶしアステリアは無表情で歩いている。

飛成「いい加減にしないと魔法使うよ!?」

アステリア「ほう、公衆の面前で人望高い領主を殺す気か。確実に指名手配確実だな。」

飛成「ちょっとアンタ性格変わってない?!てかそうじゃなくて降ろせっての!!」

アステリア「そうか、では降ろそう。」

と、あっさりと床に放り投げられる。

アステリアに向かって何か怒鳴ろうと顔を上げた瞬間・・・

飛成「・・・」

また本日何度目かの硬直。

視線の先には自分を見下ろして目を丸くしている・・・羅希だ。

羅希「・・・?」

彼自身、状況が理解できていない様子だ。

飛成「・・・失礼しました!!」

そう叫んで、走り去ろうと踵を返した瞬間、アステリアが逃さんとばかりに突き出してきた腕に思いっきり顔面をぶつけてダウン。

痛みにうずくまって顔を手で覆った。

羅希「あのさぁ・・・」

羅希がちょっと信じられない、と言った表情でポツリと呟いた。

羅希「・・・飛なの?」

飛成「え!なんのことです・・・アダァッ!!」

どこから出したのか、アステリアがライフルの銃口で飛成の後頭部を殴った。

言い訳をするな、と言う意思表示。

アステリア「・・・間違いなくコイツは飛成だ。私が保証しよう。」

それでも、羅希はまだ唖然とした表情を浮かべている。

羅希「でも・・・この人・・・」

羅希が再度、まじまじと目の前にいる黒髪の赤い目をした人物を眺めて、小さく呟いた。

羅希「・・・女の人じゃん」



『瑠美、どうしよう・・・僕、僕・・・』

ベットの上で自分の肩を抱いて震えている少年の小さな体を、更に小さな体の少女で抱きしめてやった。

『大丈夫、羅お兄ちゃん平気だから、泣かないで』

けれど、そんな言葉では少年の不安はかき消えない。

少し顔を上げた少年の顔は、泣きすぎでボロボロになっている。

淡い緑陽のような髪は、ぐしゃぐしゃにかき乱されていて、色あせているように見える。

『どうして、どうして父さんと母さんは僕をここにいさせるんだよ・・・』

『お兄ちゃん』

『僕は魔族なのに・・・!』

『お兄ちゃん!!』

ヒステリックに叫ぶ彼を、力一杯抱きしめた。

このままどこかへ去っていきそうな気がして怖かった。

もう、どうしていいか分からなくなってきた少女が、大粒の涙をぼろぼろと流し始めた瞬間、部屋の扉がゆっくり開いた。

そして少女にお母さん、と呼ばれた美しい女性が、少年の隣に腰掛けた。

少女は母に任せよう、と少年から離れた。

『龍黄』

『母さん、僕、変身したんだよ・・・』

半ば狂ったような目つきと口調で呟く少年を、母親はただじっと見つめている。

『牙と爪があって・・・腕に龍みたいな鱗があってさ・・・それで羅を殺したんだ・・・』

少女が思わず耳を塞いだ。

それでも、少年の悲痛な叫びは手を通して聞こえてきた。

『僕、羅を殺すとき、全然嫌じゃなかったんだよ!何にも感じなくて、止められるタイミングだったのに、止まらなかったんだ!』

『・・・』

『ねぇ、母さん、僕もうここにはいられないよ・・・。僕の居場所はここじゃないんだ・・・』

『龍』

母は落ち着いた様子で、少年の肩を叩いた。

『もう少しがんばろう。居場所を見つけるにはまだ早いわ。』

ぐしゃぐしゃになった髪を、優しくなでて整えてやる。

『羅君は無事よ。そんなにひどい傷ではなかったから。』

少年の脳裏に、目の前に飛び散り、自分の体を濡らした鮮やかな鮮血が浮かぶ。

あれが・・・軽傷なわけがない。

『でも・・・あんなにたくさん血が・・・』

『生き物の生命力はすごいのよ?大丈夫・・・』

そう言って母はにっこり笑いながら少年の頭を抱いてやった。

その耳元で優しく囁いく。

『明日、謝りに行こうね。逃げるとしても、それは必ずしなきゃいけないわ。』

少年は声を押し殺して、激しく頭を縦に振った。

『さっきね、飛君が来てくれたわ』

『飛・・・?』

『ここまでは通さなかったけど、羅君は大丈夫だし、恨んでないから心配しないで、って言って帰っていったわ。』

『・・・あんな酷いことして、恨んでいないはずがないよ・・・』

『あら、そんなこと無いわよ。』

『恨んでるよ・・・』

『龍は考え過ぎよ。みんながみんな、虐める子達みたいではないのよ。』

母にはこの思いは分からない、と少年は口をつぐんだ。

母は、ずいぶんとひねくれて育ってしまった息子を見て、少々考え込む。

今までまわりから受けた仕打ちを考えれば無理もないことだが、あの優しい少年達を疎むことはさせたくなかった。

きっと、彼らが息子を変えてくれると信じている。

