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龍黄はレティスとパリスの部屋へ行った。
私も行かないかと誘われたが、行くわけがない。あーゆー年頃の子供は嫌いだ。
しばらく一人、部屋で本を読んでいたが・・・
瑠美那「うえ・・・」
本を読んでいたのと、ずっと部屋にこもっていたのが祟って船酔いに侵された。
動き回っても良くならない気がしたので部屋で静かに休んでいたが、横になっていても揺れるもんは揺れるので結局気分は悪いまま。
寝てても仕方がないので、外を歩くことにした。
瑠美那「う・・・」
部屋から出てみても、歩いてみても、気分は悪いまま。そろそろ吐き気がしてきた・・・。
海の風は気持ちが良いが、肌に張り付くべたついた空気は不快だ。
瑠美那「くそ・・・セヴァールフなんかが乗るから気分悪く・・・」
完璧なる八つ当たりだ。
瑠美那「・・・っく・・・」
吐くにしろ、吐かないにしろ、部屋に戻った方が良さそうだ。
私は部屋に向かって歩き出した。
羅希「あ!瑠美!」
背後から最近よく聞く声が。
振り返るとそこには羅希と飛成がいた。
昼あったときとは違い、制服は着ておらず、動きやすそうな私服だった。
そして飛成はサングラスをかけている。
羅希「瑠美も風に当たりに来た?奇遇だな。」
瑠美那「・・・ずっと見張っておきながら、奇遇なんて言葉はあわないだろうが。」
ばれたか、と、全く驚く様子もなく笑う羅希。
飛成「・・・瑠美、気分悪そうだね。大丈夫?船酔いに効く薬あるけど。」
ポケットを探りだす飛成に、私はいらない、と言うように手で合図した。
飛成「なんで?今にも吐きますって感じだけど・・・」
瑠美那「薬ってのは何かと危ないから」
飛成「どゆこと?」
瑠美那「だましやすいって事だ。」
私の発言に目をパチクリさせる羅希。飛成はよく分からなかったけど。
羅希「私達はよっぽど信用されてないね。」
瑠美那「別に、あんたらじゃなくても断る。」
羅希「それは良かった。で、飲んで。」
瑠美那「・・・飲まね、っつってんだろが。」
羅希「・・・」
彼はしばらく考え込んだ後、飛成から受け取った錠剤を二粒くらい飲んで見せた。
羅希「はい、平気だろう?」
瑠美那「余計飲まない。なんでそこまでして飲ませたいんだよ。」
羅希「実は毒だから」
・・・私は呆れて何も言わない。
羅希「冗談。近くに気分悪い人がいたらなんとかしてやりたいだろ?」
瑠美那「・・・・・・はあ」
なんだか、どうでも良くなってきて彼の差し出した薬を受け取り、飲む・・・。
瑠美那「・・・一応、ちゃんとした薬みたいだな。」
羅希「一応じゃなくて、ちゃんとした薬。」
瑠美那「・・・じゃ、薬、ありがとう。」
背を向けて歩き出そうとした。
が、羅希に腕を捕まれて止められた。
瑠美那「・・・って、やっぱり止められると思ったんだよな・・・」
羅希「どうして?」
瑠美那「・・・どうせ、また少し話そうよ、とかじゃねえの?」
羅希はにこにこしている。
・・・あたり、と言うことだろう。
瑠美那「・・・ま、部屋戻ってもつまらないし。少しくらいなら良いぞ。」
私は手すりに寄りかかえう。と、飛成が慌てた様子で
飛成「じゃ、僕は席を外すよ。」
と言いながら、手を振り私達に背を向けた。
瑠美那「なんだ?」
羅希「・・・気を利かせてくれたんじゃない?」
彼がいたずらっぽく笑むのを見て、なんだか・・・
瑠美那「やっぱかえる。」
腹が立った。
羅希「ちょっと〜〜〜!!」
瑠美那「いっとくけど!私はお前みたいな奴は好まないからな!」
羅希「“お前みたいなの”って?」
瑠美那「ふざけてる奴!」
羅希「私は大真面目だが」
瑠美那「そーゆーところがキモい!」
羅希「ふざけてるはともかく、キモいってのはちょっと傷ついた」
瑠美那「勝手に傷ついてろ!」
羅希はふう、とかなんとかため息をつく。
ため息をつきたいのはこっちだ。
羅希「じゃ、ふざけるのはこの辺にして、」
瑠美那「やっぱふざけてたんじゃねえか」
羅希「ふざけてないけど、と、とりあえずこの辺で本題に入ろう!」
彼は私の回し蹴りを間一髪でとめつつ、慌てて話を戻す。
羅希「・・・ふう、話って言うのは、君の昔のこと・・・」
と、ここまで話して、彼の話が切れた。
羅希は私の後ろをみて、話すのをやめてしまったようで・・・彼が何を見たのか、私も後ろを振り返った。
瑠美那「あ、龍黄」
羅希の視線の先にいるのは、紛れもなく、何の変哲もない龍黄その人で、その足下にはレティスとパリスがいる。
