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羅希のもとからさっさと出てきてから、子供達がしつこくまとわりついている。
何故まとわりついているかというと・・・
「おねーさん、ルオ兄ちゃんの彼女!?」
「片思いだよね!?」
「お兄ちゃんけっこうイイ顔してたでしょ!?」
・・・てめーらは思春期の女子高生か?
それとも噂好きのおばちゃん?
瑠美那「・・・」
いちいち答えるのも面倒だし、怒っていると疲れそうなので、オール無視。
すぐに諦めるかと思いきや・・・部屋から孤児院の外に出るまで粘ってくる。
今時の子供は根性あるな・・・。
ぶっ飛ばしたいが、子供相手にはちょいとキツイので、血管を浮かばせながらもガマンしている。
私を止めようとしがみついてくる子供達を引きづりながら、そろそろキレてしまう・・・と言うときに、助け船が来た。
「あ!飛兄ちゃんだ!」
「おかえり〜〜!!」
「何処行ってたの〜〜!?」
子供達は一瞬のうちに標的を切り替え、孤児院敷地の入り口に走りよっていく。
瑠美那「・・・ホントになんなんだ・・・この孤児院は・・・」
入り口にいて、子供達の標的にされた“飛兄ちゃん”とやらを見て、思わずそんな独り言が口を割る。
いたのは長くて黒い髪をした青年。羅希と同じくらいの歳だろうか。
それだけなら何の問題もないが、問題は顔。
この孤児院の規則なのだろうか・・・超絶の美形。
顔の造形はなんの文句なしに整っていて、サングラスをかけていて目の形とかはよく分からないが、それでもかなり格好いい人だと分かる。
私は少し呆気にとられていたが、すぐに我に返り、さっさと孤児院を出る。
子供達にのしかかられても動じずに対応している彼の横を通り過ぎようとしたときに・・・
飛「あ!瑠美!!」
左斜め後ろから急に呼びかけ。
呼んだのは・・・飛とかいうやつ。
なんでコイツ・・・私の名前を知ってるんだ?
そんなこと考えつつも、とりあえず振り返った。
飛「瑠美那さんだよね?」
確信ないのに呼んだんかい。
瑠美那「はい」
相手の口元がふっとゆるんだ。
うお。サングラス外したところ見てみたい!
至近距離から見て分かったが、羅希とは対照的に体は鍛えられているようだ・・・。ひょっとしたらそうゆう職業なのかもしれない。
飛「・・・龍黄に」
瑠美那「・・・!?」
何故かその言葉を聞いたとき、ぞっとした。
なんでこいつ、龍黄のことを知ってるんだ・・・?!
アイツは人間には私以外接触していないはず。名前なんて知っているはずがない。
飛「よろしく言っておいてください」
瑠美那「・・・」
龍黄によろしく言っておいてください、そんなのんびりとした言葉を残して、彼は聞き返す間もなく孤児院の中へ子供達と入っていってしまった。
なんとなく、今の心境は・・・
瑠美那「なんかミステリー・・・?」
龍黄「ルーミー!夕食にいこー!!」
瑠美那「うっ・・・耳元で大声出すな・・・」
孤児院から帰ってきたとき、龍黄はベットでぐーすか眠りこけていた。
今日のことを言おうと思っていたのだが、わざわざ起こすことはないかとそのままにしておいて、私も仮眠を取ったのだった。
が、かなり熟睡してしまったようで、もう日は沈んでいた。
瑠美那「そんなに大声で起こさなくても起きるよ・・・」
龍黄「だってさっきから起こしても起きないし、枕で顔ブッ叩いても起きないし、怒られるの覚悟でビンタしても起きないから、一時間ずっと大声で起こしてたんだよ?」
瑠美那「・・・そりゃ・・・悪かった・・・」
とりあえずまだ眠い目をこすって、上半身を起こした。
時計を見たらもう完璧に夜。
あくびなんかしながらテーブルの上の小カバンをとって、髪を手でほぐしながら部屋を出た。
龍黄「ねえ、ルミ。買い物した気配がないから買い出ししなかったみたいだけど、今日何処に行ってたの?」
そう言われて、やっと思い出した。
あの羅希&飛とかいう妙な奴らのことを。
・・・ん?