家族ではできないことをしてくれると思っていた。

・・・現に、娘の方は変わったのだ。

少女はいつの間にか部屋から出て行っていて、父と話している声がする。

『少し休みなさい。落ち着いたらご飯にするから。泣きたければ思いっきり泣けばいい。』

『うん』

そう言って、母は心配げにゆっくりと少年から手を離した。



瑠美那「・・・んぁ?」

目覚めは結構スッキリしていた。

そんなに長くは寝ていなかったのかも知れない。

勢いよく上半身を起こすと、見えた情景は結構深刻な感じ。

私の寝ているベットに龍黄が座っていて、看病人用っぽいベット脇の椅子に羅希が。

その2人に向かい合うように、簡素なソファに飛成・・・になんか雰囲気の似た女性。

その奥にアステリアが壁に寄りかかって虚空を見ている。

龍黄「おはよう、瑠美。って言ってももう昼だけど。」

龍黄のいつもと変わらぬ笑顔。

なぁんか覚えのある夢見ちゃった後で彼の顔が妙に見えた。

瑠美那「・・・んー、あ?なんで私医務室で寝てんの?つか今どーゆー状況よ」

頭をボリボリ掻きながらあくび混じりに問いかけた。

それに応えてくれたのは羅希だった。

羅希「昨日、バーで歌の披露をしてるときに倒れたんだよ。今さっき飛に診てもらったけど、特に以上はないし、病気とかじゃあないみたいだから。多分ただの貧血か、私の歌のせいだね。」

多分、後者だ。

羅希の歌を聴いていたときのあの妙な感覚と、五月蠅いざわめきのような声を覚えている。

なにより、歌の歌詞に何かものすごく激しい感情の高ぶりを感じた。

瑠美那「・・・んじゃ、その人誰。」

私が指さしたのはみんなに囲まれるような状況にいる、女の人。

羅希&龍黄&アステリア「飛成」

回答が、羅希と龍黄とアステリアの3人から同時に挙がった。

瑠美那「・・・の妹?」

羅希&龍黄&アステリア「本人」

またもや回答が3人ダブった。

瑠美那「・・・だって女じゃん。なに、アイツ男装してたのか?」

飛成と言われた女性は黙ったままうつむいている。

こちらから顔は十分見えた。

目の色や髪の色は全く同じ。ただ、髪がちょっとサラッっとしてるかも。

あと、体のラインなんかはどこからどう見ても女性で、スタイル良いし胸も十分ある。

身長も以前とは比べ物にならないくらい低い。

私よりも少し高い程度。

顔の作りも目はくっきりしていて、顔の部品もスッと整っている。どちらかというと“かわいい系”になるか。

葉蘭(羅希の血のつながらない妹)とまではいかないが、結構な美人だ。

一目見て飛成を思い浮かばせたのは、髪と目だけかも知れない。けれど、何処か雰囲気に飛成の影があった。

羅希「これから、その理由を聞く。」

そう私に言ってから、普段と変わらぬ口調で女飛成に話しかける。

羅希「とりあえず、もう一度確認しておくけど・・・君は“あの”飛成?」

飛成「・・・はい」

発せられた声はいつもとは全然違う、女性のものだ。

羅希「・・・ここまで完璧な性転換なんて魔法技術でもできないはずだけど、なんで飛は今そういう状況なんだ?」

飛成「・・・話せば長くなるんですが・・・簡潔に言えば神族と契約してそういう特殊能力を貰ったから。」

一瞬部屋に沈黙が流れた。

羅希「神族と通じてたの?」

彼の質問に、飛成は言葉を選びながら回答する。

飛成「通じてるって言うか・・・子供の時に通りすがった神族の人になんとなく話して・・・」

こんな状況、と自分で自分を指さした。

瑠美那「あー、じゃあ、おまえって元は女なんだ。」

私の言葉に腹をくくったか素直に頷いた。

羅希「考えてみればそんな態度とってたな・・・」

飛成「騙すつもりは・・・いや、あったか。現に騙してたし・・・」

羅希「いや、それはいいんだけどさ。一番知りたいのはどうして君が男になったりしてたのかなんだけど」

ソレに関しては、飛成は口を紡いだ。

しばらく待ってみるが、いっこうに言い出す気配はない。

羅希「・・・言いにくいことなのか」

飛成「・・・いいや!もうここまで言ったんだから腹くくるわ!」

バン!、と膝を叩いて、もう全てを投げ出したように勢いよく語り始める。

飛成「僕ね、羅のこと好きだったのよ!」

唐突な愛の告白に羅希は驚く以前に固まってひびが入った。

まわりの一同もちょっと肩を落とした。

飛成「んでも羅には瑠美がいたでしょ、だから邪魔したくないってかどうせ叶わぬ恋だから
スッパリ思いを断ち切ろうとしたんだけどどうしてもできなくて、
じゃあもう羅のことを見ないようにしようとか思ってたんだけどもうそれがつらくてつらくて。」