多分、3人で外を見に行こうとでも話していたのだろう。
レティス「うわ!瑠美那!なんだ後ろの男は!!」
パリス「浮気するき!?」
瑠美那「何言ってんだおまえらは!!」
お子様2人は無視して・・・
すぐに龍黄の様子がおかしいのは分かった。
何か、化け物を見るような目で私の方を・・・いや、私の後ろの羅希を見ている。
・・・殺気。
龍黄からそんな感じの物が出ている気がする。
瑠美那「おい、龍黄・・・」
私は彼の方に近寄ろうとした。
けれど、羅希に肩をつかまれ、止められた。
それで、羅希の方を振り返ると、彼も何か険しい顔で龍黄を見つめている。
・・・やっぱり、こいつら、なんか関係があるのか。
瑠美那「羅希、お前、龍黄とは一体どうゆう・・・」
龍黄「瑠美!!!伏せろ!!!」
そう叫んだ龍黄の方を見るよりも、その言葉の心意を理解するよりも、とにかく龍黄の言うとおりに伏せていた。
そして伏せてから龍黄の方を見ると、彼の手のひらにまばゆい光が集まっている。
まさか・・・
瑠美那「おい!龍黄!船上で魔法は・・・」
龍黄「りゃああ!!!」
瑠美那「聞けよおおお!!!!」
私が言うよりも早く、龍黄はこっち・・・羅希に向かって魔法を放っていた。
羅希を助けるべきか悩んだ。けれど、彼には同様も見られず、焦る様子もない。
それに、何故か羅希は大丈夫・・・そんなような気がした。
そんなこと考えている一瞬の間に龍黄が放った激しい熱を持った光が私の頭上をかすめ、羅希にぶつかる。
瑠美那「羅希・・・!」
龍黄「瑠美!急いでこっちへ!」
私は羅希に近づく前に龍黄によって彼から引き離された。
と、同時に、羅希に襲いかかっていた龍黄の魔法の光が、轟音とともに空の方へ飛んでいって消えた。
多分、彼が空に向かってはじき飛ばしたのだろう。
瑠美那「・・・お、おい!龍黄!何いきなり攻撃して・・・」
龍黄「あいつは敵だ・・・」
瑠美那「はあ?」
見上げた龍黄の顔がいつもとは別人で、怒っているのか、怯えているのか、取り乱しているのか、よく分からなかったが・・・なんだかいつもと違って怖かった。
龍黄「僕の妹はあいつに殺されたんだ」
瑠美那「え・・・」
唖然としながら羅希の方を見る。
彼も龍黄のように別人のようだ。
表情が全くなくて、人形のようだ。
羅希「・・・そのこと」
騒ぎを聞きつけた乗客が集まり、少々ざわめく中でも、羅希の声は妙に響いてしっかりと聞こえた。
羅希「否定はしない。けれど、君が止めても瑠美は必ず連れて行かなければならないんだ。」
・・・いきなり連れて行くとか言われても・・・困るぞ。
いや、困るというか、一体今どうゆう話を・・・?
龍黄「瑠美は絶対に渡さない・・・!!」
って、そんなかっこいい台詞を言われても困るし・・・!
龍黄は魔法第2弾を準備していた。
瑠美那「オイ待て!!さっきはあいつが吹っ飛ばしてくれたから良いけど、今度それが下手に船を吹っ飛ばしたら・・・!」
私が龍黄を止めようとあいつの方を振り返ると、その後ろに飛成が・・・。
瑠美那「危ない!!」
私は龍黄の上にかぶさり、飛成が振り下ろす拳を受けようとした。
けれど、飛成は私にそれが当たる直前に拳を止めた。
やっぱり、思った通りこいつらは私を攻撃しない。
さっきからの羅希の会話で、私はあいつらには必要な存在。下手に傷つけられない。
私は飛成がひるんだ隙に龍黄を突き飛ばしながら飛成の腹に向かって拳をたたきつけた。
飛成「くっ・・・」
それを彼が間一髪で受け止める、が、私はそれを更に反対の手でつかみ、自分の方に引き寄せつつ顔面に蹴りを食らわせる。
瑠美那「うっ・・・」
けれど、それが飛成の顔に当たる直前に体の力が抜けて、威力も早さもほぼ失って、あっさり飛成に受け止められた。
私はそのまま力を失って床に座り込む。
瑠美那「・・・く・・・」
龍黄「瑠美・・・あっ!!」
龍黄が私に気をとられて、羅希の背後からの攻撃を受け、床に倒れ込んだ。
瑠美那「龍黄・・・!」
龍黄は・・・生きている。
頭部の一撃ですこし体がしびれているだけみたいだが・・・それでもなかなか立てないようだ。
飛成「・・・薬、やっと効いてきたみたいだね。ずいぶん遅かったけど・・・」
羅希「すまない、瑠美。・・・本当はこんな手は使いたくなかったんだけど。」
瑠美那「・・・!」
あの薬、やっぱり・・・
私の体は力を失い、飛成の腕の中に倒れ込んだ。
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