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瑠美那「・・・・・・」
今日、会談予定の国、ヴァル・ヴァヌス公国に到着した。
レティス達は彼女たちの父親、つまり王とともに会談に出席している。
会談中は護衛は必要ないだろうと言う言葉を貰い、私は町で暇をもてあましていた。
羅希と飛成は会談の場で、セヴァールフの社長の隣にいたのを確認したので、町で彼らに出くわすことはない・・・と、龍黄を説得して別行動をとっている。
瑠美那「・・・ん?」
私はある大きな建物の前で足を止めた。
・・・まわりの建物に比べてやけにでかい・・・
白で統一された建物で、他の建物と違って木製ではなくコンクリートでできているようだ。
瑠美那「・・・図書館?」
看板の文字で図書館と分かった。
・・・・・・あ、そうだ。
私は図書館へ入っていった。
・・・中も白いな。
とか思いながら、入り口のすぐ近くにあったコンピューターで本探しを開始した。
この国の南部は機械産業が発達していて、世界で2,3番目くらいに豊かな国とされている。
北部は結構荒れているらしいが・・・。
ちなみに私達がいるのは南部の方である。
瑠美那「・・・あ・・・」
目当ての本が見つかった。
瑠美那「・・・神話・・・か。」
実は『幻翼人』について調べていた。
見つけた本はすべて神話や童話程度の話だった。
まあ、“精霊”と言われてるくらいなんだから昆虫みたいにデータなんかない・・・あった。
瑠美那「・・・ま、魔獣・・・?」
・・・魔獣とは。滅多に人の前には表れず、自然の奥深くにすむ凶暴な怪物的獣のこと。
モンスターって感じだな。でもそれよりも上位の存在だ。
人を食ったりもするらしい。
“精霊”の中にも魔獣とされるモノはいるらしい。どうやら龍黄達も“その”部類のようだ。・・・けど
瑠美那「・・・“アレ”が魔獣なのか?」
とりあえず、私はその“魔獣”関連の方の本を見に行くことにした。
瑠美那「・・・結構大げさだな・・・」
“本物”を知っている私には、その本の内容は大げさに見えた。
容姿は人間によく似ているが、天使のような翼がある。
肉食であり、人間の肉をよく好む。(幻翼人達によって多くの子供がさらわれた時期があった。)
各地の伝承によると、彼らの祖先は人間であり、なんらかの突然変異で特別に魔力や生体の違う者が表れ、それが幻翼人につながったと言う考えがもたれている。
神話の一部では、神々が戦の道具として人間を改良したものとある。
瑠美那「・・・最後の一文・・・うさんくせえ・・・」
「けれど、最後の一文は事実だ」
私の心臓は跳ね上がり、つい本を閉じるのに勢いがついて少々大きい音がした。
けれど、周りに人はいなかったので見る者はいない。
瑠美那「・・・なんであんたがここにいる。」
「本当は分かってるんだろ?」
・・・ああ、わかってるよ。
私は声の主の方をゆっくり振り返る。
瑠美那「・・・サングラス、とった方が格好いいんじゃないか?」
飛成「・・・ありがとう」
全く敵意など見せずに、私の目の前に立つ・・・飛成が笑った。
飛成「・・・先日はどうも」
あ、ちょっと敵意がでた。
瑠美那「どういたしまして。ところで・・・もう一人はいないのか」
飛成「彼は護衛の方に回っている。」
瑠美那「んで、一応聞くけど、私に何の用だ?」
飛成「君を連れて行く。前回が散々だったから、今回は多少乱暴でも良いと許可を貰ったから」
先日のようにはいかない、と彼がポケットに突っ込んでいた手を出す。
・・・手袋をはめていたが、一部不自然な形だ・・・。なかに手っ甲でも仕込んでいる。
飛成「おとなしくついてくるか、痛い目を見るか・・・どっちだ?」
瑠美那「・・・こうゆうとき、よく使われる言葉・・・知ってるか?」
私は持っていた本を本棚にしまう・・・。
飛成「・・・いや」
私は本を収める隙間に手を入れる。
瑠美那「・・・『逃げるが勝ち』だ」
その隙間を使って、かなりの量の本を本棚から引っ張り出して彼にまとめて投げつける。
飛成「・・・」
飛成の視界が一瞬ふさがれ、その一瞬で瑠美那の姿は消えた。
飛成「・・・ふん」
飛成は軽く力をためて、両手を左右に広げた。
その瞬間、彼のまわりの本や、本棚までも千切られたようになって、そこら中に吹き飛んだ。
その異常な光景に、図書館利用者が悲鳴を上げ、館内がうるさくざわつく。
飛成のまわりは一瞬で荒野のようにキレイに何もなくなった。
飛成「・・・『逃げられれば勝ち』だろう」
船でいろいろあってから、なんだか彼とは気まずくなってしまい、なんだか別行動をとりたかった。
ので、無理矢理に離したのだが・・・。
瑠美那「くそっ、こんなんだったら龍黄も連れてくりゃよかった・・・!」
荷物はすべて龍黄に預けてしまったから、今、まともな武器も装備していない。
瑠美那「・・・!?」
走って逃げていると、背後でなにかが爆発するような音と、人々の悲鳴が聞こえた。
多分、私があまりに店の多い複雑な道を通っているから、邪魔なそれらを飛成がすべて吹き飛ばしているんだろう。
瑠美那「・・・それか、私の足を止めるためのか・・・」
飛成は徐々にこちらへ近づいてきている。
瑠美那「走るのには自信あったけど・・・これは無理か」
私は止まり、近くの店の屋根に飛び乗り、建物の壁を飛び越え、なるべく高い建物の屋上へ上がる。
そして・・・さっきの図書館の屋上へ着いた。ここがこのあたりで一番高い。
ここから落ちれば、いくら受け身をとっていても下はコンクリート・・・怪我はするだろう。
飛成は多少殴る蹴るでの気絶の急所ねらいはしてくるだろう。
でも私に外傷は与えないはず。
ここから突き落としたりも・・・多分しない。
だから、こっちから突き落とす!