・・・何を言おうとしてたんだっけ・・・?
瑠美那「ん〜っと・・・なんか仕事したんだよな。」
龍黄「アレイジの?」
瑠美那「・・・確か・・・ああ、そう、そうだ。」
龍黄が取ろうとしていた最後の一個のミートボールをすかさずフォークで奪取。
あ、と龍黄が声を上げたが気にしない。
瑠美那「で、孤児院行ったんだ。森通って」
龍黄「ふ〜ん」
さっきのミートボールのお返しか、私が取ろうとしていた唐揚げを彼が奪取。
奪い返そうという努力虚しく、あっという間に龍黄の口の中へ。
くやしいが、それは忘れて話を戻した。
瑠美那「で、なんか妙なヤツにいろいろと話させられた。・・・名前、なんて言ったかな・・・」
さっきまで覚えていたことをすっぽり忘れてしまった。
くそ、龍黄が唐揚げを取るからだ。
龍黄「何の話?」
瑠美那「ん?・・・何だっけな・・・んん〜〜〜・・・」
眉間にしわ寄せて思い出そうとしたが・・・
熟睡してしまったせいかはっきり思い出せない。
思い出せたのが、
瑠美那「お茶とか茶菓子投げた。」
龍黄「・・・つまり、君がむかつく話だったって事だね。」
瑠美那「そうそう。で、なんかその孤児院が妙で、なんかホストいっぱいって感じ。」
龍黄「は?」
瑠美那「なんか美男美女雇ってますってカンジで・・・、子供居たから孤児院なんだろうけどさ」
龍黄「ふーん・・・よくわかんない。」
ちょっと話ズレたな・・・。でも・・・
瑠美那「なーんかお前に話しておくことがあったんだよなあ・・・何だっけな・・・」
龍黄「そうゆう重要な部分を忘れないでよ」
瑠美那「うっせーなー、今思い出してんだよ。」
ひとしきり考える。
考える。
考える。
考える。
考える。
瑠美那「よし!」
龍黄「なに?思い出した?」
瑠美那「明日思い出す!すいませーん、追加しまーす!」
龍黄「そういえばさあ」
夕食を済ませて部屋を戻る途中の廊下で、急に私の前を歩いていた龍黄が立ち止まる。
良くあるシーン。私は彼の背にぶつかった。
瑠美那「・・・なんだよ。」
龍黄が顔だけこちらに向けて
龍黄「昼に宮殿の人が来て、明日の朝食時間に宮殿に来て下さいって」
瑠美那「はあ?なんで」
龍黄「皇女様が会いたいって。やっぱりお昼のこと、聞こえてたのかな?だとすると超地獄耳だよね〜」
瑠美那「メンド〜、お前行け。私には関係ない」
龍黄「残念でした。そう言うと思って「では、連れの人と2人で伺います」って言っちゃったモンね〜・・・ギャッ!」
なんとなく、彼を殴りたくなったので殴った。
さっきの唐揚げの件もあったので、かなり力を入れてやった。
翌日。
龍黄「おっはよ〜!ルミ!早く準備して!皇女様の所に行くよ!!」
瑠美那「ぐふっ・・・」
朝、起きると腹の上に龍黄がいた。しかも耳元で超デカイ声を・・・
彼は私が起きたのを確認すると腹の上から降りていった。
・・・彼に解放されて分かったが、私が起きるまで彼はいろいろと努力していたらしく、ほっぺたが痛かったり、枕がぶっ飛んでいたりしていた。
そのうち、寝起きが悪いのは何とかして直そう・・・。
まだ寝ぼけた目をこすりつつ、昨夜に準備して置いた荷物を持った。
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