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龍黄“ロンファン”「ルミ・・・、聞こえる?」

まだ目は開けていないが、眠りから覚めたとき、龍黄の声がした。

瑠美那“ルミナ”「ん・・・ああ、聞こえている」

寝ぼけた目をこすって私は上半身を起こした。そしてすぐに異常に気付く。

私が寝ていたのは、彼の住む森の泉のそば。

それに、まわりには私と龍黄以外の人が数人いる。

この様子はおかしい。

私が森で寝ていたことも、こんなにも多くの人が龍黄を見ていることも・・・。

とくに後者の方は重大だ。彼の異形の姿は見られては不味いのだから。

瑠美那「今・・・どうゆう状況だ・・・?」

龍黄「・・・昨日の夕方、ルミの言ったとおりセヴァールフが差し向けた賊が来た。」

瑠美那「え・・・」

なんだか記憶がおぼろげで良く覚えていない。

龍黄「僕と君で村人を何人が救出してここに避難させてた。半分以下しか助けられなかったが・・・。で、君は知り合いを捜して南の丘に行った。」

瑠美那「・・・!?」

いきなり鼓動が強くなった。

心臓が口から出てきそうな・・・。

そして、私の記憶がゆっくりと思い描かれる。

思い出したくない記憶。

瑠美那「・・・っ・・・クラウディは・・・、アイツはどうした!」

龍黄「・・・」

私が突然あげた大声に村人がぎょっとした。だが今の私にはどうでもいい。

今、頭の中に思い描かれたことが嘘であって欲しい。

――――――――きっと・・・嘘じゃないと、どこかで分かっていたが・・・

龍黄「南の丘は消えたよ」

瑠美那「・・・なに?」

龍黄「あるのはガレキの山。君の近くにいた青年がそうならば、彼はその中だ」

そう言って龍黄が指さした方向は、泉のすぐ前にあるたくさんの花。

村人の何人かがそこに向かって祈っている。そこは墓なのだ、死んだ者達の。

龍黄「“やつら”が村の中で死体をひとまとめにしていたから、きっとみんないる。南の丘にいた・・・ルミの知り合いもいるよ」

瑠美那「・・・」

私はしばらくその墓を見ていた・・・。


龍黄「・・・ルミ?」

しばらくじっとしていた彼女が、急に立ち上がり森の奥へと向かった。

龍黄はまたしばらくして、彼女の後を追った。

龍黄「(・・・見たら怒られるんだろうけどな・・・)」

やはり、放っておけない。

そんなに進まぬ所に、座り込む瑠美那の後ろ姿があった。

・・・思っていたとおり、ちいさなすすり泣きが聞こえる。

一度、行かない方がいいかと思い悩んだが、

龍黄「ルミ」

彼女の方へ進んだ。

瑠美那「・・・お前も・・・気が利かないな・・・」

龍黄「だって・・・ねえ」

彼女はぐしゃぐしゃと目をこすり、顔をひざにうずめた。

瑠美那「・・・ホントに・・・“泣く”ってのはヤだな」

龍黄「そう?僕も昔は良く泣いたけど、すっきり出来たから嫌ではなかったよ」

彼は瑠美那の隣にしゃがみ込む。

自分の視線よりも少し低いところにあった彼女の頭を抱え込む。

瑠美那「・・・お前になぐさめは求めてない」

龍黄「ま、そう言わずに。僕が来たからって無理に泣きやむことはないよ。」

瑠美那「できるか。お前なんかに泣いてるところなんか見られるのはもうごめんだ」

そういわれても、龍黄は全く引かなかった。

龍黄「まだ成人もしてないんだから、気にすることないって。それに、泣けるときにないたほうがいいよ。今の君がどれだけ苦しいか分かるから。」

瑠美那「・・・」

龍黄「僕もねえ、歳の離れた妹がいて・・・、生きてたらルミくらいかな?
もう10年くらい前に、妹が呪われてるって分かって・・・」

瑠美那「殺されたのか?」

龍黄「うん。それに、あの子についた呪いのせいでたくさん被害者がいてね。死んだ人はいないけど、大けがした人もいて、ほぼリンチにされた。のたれ死ぬように瀕死の状態で村から捨てられた。」

瑠美那「・・・それを平気でズカズカ言うお前がおかしく思うが」

龍黄「平気じゃないよ。今でも思い出すだけでも泣きたくなる。」

瑠美那「・・・」

龍黄「ついでに言うと、それを止めようとして僕は村の住人を何人も殺しかけた。
で、人間界に追い出された・・・と」

瑠美那「・・・」

龍黄「まあ、父さんが人間ってこともあってイジメ受けてたから、向こうにいてもこっちにいても苦しい生活だったしね」

一通り話して、内容がつきたころに彼女は泣きやんで立ち上がった。

瑠美那「龍黄、おまえはまだ私についてくるつもりか?」

龍黄「そうだけど?」

瑠美那「・・・もう出発する」

瑠美那は歩き出した。

龍黄「・・・」

龍黄も立ち上がる。

けれど、すぐには歩かず、しばらくそこに立ち尽くしてした。

龍黄「・・・もう少し、反応してくれないのかな」

そのつぶやきは、もう離れている彼女には聞こえない。


----------------------やっぱり、彼女は・・・

またしばらく考え込み、思考がひと段落したところで彼も歩き出す。

龍黄「変に・・・希望は持たないほうがいいか・・・」


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