瑠美那「うりゃあ!」
飛成が屋上に飛び乗った瞬間、私は彼に蹴りを繰り出す。
飛成「見え見えだな!」
彼はあっさり私の蹴りをつかみ、器用にひねって体を地に叩き伏せる。
私は息が詰まるのを無視して、慌てて彼の地に向かう拳を避けながら飛び起きる。
瑠美那「うあっ!」
私は足をついたと思った瞬間、彼の素早い足払いで立つ暇なくまた倒された。
瑠美那「うっ!」
飛成にのしかかられ、肩を押さえられて逃げ道を奪われた。
そして彼は拳を振り下ろす。
_____ガッ!
鈍い音がして、私のほほに何か、細かいチリのようなモノが当たる。
瑠美那「・・・。」
私の頬をかすめて彼の拳がコンクリートの床にめり込んでいる。
瑠美那「・・・ずいぶんな馬鹿力だな・・・」
飛成「・・・今ので死んだと思って、僕とおとなしく来てもらえないか?」
飛成が拳を床から離す。
瑠美那「・・・今ので殺したと思って、私をおとなしく帰してくれないか?」
飛成は一瞬きょとんとした。
飛成「・・・無理だ。」
瑠美那「あ、そ。じゃ、殴ってつれてけば?」
飛成はじっと私の顔を見ている。拳を振り上げる様子はない。
飛成「・・・アンタ、ずる賢いよ」
彼がそう言うのは、私が飛成は私を決して殴らないのを見抜いていて、こう言っているからだ。
彼は屋上に来て、一気に魔法で私をしとめようとしなかったし、殴り返しもしなかった。
ただ押さえようとしかしていなかった。
彼は、羅希に殴って良いと言う許可を貰っていない。貰う前に私の所へ来たか、羅希が許さなかったか。
瑠美那「あのさ、私もなんとなくあんたらに逆らってるだけって言う馬鹿じゃない。・・・龍黄はそうかもしんないけど」
飛成「・・・」
瑠美那「ちゃんと事情を説明してもらえないか。」
飛成「・・・分かった」
瑠美那「てか話し始める前にどいてくれ。」
飛成は一瞬考えてから慌てて私から離れた。
瑠美那「・・・ふう」
私は一息ついて上半身を起こした・・・
瑠美那「んがっ!?」
瞬間、何者かに(・・・てか飛成しかいないんだけど)口をふさがれる・・・。
いや、なんか口に突っ込んできた。
小さい、小石程度のかたいモノ。
油断しているところにいきなり突っ込まれたのでそれを飲み込んでしまった。
瑠美那「がっ・・・な、何飲ませたてめぇ!」
飛成「はっはっは。油断したね。この前羅が君に飲ませようとしてた薬だ!」
瑠美那「げっ!?」
私ははき出そうとするが、飲んじゃったもんがそう簡単に出てくるわけがない。
飛成「君をだますつもりはないけど・・・」
瑠美那「だましてんだろ馬鹿!!」
飛成「てかさ、僕も正直言うとなんで羅がいろいろやってるのか詳しくは知らないんだよね〜」
瑠美那「んだとて・・・」
いきなり全身がたこになったみたいに力が抜けた。
瑠美那「だ〜!こら!解毒剤わたせ!」
飛成「毒を盛った本人にそのセリフはないんじゃないか?つーか持ってない」
瑠美那「・・・このっ!」
私は気付けにまだなんとか動かせた指を噛み千切ろうとした。
ら、慌てて飛成に止められた。
飛成「まずは話を聞いて貰うだけだから、何の危害も加えない。だから、無茶しないでおとなしくついてきてくれ。」
瑠美那「・・・」
私は今度こそ本当に眠ってしまった。
そのころ、龍黄は・・・
龍黄「あれ・・・?うわ!財布がない!!」
スリに遭っていて、瑠美那のことなど全く気にしていない様子だった。
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