ちょっと羅希の顔が赤く染まった。これだけ好きだ好きだ言われてれば恥ずかしくもなる。

飛成「んで、なんとか羅を諦めたいし、
羅っていろいろとがんばってたから力になれないかなぁ、とか仲良くなれないかなーといろいろ思ってて黄昏れてたら
なんか村の視察に来たって言う神族の人が声かけてきて、相談してたら男になれないかなーとか思ってきて。
そうすれば女とは違って非力じゃないし、羅のこと好きじゃなくなるし、友達でいられるかなーって思ったから、
男にして貰ったの!」

全く息継ぎなしで叫ぶようにそう告げた飛成は言い終わってから苦しそうになった。

羅希「あー・・・う、ん。」

なにが「うん」なのかよく分からず、目が点のまま頷く羅希。

なんか安易って言うか・・・子供の発想だよなぁ、と思う。

飛成「・・・僕って孤児だったから、そんなことになっても気にされないしさ・・・
だからもう女捨てても良いだろうと思って。
まあちょっとは噂になったけど、一週間くらいでもう死亡扱いになったし。」

羅希「あのさ、今更気づいたんだけど。」

飛成「ん?」

すこし言いにくそうにくぐもった声で問う。

羅希「・・・私、女性の飛成を見たこと無かったんだけど。」

龍黄「僕も」

ちょっと失礼なことだったかも知れないが、二人の反応を見て飛成は当然という感じで、うんと頷いた。

飛成「当然。僕、羅にちゃんと話しかけたことないし。」

そう言われてちょっとホッと息をついた羅希。

羅希「じゃあ、どうして私の事を・・・」

好きだったのか、と言う言葉が言いにくくて、言葉を曇らせてしまう。

でも飛成はその先をもちろん、理解していて、少々嬉しそうに微笑んで話し始めた。

飛成「羅は覚えてないだろうけど、僕ってよく虐められてたんだよね。両親死んでから沈んでばっかりいたから。」

羅希「・・・あ!」

全て言い終わる前に羅希が思い出したようで、声を挙げた。

でも飛成は微笑みながら話を続ける。

飛成「それで、虐められてるときに庇ってくれて・・・その男の子を怒鳴り散らしてさ。見たこともない僕に優しい言葉かけてくれて。」

羅希「うん。なんか思い出した。いつも泣きそうな顔をしてるいじめられっ子がいて、なんかいつも心配して見てた。」

以外にも羅希も飛成のことをそれ以前に見ていたらしい。

その事実に、飛成は驚きと言うよりも喜びを感じて、照れくさそうに微笑んだ。

瑠美那「じゃあ、羅希に惚れたきっかけがそれだとして、なんで今更女に戻れたんだ?」

飛成「それがね、その神族の人がこんなこと言ってたんだよね」



良い?私は貴方の未来を奪ったわけではない。チャンスを与えたのよ。

飛成「チャンス?」

そう。もし貴方が心から愛せる人が現れたら、今好きな人よりももっと好きな人が現れたら、魔法は中和される。

飛成「中和?」

効果が薄くなるのよ。
性転換なんて魔法は本当はないもの。
だから貴方自身にその特殊能力を与えて、女になれないようにロックをかけておいた。
もうその能力が必要なくなったら_本当に好きな人が現れたら_それが解除されるわ。

飛成「・・・はい。」

いい人が見つかると良いわね。

飛成「・・・はい。ありがとうございました。」



飛成「って感じで言われた。その時はそんなことあるわけ無いと思ってたけどね。・・・ってどうしたの?」

飛成がそう言って、みんなの反応に、クエスチョンマークを浮かべた。

瑠美那「・・・お前さ、今自分で言ったことの意味分かってる?」

飛成「何が?」

私が問いかけるが、飛成の返事は・・・やっぱり分かっていない。

瑠美那「それって遠回しに告白してねぇ?」

飛成「誰に」

瑠美那「アステリアに」

こんな回答で、理解できるはずもなく、私の言葉に羅希が付け加えた。

羅希「だってさぁ、それって誰かのこと好きになったって事だろ?私以外の。」

飛成「・・・・・・・あ。・・・そう、か・・・」

羅希「なんか会った時期とか、様子とかで・・・考えられるの・・・アステリアさんしかいなくない・・・?」

飛成「え・・・」

今更、固まる。

今度は飛成以外の一同が、アステリアに注目。

彼は別に何も聞いていないように無反応で、無表情。

ただ自分に注目が集まったのが不快なようで、眉をひそめた。

飛成「・・・頼むから本人に言わないでくれる!!」

とか唐突に叫んだ飛成だが

一同「てか後ろにいるんだけど」

と言うことをすっかり混乱して忘れているたようだ。

飛成「うわぁ!!いるならいるっていってよ!!」

アステリア「・・・」

飛成「いっとくけど!僕が好きなのは別の人だから!勘違いしないでよね!!」

今更そう言っても全く説得力がない。

と言うか、もうすでに「誰かに惚れた」と言うところを認めるか。

アステリア「わかった」

飛成「よし!」

・・・本気でわかったと思うわけがないだろうが・・・と一同の頭の中で突っ込む。

が、飛成が納得しいているので私もみんなも言わないでおく。

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