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まだ日が出ぬ夜明け頃。村の東口へたどり着いた。

日の出頃にクラウディがここで待つ、といっていたがもちろんまだいなかった。

私は持っていた首飾りを東口の真ん中に置いた。

以前、仕事で手に入れた宝石店からの礼品。何となくその辺の棚に置いておいたら、彼が気に入ったらしくよく見ていた。

コレは私がもう出ていったという印と、アイツへのプレゼント。

彼を待つ気はない。会う気もない。また泣き疲れるかもしれないし、アイツはさっさと私を忘れた方がいい。私もアイツのことは早く忘れたい。何かと苦労をかけたから・・・。

瑠美那「・・・」

出ていく前に、思いつきで首飾りの隣に指で「バカ」と地面をなぞった。

一番言いやすい別れの言葉だ。

 

龍黄「そうか・・・。もう出ていくんだ・・・。急だな」

私はついでに、龍黄にも別れを言いに行った。

礼の小屋の中で爆膵していたところを殴り起こした。そのせいで彼の後頭部にぷっくりとたんこぶが。

瑠美那「あまりあの村にいたくなかったし。なによりもう用はないからな」

龍黄「とりあえず、あいさつには来てくれてありがとう。で、行き先は?」

瑠美那「決まってない。適当にながれて、良いところを見つけたらそこに居すわる。」

龍黄「そう・・・。ねえねえ、僕もついていって・・・」

瑠美那「だめ」

即答されて、普通に断られるより傷ついた様子の龍黄だ。顔も肩も翼も「がっかり・・・」と、うなだれている。

瑠美那「大体お前、その羽が邪魔で街を移動もできないだろうが。ついてくるなら切り落とせ」

・・・結構酷なことを言ったが彼が切り落とそうが切り落とすまいがどちらでもいい。

コイツは結構強いから仕事でも移動でも役に立ってくれるだろう。そんなに足手まといでもない。

ついてくるのを諦めれば、それはそれでどうでもいい。

龍黄「そうしたいけどね。できたら苦労しないって・・・。何故か切っても半日で再生しちゃうんだ。」

瑠美那「・・・切ったことあるのか」

意外なセリフに、私の方が戸惑った。

龍黄「そりゃあね、1人で森の中でボーっと暮らすより町中で適当に生活する方が楽しいし」

なんだか聞いているとコイツを1人置いていくのが可哀想になってきた。

龍黄は私以上に長い間1人孤独に生きてきたのだろうに・・・。

だからと言って、無理に連れて行くこともできない。

瑠美那「そうだな、じゃあ、半日で再生するなら一日二回定期的に切り落とせ。」

龍黄「・・・超他人事的発言だね。結構・・・というかメチャクチャ痛いんだよ。腕を切り落とされるのと同じようなモンなんだから」

瑠美那「そうなのか。・・・じゃあ、お前は何か案はないのか」

龍黄「・・・瑠美がお使いしてきてくれれば方法はある。」

瑠美那「ほう、なんだ?言ってみろ」

龍黄「僕ら【幻翼人】は【精霊】って言っても、ちょっと【神族】に手を加えられて人間から離れただけで元は人間なんだ。」

瑠美那「・・・【神族】って・・・神様ってヤツか?マジでいるのか?」

龍黄「うん、いるよ。昔は人間界に干渉していたからちょっとこっちでも伝承に残ってるみたいだけど。・・・話を戻すよ。僕らと人間の違いはほぼ「魔力が多い」って事だけなんだ。」

瑠美那「ほぼ?」

龍黄「ほぼ。あとは他者の生命力を奪って長生きできたりとか、主食が違ったりとか。」

瑠美那「主食って?」

龍黄「人間」

――――――――――――――――――――。

龍黄「話を戻すよ」

瑠美那「ちょっと待て。人間を食うのか?」

龍黄「うん。大体の幻翼人は大好物。特に10代あたりの女性が好まれるね

・・・私はモロ対象だ。

私は全身の血の気が引いた。

龍黄「・・・あ、大丈夫だよ。精霊界でも人間への干渉は5年に1度くらいしか許されないから、僕も1度しか食べたことない・・・」

瑠美那「どっちにしろ食ってんじゃねえか!!ってゆーか、お前の同行拒否!!危険だ!

龍黄「・・・ああ、僕が道中人を食べないか心配だったわけね。大丈夫だって、食べないようにするから。それか、僕らの方でも食べるのを許されているのは極悪人か、死者だけだから」

・・・結局、私は彼へ疑いを持ったまま話を進めてもらった。

龍黄「で、何処まで話したっけ・・・、あ、そうそう『幻翼人と人間の違い』だね。

それで、幻翼人から魔力をとっちゃえば人間になるから、まあ、翼も消えるかもしれないなーと。」

瑠美那「・・・“かもしれない”って事は確実ではないんだな?」

龍黄「でも、一般の幻翼人は魔力を低めて翼を消すというのはできるんだよ。僕はハーフだったから、幻翼人としては非常に魔法の技術が低くて、そうゆう操作が上手くできないんだ。」

瑠美那「では、お使いというのは何を持ってくれば良いんだ?」

龍黄「別に何でも良いんだけど、宝石か水晶か、そーゆー系の首飾りとか。あ、なるべくたくさん宝石のついてるヤツ。」

瑠美那「・・・金がかかるな。」

龍黄「あ、宝石店よりマジックショップの方がいいね。そっちの方が効果があるし安いし」

瑠美那「金は結構あるし・・・分かった。買ってくる。」

 

・・または強奪してくる、と言うのはやめておいた。

 

龍黄に頼まれ、私は買い物をしにこの街を訪れた。

あの村(森)からは一番近い大きい街で、何度か仕事をしにここへ来たことがある。

お目当てのマジックショップもこの街で見た記憶がある。

・・・んなもん興味ないから今まで入ったこともなかったが。

 

店主「いらっしゃいませ」

・・・入ってすぐに、私はさっさと帰りたい衝動に駆られた。

室内はわざわざ外の光を遮断して薄暗く、いくつかのロウソクを明かりにしている。

店に置いてあるものも、所々に骸骨だのミイラの手だの、変なヤツが見られる

その上店員もインチキ占い師の様な格好。

超陰気くさい上ロウソクの無駄だ。何を考えているんだここは。

店主「あら、珍しい。何をお探しで?」

・・・やっぱりこうともなるとお客は珍しいのか・・・。いや、私が珍しいのか?

瑠美那「・・・コレ」

さっさと帰りたかったので、ちょうど目に付いた要望に応えられそうな首飾りを指さした。

店主「あなたがつけるのかしら?」

瑠美那「いや、・・・連れが『宝石のついた首飾り』を持ってこいと」

店主「それならこっちの方がいいわ。それはいわく付きだもの」

・・それなら店頭に並べるな。

店主が出してきたのはさっきのより宝石の少ない首飾りだった。

瑠美那「なるべく宝石は多い方がいいんだが」

店主「これが一番多いわ」

・・・ちっシケてんなあ。私は少々考えを巡らせ。

瑠美那「やっぱり、コレにする。いわく付きでも何でも良い」

私は店主が出してくれたのとは違う首飾りをとった。

瑠美那「いくら?」

店主「・・・処分品だからいらない」

瑠美那「そ、ありがと」

・・・実はこれが狙いだったりした。

・・・いわく付きなくらい、アイツなら何とかするだろう。腐っても精霊なんだし。

 

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