―――3―――

 

クラウディはなにやらぺちゃくちゃしゃべっているが私は料理に夢中でオール無視

第一私が彼の話を聞いていたところで私にはそれがさっぱり理解できないだろう。

クラウディ「でねでね、イナゴって細身っぽく見えてタンパク質豊富でね、あとアシナガなんか気持ち悪いけどちょっと甘いんだよ。

・・・つーか、聞いてると食事がまずくなる。

私は黙々と夕食をたいらげ、腹がいっぱいになったところで彼に話しかけた。

瑠美那「なあ、クラウディ」

彼は私から話しかけてきたことに驚いて「虫の話」を中断。目を丸くしてこちらを見た。

瑠美那「おまえさあ、もうすぐ死ぬじゃん?」

クラウディ「確かに事実だけど、陰気くささゼロで軽やかに言い流さないでくれないかな?」

瑠美那「で、そのことにいろいろ考えてて・・・」

クラウディ「僕のこと考えてくれたの?って反応以前に僕のセリフは無視か

瑠美那「まあ、こうしてたまに飯もってきてくれるし、いろいろ暇つぶしに殴らせてくれたし、散々ストレス溜めさせてくれたし、文字とか教えてくれたし、いろいろ恩もあるから」

クラウディ「さりげなく嫌味言ってるね。」

瑠美那「仕事中にサボって近辺の医者探して、お前の病気治してくれるとこ探したんだ」

クラウディ「・・・(くっ、突っ込み場所がないじゃないか・・・)」

瑠美那「で、治療費とそこまでの交通費、村長に渡してきたんだ」

クラウディ「・・・ええ?!いつの間に?!」

瑠美那「昨日。で、それで病気治して元気になれ・・・と。」

私がちょっと辛気くさく言い終わると、どちらも何も言わず、沈黙が走った。

腹はもういっぱいだし、話すことはもうないし、なにもすることが無くて彼の反応を待っていた。

・・・あと30秒待って彼が何の反応も見せなかったら、とりあえず彼を殴ろう

・・・・・・・あと5秒・・・

と、そこですすり泣きが聞こえた。(・・・ちっ)

泣いているのはもちろんクラウディ。

クラウディ「・・・ありがとう。」

瑠美那「おう」

クラウディ「・・・ごめん。瑠美那はその為に村を出ないでずっとここに・・・?」

瑠美那「まあな。でも、やることはやったし、明日の朝にはここを出ていく」

クラウディ「・・・」

瑠美那「で、ついでに言っておくが、治療を受けたらお前もこの村を出た方がいい」

彼は服の袖で涙を拭っている。話は・・・多分聞いているだろう。

 

瑠美那「まあ・・・仕事でつかんだ企業秘密なんだがな、今結構有名になってる「セヴァールフ」って企業があるんだが、そいつらがここに捜し物に来るのと、ここの村長と裏で取り引きしてるらしいんだがイザコザがあってこの村全体を領土にするらしい。」

クラウディ「なんか、後者の話がよく分からないけど・・・」

瑠美那「ようするに、お前の親父が「セヴァールフ」って会社と犯罪に手を染めている。が、最近お前の親父の方が会社とトラブルを起こしたわけだ。」

クラウディは口元を押さえて何かをじっと考えている。

ふっと、それを思い出したように顔を上げた。

クラウディ「なんか都会のお偉いさんが来ることはたまにあった。すぐ部屋にこもってたから何の話してたのかは分からなかったけど。」

瑠美那「で、会社の方はお前の親父に手を切られると、何かと心配なわけだ。秘密を知ってるいるんだし、それをバラされたらかなわん。」

クラウディ「・・・それで、親父を攻めに?」

瑠美那「そんな感じだな。もちろん、「セヴァールフ」という会社名は伏せて、賊に見せてくるんじゃないか?で、この土地全体を会社のモノにしてしまおうと。とりあえず、多少は死人、けが人は出るだろうな、何しろ相手は仮だが賊だ。」

言い終わってやっと気がついた・・・もう外は日が沈んでいる。

もうすぐで、明かりは月しかなくなる。

瑠美那「クラウディ。もう帰れ、日が沈んでる。」

クラウディ「そんな年頃の女の子に言うみたいなこと・・・」

瑠美那「村まで距離がある。それに、ここの位置を考えろ。途中で崖から落ちかもしれんだろう。」

クラウディ「はいはい。」

彼は夕食の食器を袋にポンポン放り込み、カバンに突っ込んだ。

クラウディ「じゃあ、お邪魔しました。」

彼をドアの所まで送った。

クラウディ「瑠美那。明日、ちゃんと僕の所によっていって・・・あ、親父がなんか言うか。

じゃあ、日の出頃に村の東口で待ってるから、ちゃんと声かけていってね。」

瑠美那「ああ。分かったから早く帰れ。もう暗い」

彼はいつものように笑うと、背を向けて夜の闇に消えていった。

私はそこにしばらくつったっていた。

 

――――――・・・もうここに残る理由はない。

アイツとの別れはガラにもなく寂しいが、あいつが私をかばい受けた仕打ちを考えればそんなことはどうでもいい。

 

やけに静かな寝室に入り、ベッド脇の用意していた荷物に隠していた金を突っ込んでベッドに倒れ込んだ。横になって初めて、自分は疲れていたんだと言うことを思い出した。

 

 

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